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佐藤太一郎企画「子育て支援公演」レポ

 以前このブログでもレポした、佐藤太一郎企画のなかでもかなりの人気作である、キングコング西野氏原作の「グッド・コマーシャル」(そのときの記事がこちらから→http://nakumelo.hatenablog.com/entry/2017/12/17/132634


  この作品が2019年1月末に西梅田劇場で「佐藤太一郎企画その22」として再び上演。しかしこれまでと大きく違うところが。

 

  なんと演劇では異例の「赤ちゃんや未就学児も観劇可能・泣いたり騒いだりしてもOK」という「子育て支援公演」なのです。

 

  太一郎さんに昨年息子である「ぎょろたん(仮名)」が誕生しました。当時の私は色んな感情が渦巻いて苦しい時期もありましたが、SHOWROOMInstagramなどで見かけるその成長ぶりに「この子が太一郎さんの元へ生まれてよかった。そしてそれは奥さまのご助力がものすごく大きいんだな」と時間はかかりましたが思えるようになりました。

 

そんな太一郎さんは父親になってみて初めて「演劇と子育てはなかなか相容れない」という事実に気づきます。
 
  本来演劇は観た人の心を動かし力をくれるものなのに、「子供が泣いてしまうと舞台の世界観が崩れるから」「泣き声や騒ぎ声は作品を楽しんでいる他のお客様の迷惑になってしまうから」という理由で子供がある一定年齢になるまで観劇が好きな親御さんは我慢する。なんならはっきりと「未就学児入場不可」としている公演も多数。しかしただでさえストレスの溜まりやすい子育てを、演劇の力で解消できたら……
 
  さらに、子供自身にとっても、芸術とふれあうことは、今はその意味合いこそわからなくても、よい刺激となって感性を磨いてくれるという話を聞き、ますます太一郎さんのなかで「気兼ねなく親子で楽しめる演劇公演を作ってみたい」という想いが沸き上がってきます。



そこで、公演場所は吉本専属劇場のなかでも

・駅から近い(特にJR大阪駅から)
・段差が少ない→ベビーカーでも行きやすい
・授乳室やオムツ交換台などが常備されている
・元々外の騒音が響いてうるさくなりやすい→子供が騒いでも罪悪感が薄い

ということで西梅田劇場に決定。


  キャストは木下役は太一郎さんが続投ですが、「パパとして子育て経験がある→子供が泣いたり騒ぐこともよく理解している」ということで、芥川役は新喜劇の高井さん・久保はインパルスの堤下さんで行われました。

  高井さんは新喜劇だけではなくパパとしても太一郎さんの先輩にあたり、やはりパパ経験をいかした、子供の目線に合わせた「こども新喜劇」や「しんきげきといっしょ」などの公演を主催している経験もあり、太一郎さんはとても心強かったと思います。
 
  堤下さんは謹慎が明け、これが本格的な舞台の仕事復帰となったそうです。それまではベテランでありながら本来ならNSC卒業したての若手がやるような前説のお仕事から出直していたとか……
佐藤太一郎企画では「未来の今日」で確かな存在感と細かな心理描写を表現してくれた堤下さんの姿がまた見れるのは私はとても嬉しかったです。太一郎さんも「復帰したら絶対俺の企画に出てもらおうと決めていた」とSHOWROOMで話していました。

 

  ベビーカーやオムツなど荷物の多くなりがちな子連れのお客さんのために、大人一人につき二席が確保され、荷物置きとして活用できるようになどの工夫もされました。
 
 
しかしそれでは純粋に満席というわけでなく、赤字になってしまうため、なんと今回は吉本が運営するクラウドファンディングシステム「SILKHAT」により公演資金を募るという斬新な方法が実施されました。
 
  クラウドファンディングってぶっちゃけそれまで「募金となにが違うの?失敗したらお金丸々取られちゃうの?」というマイナスなイメージしかなかったのですが、これを機に大まかなシステムを学習。払った金額によりそれに応じた「リターン=お返し」が発生するので、損はないということがわかったので、まずは一安心。
  今回の趣旨を理解していれば子供連れでなくてももちろん観劇可能とのことで、チケット替わりの「大人入場権」リターンと、公演後に出演者とステージで写真が撮れる「写真撮影権」リターンを投資しました。


  当日はあいにくの雨。冬の雨は特に冷たく、たたでさえ子供さんを連れてその子供さんの荷物を持っていくのが大変なのに、ここに雨具も加わって親御さんたちは会場へ行くまでなお一苦労だったと思います。
 
私自身は独身なのに、この雨でびしょ濡れ&迷宮梅田駅で案の定迷う&PMSという最悪コンボで開演前にチェックインしたホテルでは一人ですっかりふてくされ状態。とはいえ大人だし自分一人だしなんとか支度しつつ自分で自分の機嫌をとり、西梅田劇場へ。

 

大阪駅で合流した、一緒に入る約束をしたフォロワーさんと開場までおしゃべり。  

  世間ではこの2日ほど前に天下の嵐が2年後に活動休止という大ニュースがあったため、「なんかヤな予感しません?新喜劇も今年60周年で平成最後の年でしょ?なんか3月1日に起こりそうっすよねー(笑)」なんて呑気に話していました。
まさか3月1日を待たずしてこの4日後にとんでもないニュース(http://nakumelo.hatenablog.com/entry/2019/02/05/162646?_ga=2.94338973.123448692.1549708787-619246380.1542886296)が流れてくるとは………このときは夢にも思わず。

  この日は佐藤太一郎企画の新作グッズが販売。なんとそれは新喜劇の公式キャラクターイラストとなった太一郎さんのシール!!このキャラクターイラストになることは人気や知名度が上がってきた証でもあり、さらに前々からSHOWROOMで「俺もグッズになりたい」とお話されていたのも知っていたので、その夢が叶ってとても嬉しかったです。なおこのシールは今後佐藤太一郎企画の際に販売されるようです
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スマホの充電器に貼りました。


さらにこのとき、私が着ていたTシャツにも秘密が↓
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  このあまりにも独特すぎるキャラクターは、太一郎さんがSHOWROOM配信中に描いたイラストより派生したキャラクター「死にかけコヨーテ」でこのイラストを元に太一郎さんの親友でデザイン経験もある「かっきん」さんがTシャツを作成&販売してくださったのです。これを着ている=メダマー(SHOWROOM内で生まれた太一郎さんファンの総称)の証となっています。


  会場にはウサギやパンダなどの被り物を被ったスタッフがいっぱい。このスタッフさんたちも実はクラファンの「スタッフ参加権」リターンで集められた方々で、その中には子育て経験があったり、保育士さんや看護師さんで子供と触れあう機会の多かった人なども多数。さらにあの花王さんからオムツの無料配布の差し入れも入ったとのこと。これはかなり心強い!!

 
  今回座席指定は無く、入場権の購入が確認出来たら先着順で好きな席へ着席できるシステム。子連れではない私たちは「せっかく子育て支援公演なのだから子連れの方々に前の方へ座って観てもらおう」となるべく遠慮して舞台上手側の真ん中あたりの席を選んだのですが……あとからわかるのですがある理由から、子連れであればあるほど、それも、お子さんの年齢が低い赤ちゃんであればあるほど、後列を選ぶ方々が多かったのです。

ちなみにこの私たちの席の近くが、先ほどお名前の出た「かっきん」さんや、以前SNSでお見かけしたことのある太一郎さんの弟さんなどがおられるいわゆる「関係者席」だったようで、どなたかが傍を通るたびめっちゃめちゃ緊張しました。
 
  かっきんさんはコヨーテTシャツを見て気づいてくださり、しかしいつも画面越しに見ていた方が目の前にいることにパニクり、どうにかご挨拶と握手と差し入れの紅茶をお渡しすることに成功。ド緊張のあまりずっと顔を赤くしてオットセイのようにアウアウしてました。恥ずかしい……


そしてついに開幕。普段の演劇よりやや明る目の光が残っていたのも、暗い=恐怖になりがちなお子さんたちへの配慮となっています。



開演して芝居が始まって5分もしないうちに、早速……


「エーーンエーーン・゜・(´Д`)・゜・」

「ビャーーー!!(`д´、)」

「ママーーねぇママーーパンッてするやつやだーー(n´ヽ`n)
(芥川が持っていたピストルに反応)」 


  わりと四方八方から聞こえる、赤ちゃんの泣き声やちびっこの騒ぎ声………


「芥川のピストルがこわい」と怯えていたちびっこを見て思い出しました。かつては私も大きな音がする花火や運動会のピストルが大嫌いな子供だったことを……そして弟の付き添いで観に行った戦隊ヒーローショーとか保育園行事の人形劇もやはり苦手でした。「変なところへ連れてこられてしまった」という罰ゲーム感でいっぱいでとにかく早く終われと願いながらあの頃は観ていた気がします。
  大人にとって演劇やショーは「お金を払ってでも観たい非日常空間」ですが、赤ちゃんやちびっこには「いつもと違う=怖い」という認識なのかな……とぼんやり思い出しました。

  「グッド・コマーシャル」そのものは子供向けの話ではないためか、大人には奇想天外二転三転のコメディーでも、子供には「なんのこっちゃわからない」となるのも当然のことで、私の席の近くにも5歳くらいの坊やがいて、最初は大人しくお座りしていたその子もそのうち飽きてしまったのか、お母さんの制止を振り切り席を離れて歩き始めてしまいました。でもそこはウサギさんスタッフが上手いこと発見し、なだめてくれたようです。安心してお母さんも再び観劇に戻れました。


  普通の演劇公演ならこういった子供の声や言動は眉をひそめられ、最終的には「親はなんで連れてきた?しつけはどうなってるの?早く出ていって!」と親にその冷たい目線と怒りのオーラが向けられるのでしょう。   

でもそれらはどこまで行っても「何も知らない他人の言い分」で、それぞれの親子間である細かい事情なんて知らない。  

そして悲しいことに大人になると子供の時感じた気持ちや想いは忘れてしまいがち。つい「大人の都合」で子供をコントロールしようとしてしまう。

そういった気持ちのすれ違いを少しでも軌道修正出来たら………今より少しだけ居心地よい世界になれるのかもしれない。


  そしてこのとき赤ちゃん連れの親御さんがわりと後方席を選択していた理由もわかりました。
 
  実は後方席奥は「フリースペース」となっており、ここで赤ちゃんをあやしたりオムツ替えや食事を与えるために移動していいことになっていたのです。さらにここには例のウサギさん・パンダちゃんスタッフも多く待機しており、泣いたり飽きてしまった子をあやすお手伝いをしてくれていました。

  そうか、私はつい自分が観劇好きだから「せっかく観劇するなら前列に来てほしい」と思っていたけれど、赤ちゃん連れの親御さんからしたら「我が子になにかあったらあのサンクチュアリであるフリースペースへすぐ行きたい」という想いの方が強かったのか……と認識のズレをここでも確認。



  太一郎さんにとってぎょろたんの誕生は、それまではぼんやり見えていた、しかし確実に身近になった「子育てによる世界」をもっとしっかりはっきり見せてくれる「メガネ」のような存在でもあったのかもしれません。
 
  その「子育てメガネ」をかけた太一郎さんによって作られた今回の公演は、未だ独身でいつ子供を持つかわからない立場の私にとっては、なかなか普段触れたり接することの少ない「子供」や「子育て」というものを、「遠い世界を見つめて細かな部分もより見えやすくしてくれる望遠鏡」のように、これまでより少し距離の近くなった景色として見せてくれました。


  子供や子育ての様子だけでなく、もちろん舞台の上の芝居そのものもちゃんと見れました。お話自体は一度見ているからある程度理解はしているのですが、キャストが変わると役のキャラクターの印象も変わるんだなという再発見も。

ルミネで見たプリマ旦那野村さんの芥川はアウトロー感が強く、それが話が進むにつれ打ち解けていくように見えていたのに対し、高井さんの芥川はどことなく「兄貴感」が最初から強かった気がしました。

ホクロマンこと久保も、ルミネで見た祇園木崎さんのバージョンはご本人のキャラクターもありとにかく「ナルシスト」感がバンバン出ていました。けれど今回の堤下さんはどこかナルシストになりたくてもなりきれない「不器用さ」も出ていて、でもそれゆえに必死で状況を打破しようと悩みあがく姿がどこかいとおしく見えました。これもまたご本人のバックグラウンドを知っているから余計かもしれません。



泣き声は度々聞こえてきましたが、無事公演は終了!カーテンコールではどこからかやってきた坊やが前列に来てジーーッ(゚ヽ゚)とステージをガン見していましたが、それを見かけた高井さんがニコッと笑いかけていた光景を見てホッコリ♪
  「子供は泣いたり騒いだりしちゃだめ!親は子供をしっかり見張ってないとだめ!できないなら来ないで!!」ではなく「子供が泣いたり騒いだりしてもいいよ!親御さんも肩の力を抜いて楽しんで見ていいよ!だからみんなで劇場へ行こう!」という優しい空間が見事に実現した公演となりました。


公演後はもうひとつのリターンである「写真撮影権」のため舞台前に並んでドキドキしながら待機。舞台のセットである木下の部屋をバックに、キャストのお三方と写真が撮れるのです。そしてどうしてもこのとき私は太一郎さんへ伝えたいことがありました。



ついに私の番になり、写真の前に太一郎さんへ勇気を出し一言!




「わたし、メダマーの『なく』です!」



その言葉でピン!と来たのか「あぁーー!!なくちゃん!!来てくれたんだね!!」と笑顔をくださる太一郎さん。SHOWROOMで何度かコメントで名前を読んでいただいていたので、やっとこれが現場で言えてほんとよかった……!!(  ;∀;)


写真撮影のあとは持参した紅茶を太一郎さん・堤下さん・高井さんに一袋ずつお渡し。しかしラッピングの袋の柄が高井さんだけ違い「エッ高井だけ特別~!?」と堤下さんからイジられる嬉しいハプニングもありつつ(笑)大満足で劇場を後に。



開演前にあれだけ降っていた雨はあがっていて、通り道である大阪駅周りは賑やかな人通り。大阪へ来たときのあの不機嫌で憂鬱な気分もすっから晴れて、ルンルン気分でホテルへ戻りました。ちょっとしたミュージカル気分で歌でも歌いたかったけど、不審者扱いされたくないので我慢しておきました。

 
やはり舞台やショーの持つ力はすごいなとこういうとき実感します。疲れやだるさ、憂鬱や不機嫌ですら、観たらあたたかく優しく楽しく心弾むような気分へ変えてくれる。

この素晴らしさがあの同じ会場にいた親御さんや、もしかしたらちびっこにも、届いていたらいいなと思いました。