nakumelo’s blog

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「茂造の絆」レポ 前編

  今年もやって来ました、新喜劇とはまた違うガチの人情芝居、茂造特別公演シリーズ!

  「茂造の絆」と題された今回の公演は、何年か前に行った茂造シリーズのリメイク版。特に今年は茂しゃんの芸歴30周年のアニバーサリーイヤーなので、気合いが例年より入りまくっているようです。

   
    友人の計らいにより最前センター席で観劇できることになり、「必ず、大きめのタオルを用意してきてね」と前々から言われてきたのでそれをきちんと膝の上に置いて、ドキドキしながら待ち、夜7時いよいよ開幕。

  第一幕はいつも通りの新喜劇。茂造は旅館のスタッフとして、相変わらず鞄を蹴飛ばしたり平気で秘密をばらしたり、借金の取り立てに来たヤクザ森にぃに無茶ぶりしたりとやりたい放題。

  そんな茂造の態度が一変したのは、家族に反対され、さらには夢の達成を目前に、彼女が妊娠してしまい悩んでいるカップルを見たとき。
  それまでヘラヘラしていた笑みは消え、厳しい口調で「お前たち、本当に子供を育てる覚悟はあるのか!?簡単なもんじゃないんだぞ……お前たちになにかあったとき、傷つくのは子供なんだ!!それをわかっているのか!?」と問いかけてきます。

 
   これまで見たことの無い茂造の表情に戸惑う一同。
実は茂造には、我が子に関して、過去に、あまりにも切ない出来事があった……


   二幕からは時を遡り、詳しい時代設定は話されませんでしたが、恐らく30~40代くらいの茂造の過去が描かれます。

    茂造は「辻本酒造」という酒蔵を経営しており、そこには父の代から世話になっている棟梁のナカジマ(要 冷蔵さん)をはじめ、ちょっと喧嘩っ早いけど男気溢れるヨウスケ(アキさん)、ニューハーフで弁護士になるための勉強もしているアンナ(伊賀さん)、いつも底抜けに明るいムードメーカーのサチコ(たまよさん)、戦時中のフィリピンでの過酷な体験から今でも軍人口調と背中を見せないためのほふく前進など独特な言動が目立つニノミヤ(平山さん)、訳あって無口だけれどとても真面目な青年マツダ(玉山詩くん)、そして茂造の妻のユリコ(村崎真彩ちゃん)と小1になる息子・ナオト(子役の福冨慶士郎くん)が、寝食を共にしながら、「絆」という名のオリジナルブランドの日本酒の製造に励んでいました。

   途中からサエキ(井路端健一さん)という元愚連隊の新メンバーが加わります。サエキは最初こそ心を閉ざしていましたが、愚連隊時代の仲間が襲撃に来たときも庇ってくれた茂造や酒蔵のメンバーたちのあたたかさに触れ、徐々に心を開いていきます。
 
  このサエキ、実はギター演奏も得意で、それを知った茂造はあることを提案します。

  「実は俺達、毎年地元の音楽コンテスト出てるんだ。お前、今年の伴奏やってくれよ」

  こうして辻本酒造全員でチームとして、サエキのギター演奏と共に「上を向いて歩こう」と、茂造作詞・サエキ作曲のオリジナルソング「絆」で勝負することに。

  「俺だってなにか目立つことやりたい!」と主張するヨウスケに対し、茂造が与えたのは……「ホース」。蛇腹になっていて、掃除機とか洗濯機に使われているアレです。
これをどう使うかというと、片方の端に口をつけ、歌の要所要所で息を吐きながら思いっきり振ると「ピュッ!!」という音が鳴るのです。
 
  カーテンコールでこのホースのことについて触れられ、なんでもこれは幼少時あまり裕福ではなくおもちゃを買ってもらえなかった茂しゃんが廃材から見つけ出して遊んだものだったとか……会場のお客さんの中にも何人かこのホースで遊んだことのある方がいて、さらに帰宅後、私の母も「音を出しはしなくても振り回していた」と話していました。「金がないぶん知恵を使って工夫してたんや」と茂しゃんは自慢げに言っていました。すげーなホースって。

  前半は酒蔵の中で起きるスタッフたちの人間模様が中心に描かれました。

  アンナは前作「青春時代」にも登場しましたが、やはり今回もその記憶力を生かし、サエキの襲撃に来た愚連隊相手にスラスラっと刑法を一言一句間違えず伝え圧倒し、さらにはピカソのやたら長ったらしい本名「パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ファン・ネポムセーノ・マリーア・デ・ロス・レメディオス・シプリアノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード (Wikipediaより引用)」まで見事に言ってのけました。 茂しゃん曰く「このせいで移動中伊賀はやたらブツブツ言う時間が増えた(笑)でも彼ならやってくれると思った」とのこと。
 

  サチコは通算50回目のお見合いを成功させるべくみんなでミッションを遂行しますがやはりその「顔面」で断られてしまいます。
しかし実はずっと密かに想いを寄せていたヨウスケがプロポーズ!!その場で熱い抱擁とキス(!!)を交わします。
  今思うとその伏線だったのか、サチコが冒頭で中の人であるたまよさんのお馴染みのギャグ「ペローン!チーン!ドカーン!!」の一連の流れをヨウスケ相手にやっていたのですが、ヨウスケのツッコミがやたらソフトで優しく「刺激が足りないよぉっ!」と言っていました。ヨウスケ、実はまんざらじゃなかったのかも……

  マツダは実は代々医者の家系である親兄弟と確執があり、そのため自分を押し殺して声がでなくなってしまったのです。それでも、この辻本酒造に来たことで、一人前の杜氏になりたいという夢が出来ました。
 
  その想いは強く、実家に連れ戻しに来た父親(あいはらたかしさん)に「こんな大したこと無い酒」と罵倒されると顔を真っ赤にして「みんなに謝れ!!このお酒にはみんなの想いが込められているんや!!」と、ずっと封じていた声を解放して怒りをぶちまけ、さらに、杜氏は仲間と共に見つけた自分の夢だから絶対に叶える!!絶対にお父さんにも「美味しい」って心から言ってもらえるお酒を作る!!とまっすぐな瞳で宣言。父親はすぐには認めはしなくても「いつか私を唸らせるほどの酒を作ってみろ。私の舌は肥えているから、なかなか厳しいだろうがな」と、見守ってくれるようになりました。
  茂造の孫オーディションから今や特別公演常連俳優となった詩くん、ついに今回から子役枠から卒業し、本格的な大人の役者の仲間入り。元々茂しゃんが逸材と見抜いた天才児ではありましたが、年々上手くなっていく迫力と臨場感のある表情はまさに精進の賜物。これからもきっともっとすごい役者さんになっていくでしょう。
 

  様々な困難を乗り越え、絆を深めていく辻本酒造。そしてその絆が深まれば深まるほど、彼らが作るお酒の「絆」の味も深く美味しくなっていくようでした。それを支え、見守る茂造の優しくあたたかな笑顔。


しかし後半では、その茂造自身の、「親子の絆」が試される出来事が……


続きます。