nakumelo’s blog

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しみけんの絶対座長になりたいんや!! レポ

  「新喜劇の座長になりたい!」という夢を抱き続けている「しみけん」さんこと清水けんじさん。彼がその願いに近づくステップアップとして開催されている「座長になりたいんや!!」新喜劇。10回以上開催されていますが今回初めて観劇することになりました。

  前説がゆたかさんと信濃さんということで女子の黄色い歓声のすごいことすごいこと!しかもお二人ともこのあとのお芝居の関係で黒のスーツでキメていたのでめちゃめちゃかっこよかったです!拍手の練習では「パン・パパ・パン」で合わせるときにゆたかさんがジャケットをはだけさせてさりげなく乳首アピールをしていました(笑) 私の目の前の席の女性陣はお二人のファンだったのか登場からハケるまでずっとキャーキャーうれしそうでした。


幕が開くと、なんとそこは葬儀会場。しみけんさんが主任となって葬儀屋スタッフの藍ちゃんとスケちゃんこと祐代さん(昨年入団した金の卵8個生のひとり)がせっせと会場準備をしていました。ちなみにこのスケちゃん、私は生で見るのが初めてだったのですが、一歩間違えれば棒読みにもなりそうな独特のテンポと間の取り方、さらには「サ行」が「ダ行」に変換されてしまう滑舌で「おいおいこれお芝居できるのか?」と驚きましたが、不思議といるだけで笑いを取れる所謂オクレさんタイプのようでした。期待の大型新人到来です。

  亡くなったのは浜さんことチャーリー浜さんなのですが、バタバタと準備をしているうちになんと亡くなったはずの浜さん本人がフラフラと歩いているのが発見され、あわてふためく藍ちゃんとスケちゃん。そこで、しみけんさんとご近所に住む浜さんと仲良しの信濃さんが事情を説明します。実は浜さんが死んだというのは嘘で、この嘘によって最近ほとんど顔を見せなくなった三人の息子たちがそれぞれどんな反応を示すか確かめたい、そしてそれを本当に亡くなったときの財産配分の参考にしたいとの浜さんの願いでした。それを聞いた信濃さんがしみけんさんへ嘘の葬儀の依頼をしたというのです。葬儀は「故人の意向」ということであえて目立つ玄関先の屋外で行われることに。

  そしてやって来る三人の息子とその身内。長男の忠志(西川忠志さん)は妻の真希(前田真希ちゃん)とやって来て、お互いを「ただちん」「まきちん」と呼ぶほどの仲良し夫婦なのですが、忠志のお数珠の持ち方を注意するとき「ただちん、(持ち方は)こうよ」がだんだんテンポが早くなってきて「ただ“ちんこ”うよ!」となかなかヤバいワードが連発され場内が騒然とします。あんな美人が大声で「ち〇こ」って ……
  次男の裕(ゆたかさん)は従順な妻の幸恵(鮫島幸恵ちゃん)とバスケが得意な息子のヒロユキ(しみひろくん)を連れてきたのですが、このヒロユキの容姿がどっからどう見ても外国の、しかも黒人系で、色白かつ日本人顔の両親とはまったく似ておらず、「あの奥さんなんか隠してんじゃない?」と疑うしみけんさん。
  三男の雅斗(桜井雅斗さん)は耕一(うかわさん)という時々唇から「ブブッ」という音を出す変なくせを持つ男性を連れてきます。この耕一、父親の死を悲しむ雅斗の手をぎゅっと握ったり、「僕の胸で泣いていいんだよ」と雅斗を抱きしめ髪がグシャグシャになるほど撫でるなどかなり親密な様子。彼らは同性カップルなのです。

  一癖も二癖もありそうな三兄弟とその身内は、案の定挨拶もそこそこに遺産配分について揉め出しました。そこでしみけんさんは一旦遺族を家の中に入れ、スケちゃんに「棺のなかに入れたい故人にゆかりのあるもの」を遺族から聞き、それを手配するよう命じます。その間に浜さんを呼び出し、一度棺のなかに入るよう頼んでも嫌がる浜さん。それなら私が替わりに、となぜか藍ちゃんが名乗り出て意気揚々と棺に入りますが、彼女のふくよかすぎるボディにサイズが合わなかったため、なんと底がぶん抜けるほど棺が大破してしまいました。ヤバイバイバイ!!とテンパるしみけんさんと信濃さんの前に現れたのは「契約が全然取れないよ~」とやたら大声で嘆く保険セールスマンのもりすけさん。しみけんさんがあとで葬儀会社の仲間や知り合いを紹介してあげるのを条件に、もりすけさんを浜さんの死体役をオファー。ステテコ姿・顔は見せない・棺がないのはすべて「故人の意向」ということで押し進めることに。便利なワードだな「故人の意向」て。
 

でもこれだけでは浜さんに対する本心が聞けないよなぁと悩んでいると、金髪で威勢のよいヤクザの吉田ヒロさん登場!スケちゃんの借金の取り立てにきたヒロさんを見ていたしみけんさんは「お父さんに借金があって財産が減るってなったらあの人たちどうなるかな?」と提案。さらにさらに「隠し子までいて、遺産配分が減ることになったら?」ということで、一芝居うつことに。藍ちゃんとスケちゃん、そしてスケちゃんの借金をしみけんさんが立て替えるという条件で、プロの借金取りのヒロさんをそのお芝居のキャストに抜擢。3人は街に出てそれらしい格好をしてきて葬儀に来ることになりました。そして浜さんは眼鏡をいつもと違うデザインにするマイナーチェンジで花屋に扮して様子を見守ることに。

 
  そんなこんなでいよいよ葬儀本番。死体役なので絶対動いてはいけないもりすけさんですが、様々なトラップが待ち構えていました。「お酒が好きだったから」とカップに入ったお酒を幸恵さんがうっかりひっくり返して顔にかけてはビクつき、「鳥が好きだったから」とお腹を押すと「グエーー!!」と鳴くニワトリのおもちゃの声にビクつき、そのたびにどうにか「死後硬直です!!」「皆さんの記憶になかにある浜さんの残像です!!」などと言って遺族をごまかすしみけんさんと信濃さん。
  トドメに「おぜんざい」をオーダーしたはずが、手配したスケちゃんの「サ行」が「ダ行」になる滑舌の悪さのせいで「お“で”ん“だ”い」が用意されているミラクル発動!!私のいる一階席からはばっちり湯気も出ていたし、鍋を持つゆたかさんも「誰かこれ持つの変わって!もう我慢できない!!」と悲鳴をあげるほどだったので、熱々なのは間違いない状態。そんなおでんのたまごをもりすけさんの口に放り込もうとして、客席からは悲鳴が……そして口に入った瞬間、勢いよく飛び出すたまご!!さらに鍋から汁がこぼれて顔に直撃!!そして海老のように思いきり跳ねるもりすけさん!!顔にかけていた白い布はビショビショになりました。それでもなお、どうにかごまかして葬儀を続行。途中で眼鏡をマイナーチェンジして花屋に扮した浜さんがやって来ますが、息子たちは全く気づきません。

  お経をあげに来たお坊さんの今別府さんもかなりクセがあり、独特の間でお経を読んだり、スマホの音源でお経をごまかして葬式まんじゅうをパクついてサボってるうえに、訪問客(玉置さん)の香典を盗もうとするなど俗を捨てきれていない様子。さらに浜さんの近所に住んでいるボビー(安尾さん)がやってきたのですが、このボビーは「黒人系の外見・元バスケのプロ選手」というどこかで聞いたことのある特徴で、さらに「特に次男夫婦とは家族ぐるみで仲良しだった」ということから、恐らくヒロユキは……

  疑惑が確信に変わりつつあるとき、いよいよ作戦実行で3人が帰ってきました。さあ借金取りやってこい!と思ったら出てきたのはヒロさんのスーツを着たスケちゃん!!スッカスカの甲高い声&棒読み気味で「かね、かえさんかい!!」と叫ぶもんだから全員ポカーン (゚д゚)
   「てことはあの二人が隠し子役!?」とハラハラしていると次に現れたのは、最近人気急上昇中の某カップルタレント風の出で立ちでやって来た「ベコ(藍ちゃん)」「ヒロちぇる」  ヒロさんの短パンとカラータイツが思いきりよく似合っていました。
 
  借金取りと隠し子が遺産を要求し、テンパりだす三兄弟とその身内。責任を擦り付けあうその姿を見てたまらずスケちゃんは「どうしてお金のことばっかりでお父さんのことを考えてあげられないんだ!」とぶちギレます。さらにヒロさんまで「俺も金に関しては偉いことを言えたもんじゃないが、身内の金の争いって醜いぞ」と指摘。さらにさらにボビーも「うばいあいは、よくないヨー」と話してきますが、そこは「お前が言えたもんじゃないだろうが」としみけんさんがつっこんでいました。そこでついに真実を話すしみけんさん。三兄弟たちはやっと冷静になり、もっと父親との時間を、そして兄弟間のつながりを大切にしようとお互い誓い合うのでした。

  無事問題も解決し、葬儀屋さんには早速次のお仕事が待っていました。今度の故人はどなたかな?と遺影を見ると、なんとさっき訪問客としてやってきた玉置さんの写真が!!いつの間にか会場を去っていた玉置さんはもしかして幽霊……!?というミステリアスなオチで本編は終了。

  さすが次期座長と言われているしみけんさん、話の作り方も丁寧で、テンポも良く、出演者ひとりひとりに見せ場のある舞台で、素直にいちいち大笑いしたり驚いたり時にハラハラしたりと見どころいっぱいでした!なによりしみけんさんの「回し(主にツッコミをしながらお話を進行していくための補正係みたいなポジション)」が的確でこれだけ盛りだくさんでもきちんとまとまっているんなぁーと実感。
  これだけの実力がありながらなかなかなかなか座長昇進が出来ないのは、大人の事情とかもあるのかなとは思います。それでもやっぱり、頑張ってる人が報われてほしいし、夢はどんどん声に出していかなきゃ近づけないし、やりたいことやなりたいものは堂々と主張していいんだって、しみけんさんを見ていて思いました。
  夢の花は間違いなく根を張りつぼみをつけているはずなので、花開くまであと少し、もう少し、踏ん張ってほしいなと思います。願わくば次回開催時のラストにサプライズの昇格発表があればいいな♪

  余談ですが終演後、なんだか妙におでんが食べたくなって、コンビニで買ってホテルの部屋で食べました…(笑)




 

エンタメ新喜劇第三弾レポ

人気絶頂の変幻自在エンターテイナー座員・アキさん主催の大人気イベント「エンタメ新喜劇」第三弾へ行って参りました!人気ゆえにチケットの入手も難しくなってきており、今回はギリギリで2階の端っこの席が取れました。「見えづらかったらどうしよう」と念のため双眼鏡を持ってきましたが、全体を見渡せてそれほど遠くなく双眼鏡なしでも充分楽しめる距離感でした。

  幕が開くと、銀色の髪で和服に身を包んだ侍アキさんをセンターに、ダンサーさんたちが正座でお辞儀をしている格好でスタンバイ。神秘的な音楽が流れ、日本舞踊風のダンスを披露。
そこへ突然聞こえてくる悲鳴。時は江戸時代で、無情な役人たちにより罪のないはずの庶民たちが次々と理不尽な理由で処刑されていっていました。家族を役人に斬り殺され嘆き悲しむ人々を目の当たりにした侍アキさんは怒り狂い、憎き役人たちを自分が成敗してやろうと立ち上がります。
  得意の剣術で次々と役人たちを斬り倒していく侍アキさん。そのうちの一人は「絶対に……死ぬものか……!!俺は死ぬわけにはいかないんだ……!!」と最後まであがき立ち向かいますが、とどめを刺さればったりとその場へ倒れこみます。そこへ駆け寄ってくる小さな男の子と女の子。この二人はその役人の子供でした。瀕死で息も絶え絶えの父を前に大泣きする子供たち。

「おとうちゃん!!死んだらいやや!!いややぁぁぁーー!!」

  悲痛なその子供たちの声と涙に、手を震わせ刀を落とす侍アキさん。自分もまた、役人たちのように、誰かの大切な家族を奪ってしまったのでした。そして、天を見上げ、叫ぶのでした。


「償いは……次の世で!!」


 
 
  時は巡りめぐって現代。関西のどこかにある小さな離島。 ここではアキさんはお医者さんとして、元バスガイド(ほんとにそういう経歴だそうです)の看護師絵美ちゃんと共に活躍していました。車に着いてる「タイヤ」が好きで タイヤ“のみ”が描かれているポスターを所持しており、やたらタイヤの魅力について熱弁を振るう少し…いやだいぶ変わった趣向の持ち主ですが、優しく穏やかな性格と確かな技術の持ち主で、民宿「しおかぜ」のオーナーのあき恵ママやその息子のしみけんさん、漁師の太田さん、スキューバダイビングのインストラクターの高井さん、謎の中国人の陳さん(森田さん)、小3女子とは思えない貫禄の藍ちゃんをはじめとする子供たちなど、島民から絶大な信頼を得ていました。
  なお、タイヤの魅力については「なんでみんなタイヤに興味持ってないんだ!!絶対一度はお世話になってるはずだろ!!車とかタクシーとかバスとか!!これなきゃ走んないんだよ!!僕は小4のときからずっと好きなんだ!!そんでこーやって夢中で話してくうちに友達が減っていく!!」と語っていました(笑)
 
そして「しおかぜ」ではこの度新しいアルバイトを採用したのですが、「初日から遅刻している」という私も含めお客さん全員期待通りの人材。そして現れたのはやっぱりアイツ!!!ハチャメチャじぃさん茂造です!!!登場したときの歓声はやはりものすごく、お約束通り思いきり蹴り飛ばした鞄は宙を高く舞って「しおかぜ」の中へと落下!!絶好調!!「履歴書の写真はもっと若かったのになんでこんなじぃさん来ちゃったの!?」と困惑するしみけんさんに、「ワシの若いときの写真使ったんや」と平然と詐称をバラす茂造。ともかく従業員として働くことになりました。
  
   さて、この島にはたまに珍客も訪れるようで、藍ちゃんが海辺で倒れている人を見つけてきたとのこと。軽快なテーマソングと共にやって来たその方は、なんとなんと「アホの坂田」でお馴染みの坂田利夫師匠!!まさかのサプライズゲストの登場に客席のどよめきがすごかったです。「いっぺん絡んだことあるけど、この人は台本なんか読まずにマジで自分の思うがままにしかやらない」としみけんさんが恐れていたように、会話のキャッチボールで予想外の変化球をぶん投げてくるかなりの奇人ぶり。そんなトリッキーなアホの坂田師匠ですが、客席から興奮したちびっこの「さかたー!さかたー!あほあほー!」という声が聞こえると「そーやで!おっちゃんアホやでー!でもこのアホでマンション買うたんや!すごいやろ!」と即座に笑顔で対応していたあたり、やはりベテラン名コメディアンだなぁと実感しました。結局アキさん医師の「アホは治療のしようがない」という結論により、アホアホマンはたくさんの拍手に見送られて帰っていきました。


  そんな和気あいあいと明るくのんびりした島の生活を送るアキ先生ですが、島民たちの噂によれば「東京の大病院に勤める優秀な医師だったが、自分の息子の手術に失敗したトラウマから、メスを握るのを諦めてこの島へ逃げてきてしまった」とのこと。
ある日、陳さんの目の前で全身真っ白な男の子がドスドスと走り回っていました。霊感のある陳さん以外には見えないその幽霊のヒロユキ(しみひろくん)は「僕はおとうさんが手術が出来るようにならなきゃ成仏できないんだ…でもおとうさんに、僕は見えないし声も届かなくて……」と寂しそうな様子。

  そんななか、いかにもガラの悪いチンピラ三人組の太一郎兄貴とその弟分のゆたかさん真也さんがやって来ます。この三人、アキ先生が「特注の人体模型・モリスケ(もりすけさんが演じているので時々ピクッと動く)」を買うため借りたお金を取り立てに来ていたのです。本来の金額はとっくに返済していたのに、巧妙な手口により900万円台の利子がついていたのでした。
「ちゃんとこっちにはあんたのサインが書いてある借用書もあるんだぞ!」とゆたかさんは真也さんに借用書をポーチから出すように指示しますが、なかなか見つからない様子。その間にヒロユキがあらゆる物を次々と手渡し、それに対してゆたかさんがいちいちモノボケをかますというやりとりがしばらく続きます。さらにそこに茂造も加わり、自分の愛用の杖を渡してモノボケを強要!ゆたかさんはパレードの先頭の人、巻き添えを喰らった太一郎兄貴は杖にまたがって「空も飛べるはず!」と見事にかましていました(笑) 自分にも振られるんじゃないかとビクビクしている真也さんの顔色の悪さは二階席からも伝わるほど…… 
そんな真也さんですが、お得意のギターネタでは「借金を今すぐ払わないとどうなるか」の歌でどんな仕打ちを受けても最後は「幸せになる♪」のオチになるギャグを披露し、会場を沸かせていました。

  三日間の猶予が与えられましたが、そんな短期間ではとても揃えられそうになく、島民たちもなんとか力になりたいけれどもそんな大金は協力しようがないため、みんなは困ってしまいました。ヒロユキも心配そうに見守っていました。
  結局解決策のないまま約束の3日後に。そこへしおかぜに入る、アキ先生宛の電話。それはかつて勤務していた東京の大病院からで、今すぐにでも手術が必要な患者さんがおり、アキ先生ならその難しい手術も施せるだろうということ、さらにその報酬は一千万円という多額だということが伝えられます。アキ先生は“手術”という言葉にためらいますが、「先生じゃなきゃ救えないんだよ!待っている人がいるんだよ!!」「そのお金があれば借金だって返せる!!」と背中を押され、引き受けることを決意。まずは本土へ上陸するため一日一便のみのフェリーへ向かおうとします。

そのとき、血相を変えた太一郎兄貴が走ってやってきて、「頼む!!ユタカを救ってくれ!!」と懇願します。敵対する組織の者に襲撃され、腹部を押さえてぐったりと青ざめるゆたかさん。彼を支えている真也さんも心配そう。
  「東京の大病院なら僕以外でも優秀な医者はたくさんいる。でも……この島に医者は僕しかいない!!」と東京には向かわず、目の前の、自分にとっては厄介者であるヤクザのゆたかさんの手術をしようと決めるアキ先生。椅子を並べて手術台を作り、太田さんが釣ってきたハリセンボンの針を麻酔代わりに、高井さんがスキューバダイビングで使う酸素ボンベを呼吸器に、真也さんのギターの弦を最後の仕上げの縫い糸に使うことに。まるで「Dr.DMAT」のような即興のオペ環境を作り上げ、いよいよ手術開始!

  しかしメスを握ろうとした瞬間、アキ先生の無意識のなかにあった前世の――冒頭のあの江戸時代での記憶が甦り、あのときのあの子供たちの「死んだらいやや!!おとうちゃん!!」という悲痛な声が頭の中に響きます。その声に体を震わせ、手の動きが止まってしまうアキ先生……


  「だめだ……ここで諦めては……僕は医者なんだ!!命を救うんだ!!」

  気合いを入れるため、足踏みと手拍子でリズムをとるアキ先生。そのリズムはやがて一定のものになっていき、そこに絵美ちゃんがソウルフルに歌い上げると……あの「We will lock you」の音楽が!!調子が出てきて白衣を脱いで踊り出すアキ先生。さらに応援するため島民たちもそれぞれのスタイルでダンスに参加します。この中のひとりに今回もパワフルでアクロバティックなダンスを見せてくださった島民役の方がおられるのですが、後にあの「ワークマン」のCMで作業着を着てキレッキレに踊っているダンサーさんだと判明!!今回もアキさんがチョイスする人脈の広さに脱帽でした。
さらにさらに茂造をはじめとする新喜劇座員チームはみんなでEXILEのチューチュートレインのような動きをしたり、リゾート客役のまりこちゃんが十八番のゴリラの真似、景子ちゃんが大会優勝経験もあるバレエ、藍ちゃんが四股を踏んだりとこちらも負けてはいません! 
  見事にダンスは盛り上がり、客席からは歓声と拍手の嵐!指笛を鳴らす音も聞こえてきました。

  その後、手術は無事に成功し、ゆたかさんは一命をとりとめました。そして太一郎兄貴は「治療費の替わりだ」と、目の前で借用書をビリビリに破いて去っていきました。

  実は冒頭の江戸時代でのシーンは、何人かは本編と同じキャストがそれぞれの「前世」を演じており、太一郎兄貴の前世はアキ先生に仕留められたあの子持ちの役人だったのです。「償いは次の世で」という誓い通り、彼と彼の守るべき存在をすべてを受け入れてそれが消えぬように己と闘ったことで、償いを果たしたのかな、それこそ「いーよぉー」とお互いに言い合えるようになったのかなと思いました。

  「手術がまた出来るようになって、これでやっとヒロユキくんも成仏できるアルね!ずっとおとうさんを見守ってたアルよ!」と嬉しそうに話す陳さん。しかしここでアキ先生から衝撃の事実が……

「僕の息子はヒロユキって名前じゃないし……そもそも手術失敗したっていっても盲腸のやつなんで、元気で妻と本土にいますけど?」

………じゃあヒロユキって誰の息子の幽霊なんだよ!!とちょっとミステリアスな謎を残して、本編は終了。


  カーテンコールでは、アキさんが今回出演してくれた坂田師匠やダンサーさんや子役ちゃん、さらにいつもお世話になってる茂しゃんへのお礼の言葉が延べられました。そして茂しゃんからアキさんへメッセージが。

  「彼は本当に真面目ですよね。ここまで多才なのになかなか芽が出ず、たくさんたくさん悩んできました。“やめたい”って何回も相談受けました。それでも頑張ってここまでやってきてくれました」
  その言葉に、うつむき加減になるアキさん。そしてそれを見て「おいお前なに泣いてんねん」とつっこむ茂しゃん。前回の公演同様、石田さんや茂しゃんのように認めてくれる人がいて、こうして主催のイベントが出来ることは、私たちが想像しているよりずっとずっとご本人にはプレッシャーであり光栄なこと、もしかしたら叶わないと一度は諦めた夢だったのかもしれません。どうかやっと叶ったこの夢は消えないようにいちファンではありますが支えていきたいなと改めて思いました。

  そしてその夢の続きである第4弾公演が12月に2daysで行われることが決定しており、公演後にはロビーで先行発売&特典として写真撮影が行われました。今回も長蛇の列が出来ており、前回は友人に着いていくだけだった私も、今回は「とりあえず今買っておけばあとからシフトはいくらでも調整できる!」と強気に開き直り、自ら並んでみることにしました。
  アキさんは公演直後で、しかも私はかなり最後尾に近い順番でしたが、疲れも見せず、笑顔で目を合わせて「ありがとうございました」と声をかけてくださり、「いーよぉー」ポーズで撮影に応じていただきました。さらにそのあとには森田さん・高井さん・もじゃさん・もりすけさんも待っていてくださり、こちらもやはり疲れを見せず、なかには次の日のチーム内場祇園公演のお稽古を控えておられる方もいたのに、丁寧に笑顔で対応してくださいました。うれしくて4人全員と握手して、そのままスタッフさんに預けたスマホを忘れて帰ろうとして高井さんたちに「ちょっと!カメラ!カメラ!」と呼び止められて一瞬その場をざわつかせるというハプニングを起こしてしまいました……あのときは本当に本当にすみませんでした(  ;∀;)

  その直後にこのブログの第一回エンタメ新喜劇レポの閲覧数が急上昇し、それだけアキさんが注目されているんだな、そしてこんな私の拙い文章のレポでも待っていてくださる方はいるのかなと思えました。それなのに、多忙を言い訳になかなか更新できず申し訳ありませんでした。必ず仕上げて更新するということはモットーとしておりますので、どうかこれからも読んでいただけたらなぁと思っております。

佐藤太一郎企画その17「THE END’16」レポ

  「ランニングマイム」てご存じですか?    文字通り「ランニングやマラソンで走っているように見せるパントマイム」なんですが、ただの足踏みじゃないんです。足を伸ばし方、腕の振り方、表情。時に正面向きから横並びへ、前から後ろへ行きまた前へ……のように演者の体を動かすといった数々の工夫を凝らすことにより、カメラワークが一切無い舞台上でも臨場感たっぷりにマラソンをしている場面を表現できます。ただしこれを演じる為にはそれこそ本物のマラソンを完走出来るほどの相当な体力が必要。
 
  そんなランニングマイムで全編お送りするという前代未聞のお芝居・佐藤太一郎企画その17「THE END’16」を観て参りました!今回はNGKのお隣に設立されたYES THEATERという地下劇場。

  私が観劇したのは初日公演なのですが見事に満席。でも平日の夜ということで、仕事や学校を終えてから来る人もいるのか、なかなか受付が間に合わず、少し時間が押していました。まだかなぁ~なんてぼんやり席で待っていると、後方からやたらでっかい「あ~~郵便物ないかなぁ~~このままじゃ配達できひん~~」と嘆く声が聞こえてきました。郵便局員の格好をしたキタノの大冒険さん(すごい名前だな…)でした。始まるまでの間、注意事項やウェーブ、観客のみんなで自分が住んでいる地域の郵便番号を言い合う(当然揃わない)など、会場を盛り上げてくれました。やがて白ジャージに白髪混じりの太一郎さんも舞台へ出てくると、会場からは拍手と歓声が!再度注意事項を伝えると、いよいよ舞台が始まります!


  舞台中央で布団を眠る太一郎さん。薄い幕の向こうでは、ひたむきに走る一人の少年。どうやらこれは夢の中。どうしても乗りたい電車があり、それに向かって走り、やっとホームまで来たそのとき、駅員に呼び止められて……というところで、けたたましく目覚まし時計のベルが鳴り、太一郎さん演じる日暮(60歳)は目が覚めます。時刻は早朝4時。
  するとそこには謎の男が。日暮の守護霊と名乗るその男(森崎正弘さん)によれば、日暮はあと12時間後の夕方4時にこの世を去る運命とのこと。今日は午後1時からは日暮にとって大事なマラソン大会が開催されることになっています。それなら悔いなく完走してみせる!と意気込んで、日暮は出掛けていきます。

OP演出で、それまでかかっていた薄い幕に「THE END’16」の文字が光で浮かび上がり、そのあと太一郎さんが走って登場!ランニングマイムをしながら走る太一郎さんに並走して、名前を書いたボードを持った役者さんがやはりランニングマイムをしており、まるでアニメやドラマのOP映像のような迫力!!他の役者さんも自分の名前を書いたボードを持って現れて走って、めちゃくちゃかっこよかったです。

   さて、マラソン前に行う日暮の仕事は、新聞配達。中学生の頃から今は亡きここの所長の立春(奥田卓さん)にお世話になり、脚力はここで鍛えられたのです。また、「新聞は刷りたての温かさを届けるために一分一秒早く届けろ!」という情熱的な志も受け継いでいました。ちなみに現所長は新喜劇座員の「とんちゃん」こと吉岡友見ちゃんが演じる美春なのですが、ほんとにあの所長さんの娘?てぐらいのーんびりな口調で笑わせてくれました。

   ウォーミングアップも兼ね、一件一件に心を込めながら人生最期の新聞配達をする日暮。その最中、ふとしたことから二人の中学生女子と出会います。ひとりは陸上部の長距離エース選手で、このあとのマラソン大会にも優勝候補で出場予定の夏美(上野みどりさん)。もうひとりは落ちこぼれ長距離ランナーで、マラソン大会にも出場予定だけどコーチからもまったく相手にされていない千秋(中島舞香さん)。そしてこの二人が所属する陸上部のコーチは、かつての日暮のライバル・暁(ドヰタイジさん)でした。 どうせキミなんか出るだけ無駄だよ、と鼻で笑われる千秋を庇い、必ず俺たちは完走してみせる!と意気込む日暮。さらに、暁にも、「本当の決着を着けるために、ちゃんとお前も出場せぇよ!」と勝負を挑みます。
  さらに、ドジが災いしてこれまでまともな写真を撮れていないスポーツカメラマンの吹雪(四方香菜さん)も日暮に心を打たれ、彼のゴールシーンを必ずカメラに収めると誓うのでした。

  ところどころで、日暮の少年時代の回想が入ります。 両親を亡くし、立春にお世話になりながら新聞配達を手伝う中学時代の日暮(山本誠大さん)は、今とは違い毎日を憂鬱に過ごす孤独で無愛想な少年。そんな彼に「いっしょに陸上部でマラソンをやろう」と誘ったのが、当時の陸上部顧問である小春(鮫島幸恵ちゃん)でした。最初こそ強引な勧誘に嫌々付き合っていた日暮でしたが、小春に憧れる気持ちと走ることで得る楽しさと爽やかさを知り、マラソンへのめり込んでいきました。この陸上部に若き日の暁(中山貴裕さん)も所属しており、大会では常に一位のエース。とにかく完走を目指す日暮は暁にとってはうっとおしい存在ではありましたが、どこか気になる存在でもありました。
  回想していくうちに、日暮に片想いしていたハイテンションカメラ女子の冬子(塩尻綾香さん)が吹雪の母親であることや、あの守護霊が酔っぱらいなどに扮して時々様子を見に来ていてくれたことなどの事実もわかってきました。

  年老いた小春は現在は丘の上の病院にいるので、日暮は大会までの空き時間に千秋と吹雪を連れて、電車に乗って小春先生へ会いに行くことに

ところで、ここまですべてのシーンで、背景のハリボテが出てくることはありません。小道具も基本は目覚まし時計・新聞・タスキ・カメラなど必要最低限のみ。あとは音楽とナレーション、そしてパントマイムや役者さんの表情などの演技によって「ここは中学校なんだな」「あぁ今電車に乗っているんだ」などが表現されます。映像のように編集ができず、限られた舞台という空間だからこそ、そしてなにより、役者さんたちの熱意と演技力があるからこそできる表現の仕方なんだと思いました。
ガラスの仮面」でマヤが体育倉庫に有るわずかなものと演技力によって、倉庫内を見事にベネチアの街に変えたあの名シーンのようでした!!

  病院に着くと、車イスに乗った小春先生がおり、そこで日暮は40年前に起きた事実を知ります。
  中学卒業後もマラソンと新聞配達を続けていた日暮は、先生の自宅にも毎朝新聞を届けていました。しかしある日、実家の都合で遠い町に引っ越すことになった先生。その先生の引っ越す当日の朝、餞としていつものように新聞を届けた日暮。しかし新聞が風にさらわれ、交差点まで落ちたそれを拾おうとした日暮はあやうく車に牽かれそうになり、それを先生は咄嗟に庇ってくれたのです。そしてこの事故がきっかけで、先生は視力を失ってしまったのでした。そして日暮にはその事実を告げずに町を去ったのです。冒頭の発車間近の電車に向かうあの夢はどうやらこのときの「先生に新聞を渡せなかった」思い出というか、後悔のメタファーだったようです。
  がっくりとうなだれ謝罪と後悔の言葉を述べる現代の日暮に対し、先生は優しく頭を撫でてくれました。そして、「目には見えなくてもあなたの足音はわかるから」と大会に向けて励まします。小春先生は20代の役も80代の役も幸恵ちゃんが演じていましたが、ハツラツとした元気な20代も、体こそ弱々しくても優しく凛とした80代も見事に演じわけていました。

 
  一方、暁もまた、大きな決断を迫られていました。中学以降もトップランナーを維持していた暁でしたが、極端なまでに「一位以外はムダ」という考えの彼は、誰かに越されるぐらいなら勝ち逃げするほうがましと、まだまだ体が充分動かせるうちに現役引退をしてしまったのでした。しかし、変わらぬ日暮の情熱に心動かされ、ふたたびスパイクを手に取り、スタート地点へ向かいます。

   午後2時になり、それぞれが様々な想いを抱え、たくさんの人が見守るなか、ついにマラソン大会がスタート!!夏美と暁はグングン進んでいくなか、日暮と千秋はあっという間に最後尾へ。それでも二人は諦めず時間内完走を目指します。やがて暁を抜きそうになる夏美。一番弟子に全力疾走で抜かれることで、暁は、清々しい気持ちでやっとトップへの呪縛から離れることが出来ました。その後は日暮とほぼ同じぐらいの位置まで遅れをとった暁ですが、「ギョロ目!」「細目!」「バーカバーカ !!」「なんじゃいクソッタレ!!」とお互いに軽口を叩きながら、けれどどこか楽しそうに走ってゴールを目指します。

  15時55分、マラソン大会と、日暮の生涯の終了時間まであと5分。夏美は暁の期待に応え見事トップ。そこから遅れたとはいえ暁も既にゴールしており、あとは日暮と千秋のみ。配達所の仲間や看護師さんに連れられた小春先生も不安そうに二人のゴールを待ちます。
  日暮より一足先に千秋がゴールしようとしたそのとき、日暮がお守替わりに渡していた赤いハチマキが風で飛ばされ、交差点の真ん中へ。なんとこの交差点は小春先生の事故が起こったまさにあの場所!!そしてハチマキを拾おうとした千秋に向かって、やはりタイミング悪く車が走ってきます!!
  あの日の思い出がフラッシュバックし、足を止める日暮。その一瞬時が止まり、守護霊が「どうなさいますか?あと少しでゴールですし、タイムリミットも迫っておりますが」と尋ねてきます。


「そんなん、決まっとるやろ……!!」


  日暮はあの日の小春先生のように、自分が千秋の前に立ち、庇う日暮。車との衝突によるダメージで体は限界寸前のボロボロのなか、あとほんの数センチまで迫ったゴールまで這いつくばります。そして、それを固唾を飲んで見守る人々。

最後の力を振り絞り、日暮がゴールへ手を伸ばした、そのとき、けたたましく鳴り響く目覚まし時計のベル。午後4時となり、無情にもマラソン大会と日暮の生涯は終了時間となってしまったのでした。


  残念やったなーと苦笑いする日暮の魂に、守護霊は新聞を渡します。明日発行されるそれには日暮が最期に遭遇した事故に関する記事が書かれていました。

  実はあのとき、倒れた瞬間、手はしっかりとゴールラインを越えていたこと、つまり「完走していた」という事実が記載されており、それはその瞬間を約束通り吹雪がカメラで撮っていたことにより判明。記事にはその写真が使われていました。
  この日暮のマラソンに捧げた情熱を伝える熱い記事は、明日の朝には刷りたてのあたたかい状態で配達所の仲間によって配達され、各家庭に届けられるのです。
  目標を達成できたことと、それを多くの人に伝えられたことで、満足した日暮は、守護霊に導かれ天国へ向い、清々しい気持ちで人生の幕引き__THE ENDとなったのでした。


  本編が終わるとお約束で出演者の方々が一斉に舞台に出てくる「カーテンコール」がありますが、あまりにも拍手が鳴りやまずなんと3回も行われました!別の日にはスタンディングオーベーションもあったそうです!!
  これでもかというほど熱く熱く暑苦しさすら感じるまっすぐすぎる情熱的な舞台でした。けれど見終わったあとには、さわやかで清々しくほっと優しい気分になり、それまで悩んでいたことがぱっと晴れてなんだかなんとでもなりそうだ!と前向きになりました。

  なんでもこの「THE END」は太一郎さんが新喜劇入団前に所属していた劇団の人気作で、今回はそれのリメイク公演だったそうです(だから今回は「’16」の表記がある)。
  そしてその後、太一郎さんご本人のFacebookにより、この「佐藤太一郎企画」は1~2年ほどお休み__「助走期間」に入ることが発表されました。もっともっと新喜劇を通して、役者さんとして演技力や知名度を高めてから、改めて挑戦してみたいとのことです。
私は今回のこの公演で佐藤太一郎企画は3回目の鑑賞で、どの公演からもたくさんの希望ややる気をもらってきました。その企画がしばらく見れないのは寂しいですが、助走のあとは必ず全力疾走してくださるはずなので、楽しみに待ちながら、新喜劇座員さんとしての太一郎さんを応援していこうと思っています。

  今回、多忙が重なり、すぐにレポが仕上げられず悩むことも多かったですが、日暮が最後までゴールを信じて突っ走ったように、どんなに遅くなっても必ず自分なりの形で完成させようと決意し、ここまでこれました!
長くなりましたが、最後までお付き合いありがとうございます!


 
 


 

舶来寄席新喜劇東京公演レポ

  新喜劇と世界中の名パフォーマーによる手品や演芸が見れる「舶来寄席」。今年はなんとアキさん・茂しゃんのチームが、東京でも公演を開催!!ジャニーズの舞台でも多数使われているグローブ座での初日公演に行って参りました。

  ジャニヲタ歴10年以上ながら、グローブ座へ行くのは初めてだった私。まず到着して目に入ったのは、6月後半から行われる丸ちゃん主演の「マクベス」の大きな看板。その麗しさにジャニヲタ兼任の者としては「あぁなんて凛々しいのかしら…」とうっとり眺めていました。
  グローブ座がジャニーズが権利を持っていることは知っていました。そしてジャニーズのタレントでも集客力のあると見込まれた人材しかあそこを使うことが出来ません。だからあそこでアキさんがリーダーとなって新喜劇を行うと聞いたとき、ものすごい革命的なことが起きた!!と大騒ぎしていました。吉本のタレントさんがここで公演をするなんて!!
 

  しかし今回は開演前にふたつ、不安な要素がありました。
  ひとつは、NGKのときとキャストの入れ替えがあり、関西のオリジナル座員さんは茂しゃん・アキさんの他は森田さんと伊賀さんだけであるということ。
  もうひとつは、私と友人が座った席は右端だったのですが、機材が置いてあるため、下手にお土産屋さん・中央にラーメン屋台がスタンバイされているのはわかったのですが、上手側の一部分が見えなかったのです。始まる前に席を立って中央の辺りへ行ってみると、上手側にはアイスクリーム屋さんがあるようでした。「アイスクリーム屋さんでなにかお話が展開してもわからないよね……」と困惑していると、後ろから「えーーここなら二階席のほうがよかったかもー」なんていう声が聞こえてきてしまい、ますますしょんぼりしてしまいました。
それでも「あの方たちならだいじょうぶ。やってくれる。」と一筋の希望がありました。これまでたくさん笑顔と希望をくれた新喜劇。きっと今日もそれは変わらないと、信じられる気持ちも無くしてはいませんでした。

  
本編が始まる5分ほど前、伊賀さんとインポッシブル・蛭川さんが前説で出てきました。そのとたんに会場は歓声と拍手に包まれました。特に伊賀さんは関東でも知名度抜群らしく「しんかんせーーん!!」という掛け声があちこちから聞こえるほど(笑)  これだけで随分安心しました。

  前説のあと、舞台が暗転し、  いつもの「ホンワカパッパ♪」をヒップホップ風にアレンジした曲が流れ、舞台中央には森田さんが登場。森田さんもまた、「青春時代」やNGKの公演でも活躍が目立ってきているためか、登場したとたんに歓声に包まれました。

  森田さんは公園でラーメン屋台を営んでいるのですが、閑古鳥が鳴いていました。その公園へ着物をアレンジしたようなかっこよくて華やかな服を着た集団(西島巧輔さんとRYTHEM COLLECTIONの皆さん)がやってきました。彼らは大学の映画研究会のメンバーとのこと。そこに「たすけてーー!!」と叫んで走ってくる蛭川さん。どうやら誰かに追われているようです。そして現れたのがアキさん演じるアキコさん!!片手に茶色の物体を持ち、それを押し付けようとみんなを追いかけまわし、しばらくの間舞台中を駆け回っていました。ちなみに、その茶色の物体はアキコさんお気にいりのスパッツだと後に判明(笑)

  アキコさんはこの近所の老人ホームで働いており、お年寄りをお散歩へ連れてきたとのこと。そのお年寄りたち、ケンじぃ(アキさんの相方・ケンさん)やいそじぃ(ISSOPさん)をはじめ、ヨボヨボで背中の曲がったおじいちゃんばかり。しかもいそじぃに至っては点滴している始末。そんないそじぃの孫のトシ(こまつさん)やヘルパーのゆりちゃんもいっしょです。
  「あら?茂じぃは?茂じぃまたひとりでどっか行っちゃったのかしら!?」とアキコさんが言い、森田さんが意味ありげに舞台中央にかばんをセットすると……いつもなら上手から登場が多いのに、なんと今回は下手から茂造登場!!!お約束でかばんを蹴っ飛ばしたら、なんと上手にある機材の上に乗っかってしまうハプニングがwww NGK祇園なら壁をスルッと飛び越えるんですけどね(笑)

  森田さんも交えてみんなで遊ぶことになったのですが、おじいちゃんたちはとにかくマイペース。ジェスチャーゲームをやろうとすると、森田さんがするジェスチャーすべてが「腰痛持ち」だの「心筋梗塞」だの病気関連のものに見えてしまったり、爆笑すると座ってる椅子ごとぶっ倒れてしまったり、挙げ句いそじぃはその拍子に大事な点滴が外れてしまったりもうメッチャクチャ!でもこの点滴、不思議なもので直接刺さなくてもチューブを握っているだけでも、なんならそのチューブを握っている人と手を握っているだけでも効果があるようです。アキコさん曰く「点滴は気持ちだから!!」(笑)
そんなおじいちゃんたちを、比較的まだ背筋もピンとしていて若いほうの茂造は「クソジジィどもめ!」と罵倒しますが、すぐにアキコさんに「そんなこと言わないの!茂じぃだってじゅーぶんクソジジィなんだから!」とたしなめられます。さらっとひどいな (゚ヽ゚)  そんな茂造はジェスチャーゲームの回答でさらっと「ファンキー〇藤」と渦中の人物の名前を出す始末。絶好調ですwww 

   そんななか、森田さんの借金を取り立てにヤクザがやってきます。ヤクザには兄貴分(山本吉貴さん)のほかにふたりの弟分がいるのですが、それがあの「本能寺の変」でおなじみのエグスプロージョン!!会場からは女性のキャーー!ていう歓声が聞こえました。
  そんなヤクザたちを撃退しようとアキコさんが一歩前へ出ると、音楽がかかり、「かかってこい!」とアキコさんが拳を振り上げると、それにビビったのかエグスプロージョンが「すいませーん!」と頭を下げるとおなじみのあの「いーよぉ~」のフレーズが!そしてそのまま「すいませーん!」「いーよぉ~」がリズミカルにリミックスされたカッコいいダンスコラボへ!YouTubeで予告配信されていたのは予習で見ておきましたが、やはり生は迫力が違います。そしてそれを躍り終わるとどうにか追い返すことが出来ました。

  しかしまだまだトラブルは続きます。今度はがっくりと落ち込んだケンジ(伊賀さん)がやってきます。このケンジ、実はケンじぃの息子。ですが親子の間には確執があるようで、ぎくしゃくした雰囲気が漂います。
ケンジはイベント会社に勤めており、この公園で開催されるヒーローショーの企画を任されていたのですが、取引先に騙され、肝心のヒーローたちが出れないことに!!現場に来ていた上司(赤松新さん)と社長(遠藤かおるさん)はカンカン。ケンジをクビにしようとしますが、そこへケンじぃが割って入り「息子の不祥事は私がなんとかするから許してください!」と庇います。かつてシングルファーザーで多忙のため幼いケンジにかまってやれず仲違いしてしまった償いを、ケンじぃなりにしたいと考えていたのでした。
そんなケンじぃの想いを汲んで、アキコさんや茂造をはじめとするおじいちゃんたち、トシやゆりちゃんも力を貸すことに。

  だいじょうぶかなぁ……と森田さんやケンジが不安げに見守るなか、いよいよアキコさんとおじいちゃんたちによるヒーローショーが始まりました。楽しくお掃除するアキコさんの前に、たくさんの荷物を抱えた茂造が。茂造の荷物を持つのをお手伝いして優しいアキコさん……と思いきや、なんと鞄から茂造の財布を盗み出す悪党!それに気づいた茂造は成敗しようと仲間のおじいちゃんたちと色違いのスカーフを巻き、ヒーロー戦隊となって立ち向かいます。アキさん十八番の本格的な殺陣はやっぱりかっこいい!! 
おじいちゃん戦隊がアキコさんをやっつけると今度はトシとゆりちゃんによるライブショー。トシ役のこまつさんはエンタメ新喜劇のときのように片手でピアノ・もう片手でトランペットという超絶演奏テクを披露し、さらにそこに今回はゆりちゃんのパワフルな歌声が加わりました。後で調べてみたら、ゆりちゃんはあの「ハモネプ」出演経験もあったようです (゚ε゚)ワォ!
  最後はいそじぃがリーダーとなり、ヒーロー体操なるダンスを披露。先程まで背中が曲がってたり点滴を点けていたとは思えないほどハツラツとそしてダイナミックでアクロバティックなダンスが次々飛び出します。途中から冒頭に登場したRHYTHM COLLECTIONの皆さんも合流し、大きな扇子や長い棒、ヌンチャク等も用いた武術も交えたアクションを披露。さらにさらに最後の方では茂造もサイドステップでダンスに参加(笑)。最後には皆でキメポーズ!!次の瞬間、会場からは大きな大きな拍手と歓声が!!それもかなり長い時間、1分以上続きました!!それほどまでに観客とステージが一体となった熱気溢れるパフォーマンスでした。
  お話の方は、ショーはもちろん大成功し、ケンジとケンじぃ親子の間にもわだかまりが解け、めでたしめでたしというところで終了。

  もしかしたら東京の、しかも他社の事務所管轄の劇場で、私がぼんやり感じていたよりずっとずっと、リーダーのアキさんには見えないプレッシャーがあったんじゃないかな、とも思います。でも、これまでアキさんが水玉れっぷう隊として、そして、新喜劇座員としてやってきたことは、場所が変わっても通用する大きな武器であり、常に挑戦と精進を続けるアキさんに力を貸してくれる茂しゃんやISSOPさん、ダンサーやパフォーマーの方との絆も再確認出来ました。そこから生まれる熱気が、観客を見事に魅了していくんだな、と思えました。アキさんがこの吉本が力を入れている舶来寄席新喜劇のリーダーに抜擢され、さらに東京公演も任された理由はこういうところにあるんだと思います。

  前回の記事に書きましたように、この日の帰りに残念ながらとても不快な想いをしましたが、こんな風に素敵でキラキラしたステージを見せてくれて、その瞬間のために一分一秒を大切にして精進してくださる方がいるとこの身をもって知っているから、その方々の作る空間へ行くためには一度の不快な想いには負けないぞ!とすぐに思い直すことが出来ました。新喜劇のステージを見るたびに、私はやっぱりものすごい勇気とか希望をもらえているんです。
 
  またこうやって東京で新喜劇が来てくれるように!そして私のように大きなパワーをもらえる人がひとりでも多く生まれるように、影ながら支えていきたいなと思いました!

痴漢“疑惑”案件に遭遇した話

「痴漢」というと、真っ先に思い浮かぶのは、「満員電車で身動き取れない状態でおしりを触られる」というようなシーンだと思います。

  しかし、どうやら、満員状態ではなくむしろガラガラの車内でも、座っていたとしても、起こるときは起こるようです。それも、直接手で触れるのではなく、足や腕などであくまでも「自然に揺れてしまったんですよ」的な様子を醸し出しながら。
  仮にそれがほんとのほんとに「偶然」だったとしても、何度も何度もそんなことが起きたらそら疑われるし何より不快です。知らない人と、ほんの一瞬布越しとはいえ、肌を触れあわせているのですから。

  ここでは、私が遭遇した、そういった「新手の痴漢疑惑」をお伝えしていこうと思います。



  それは、舶来寄席が終わり、新宿駅から地元最寄り駅まで一本で走る某ローカル線で帰宅しようとしたときです。このローカル線、停車駅のひとつで人身事故があり、その影響で10分ほど遅れていました。本数の少ない路線のため、やっと電車が来たときにはぎゅうぎゅう詰めの満員状態でした。

  どうにか乗れて、奥まで追いやられ、チビ故に吊り革に届かないため、ひたすら足を踏ん張って耐えていました。このとき見事に男性に周りを囲まれましたが、なんの不快も感じませんでした。自分がそうだったように、誰もが「とにかく倒れないように」と揺れに必死で耐えていたり、器用な人はスマホをいじったり本を読んだりしていました。私なんか眼中になかったのです。

  ある程度大きな街の駅や乗り換えのある駅で人が降りていき、5駅目ぐらいでやっと座ることができました。その席はその車両の中ではいちばん奥で、すぐ斜め前には隣の車両へ行ける扉のある壁際の席でした。
 
  そこに座ってスマホをいじっていると、ふと私の目の前にグレーのしまのスーツの、50代ぐらいのサラリーマンが立っていました。サラリーマンは私の真上の網棚に荷物を置くと、何故か両手で吊り革を持って、隣の車両へのドアに背中をくっつけて立っていました。このときは「同じ立っているのでも壁にもたれていたほうが楽だからな」とぼんやり思っていました。でも今思うと、なんで空いてきたこの車両で、このポジションを選んでいたのだろうと怪しく感じています。

電車が再び走り出したとき、なんだか様子がおかしくなってきました。電車の揺れより遥かに大袈裟にサラリーマンの体が上下に揺れ、サラリーマンの足と私の足が妙に当たるのです。それも何回も。
  満員状態のときは、遅れを取り戻そうとしてるのか、いつもよりやや速く運転されており、それこそ何度も何度も揺れましたが、このときの速度はかなり落ち着いていました。なのに何故かこのおっさんはやたら揺れて私の方へ体が触れてくるのです。このときの私はキュロットとハイソックスで露出している部分はせいぜい膝小僧くらいでしたが、それでもその膝小僧におっさんのズボン越しに肌が触れてくるとゾゾゾッと不快なしびれを全身に感じました。

  吊り革を持っている腕越しにおっさんの目が見えました。目をつむっているようにも見えますが、薄目をあけてこちらを見ているような気もしました。おっさんと目があったとき私が一瞬感じたのは、小中の頃何度か出会ったいじめっこたちの、ねちっこく人を小馬鹿にしたような、そして「次はどうしてやろうか」とこちらを伺うような、あの視線でした。負けるもんか、と私はその目を反らさずにらみ返しました。

  と、そのとき電車が次の駅に停まり、降りていった人がいたので、私の斜め前の席がひとつ空きました。睨み付けていたのが功を奏したのか、ほんとに単純に疲れていたから休みたかったのか、おっさんは網棚の荷物を残したままその席へ座り、目をつむって寝ているような仕草をしてしました。

   怖い。今は離れているけど決して遠くはない距離だし、しかもおっさんの荷物はまだ私の真上の網棚に置きっぱなし。私はもうしばらく乗らなければならないし、これからこの電車はどんどん乗客が減っていく。もしまた目の前に立たれたり、隣に座られたりしたら……そして、さっきよりもっとひどいボティータッチをされたら……そう考えるととにかく怖くて早く安全な場所へ避難せねば!と思い、先ほどまでおっさんがもたれていたドアに手をかけ、車両を移動しました。
  自意識過剰と言われても被害妄想と言われてもいい。もう私はこの人と同じ空間にいて一分一秒関わりたくない。この場合は「逃げるが勝ち」という格言がいちばんぴったりだと思いました。

  こちらの車両も空いていたのですぐ座ることができ、そこでTwitterで先程の出来事を報告。するとフォロワーさんから「私も似たようなのやられたことある!!」や「逃げて大正解!!」といったリプライをいただきました。
  帰宅後に調べてみたところ、「これはわざと?それとも偶然?」というような痴漢疑惑案件はわりと多いようです。「直接触れなければセーフ」という認識のもと行われている痴漢も、ここ最近増加しているとのことでした。

  自分がそのような疑惑案件に遭遇したことで色々考えて出した結論は次の3つでした。


  ①今されている行為が“痴漢か偶然か”の真実より“自分が今不快かどうか”を大事にする

②とにかく早く逃げる

③痴漢は誰でもターゲットになりうる=自分が特別痴漢されやすい=悪い と思わない。堂々としていていい。


①に関しては、物的証拠や記録もないので、残念ながら立証は難しく、また、真っ向勝負で声をあげて訴えたところで相手も何をしてくるかわかりません。それならもう自分がどう感じたかを大事にし、自意識過剰とか被害妄想とか言われようと「直接的であれ間接的であれ体に触れられて自分が不快なら痴漢」と、暴論かもしれませんが考えてもいいのかなと思いました。これが痴漢以外の出来事でも、たとえ悪気がなくても相手に不快を与えたらそれでアウトて場面、たくさんありますもんね。

そして②はシンプル・イズ・ベスト。“真実か偶然か”を争って戦うのではなく“この不快を少しでも減らすにはどうしたらいいか”。それなら簡単です。逃げる。避難です。もちろん満員電車なら難しいかもしれませんが、必ずどこかにチャンスはあります。隣の人へ助けを求めてもいい。とにかく一刻も早く一ミリでも長くそいつから離れましょう。私のようなガラガラ状態でやられてるならなおさらさっさと逃げるべきです。追いかけられたらもうそれは痴漢どころじゃないから鉄道警察へ飛び込みましょう。

  ③に関しては、やはりこういう事案に遭遇すると「自分に隙があったからなのか」「おしゃれをしてフェミニンな格好だったのが悪いのか」「眼鏡をかけていたからおとなしそうに見えていたからか」など色々考えてしまいました。が、これまでこんなことなかったんだから、こちらがなにか狙われやすいことをしていたから悪いということはないはずと思い直しました。
  よく「露出していると痴漢に遭いやすい」だの「いやいや清楚系のほうが大人しそうに見えて危ない」だの様々な意見を目にしますが、たぶん痴漢にしたら「そこにいる女なら誰でもいい」て感じな気がします。やられるときはジャージだろうとすっぴんだろうとやられるんじゃないかなぁ、なんて思ってます。
  それならもう「また遭遇するんじゃないか」なんてビクビクせずに、堂々と乗っていればいいと思うことにしました。おしゃれだってしたいし眼鏡はかけなきゃ何にも見えないぐらい視力悪いし、なにより電車乗らなきゃ新喜劇にもお買い物にも行けないし。

  
  この記事を書くにあたり、男性と女性で意見が真っ向対立して毎日のようにネットで議論が白熱しており、自分もわざわざその中へ入るような話題を書いていいのかどうか炎上や晒しを恐れましたが、自分の気持ちや考えを整理するため、そして、やっぱり嫌なものは嫌だったので、その気持ちを素直に書きました。

まさじさんのこと

  新喜劇座員の安井まさじさんが、6月26日の特別公演をもって新喜劇を退団、そして今後は故郷である熊本で芸人活動をしていくと発表がありました。

  正直、ものすごく寂しいです。

まさじさんは私が贔屓にしているチーム辻本公演にも頻繁に出演されていました。体を張ったり奇声を発したりする一発ギャグも、ほのぼのとした優しい雰囲気も、明るい笑顔も、気づけば私は好きになっていました。演技や回しもキレがあり、ご自身が座長となって行われた「新喜劇2026」でも熊本弁を使った新キャラで大変盛り上がったと聞いています。間違いなく、10年後の新喜劇を支えることが大きく期待された優秀で人気のある座員さんでした。

  まさじさんが退団してまで故郷で活動することを決めた理由は、まだご本人からの詳しい発言はありませんが、やはり4月の熊本の震災が大きく関わっていると思います。まさじさんのご実家やご家族は無事だったそうですが、これを期に「なにかあったときにすぐ家族のそばにいられるように」と思ったのではないかな、と私は推測しました。実際、311の震災のとき、万一に備えてもっと家族のそばにいられるようにと転職や引っ越しを決断した人もたくさんいました。
  まさじさんの熊本愛も前々から知っていました。熊本弁を活かした新キャラだけでなく、くまモンとのコラボ新喜劇や、熊本での特別公演のときはいつも以上にイキイキしていました。震災が起きたあとも、共演している座員さんに協力を仰ぎ、NGK入口で募金活動を行っていました。   
ふるさとのために、家族のために、自分が今出来ることはなんだろう?それを一ヶ月の間に何度も何度も迷い悩んだ末にまさじさんなりに決めた答えなんだと信じています。


  Twitterでは彼の名前を検索すると、退団を惜しみ悲しむ声がたくさん挙がっていました。私も寂しくて寂しくて、あらゆる卒業ソングがまさじさんのことを歌っているように聞こえてしまうほど……
NGK祇園へ行けばいつだって会える。そんな安心できる距離感があと一ヶ月弱でなくなってしまう。
 
  様々な事情で新喜劇を辞めていかれる座員さんは多いと聞きますが、その大半がいつのまにか出なくなってフェードアウトしてしまうなか、多くの人気・ベテラン座員も出演しなおかつファンに改めて旅立ちの挨拶が出来て、見送ってもらえる場所と時間を作ってもらえたあたりからも、まさじさんがたくさんの人に愛されたことや彼もまた新喜劇を愛し真剣に取り組んでいたことが伺えます。


  希望の光は、地元熊本に帰ったあとはピンの芸人さんとして活動されるということ。吉本はその土地のローカル番組やイベントを中心に活動していく地域密着型の「都道府県住みます芸人」という制度もあるほどなので、熊本及び九州地方でも活躍の場はたくさんあると思います。
新喜劇で学んだことを活かして、傷ついたふるさとで、ひとりでも多くの方の笑顔を取り戻す。それが新しいまさじさんの夢であり使命なのかもしれません。そして、彼ならそれを叶えることは不可能ではないとさえ確信出来ます。

   元々、NGK祇園にも頻繁に行けない関東在住の私ですが、関西よりもっともっと遠い熊本へ渡るまさじさんとこれでお別れとは思っていません。必ず、また、どこかで、まさじさんが笑顔で頑張っている姿を見られると、そして、直に会えると信じています。そのときはまたたくさんたくさん笑わせてもらいます。

 
  きっとまた、あの声が聞ける日が来るはず。


  「キョエェェーー!!」

「茂造の青春時代!」レポ&感想

   GW祇園花月恒例行事。茂造の過去へ戻り、そのルーツを探る、普段の新喜劇とは一味違うガチの人情芝居「茂造」シリーズ。8回目の今回は「茂造の青春時代!」

  茂造役である茂しゃん(てこれは私が勝手に呼んでるんだけど)こと辻本茂雄座長さんが、吉本に入社する前はプロの競輪選手を目指しており、わざわざ越境入学をしてまで自転車競技部の強豪・和歌山北高へ入学、キャプテンとして国体出場をしたほどの優秀な選手であったものの、両足に腫瘍が見つかり断念せざるを得なかったというかなり過酷な半生があったのは有名な話ですが、今年はいよいよこの実話にスポットが当たるようでした。実際、ポスターでは茂造が自転車を漕いでいるのですが、その首から下は実際高校生のときインターハイに出たときの茂しゃんの写真と合成したそうです。がっちりした脚はまさにアスリートそのものでした。


  今年は誕生日に合わせて2日目の27日公演へ、前回のようにセンターとはいきませんでしたが最前列で観賞することができました!



  【以下、ネタバレ注意】





  第一幕はお馴染み新喜劇。
茂造が旅館のアルバイト初日から遅刻し、鞄を蹴り飛ばし、階段からお客を滑り落とす。 その旅館では秘密の恋と地上げ屋による脅しなどトラブルが続出し、それを茂造がおちょくりながらも解決していく、というよくある茂造新喜劇の流れ。
  鍵となるのは茂造に旅館アルバイトを紹介したアキさん演じるアキコさんから度々発せられる今は亡き「シュウジ兄ちゃん」というワード。このシュウジ(アキさん二役)は昔、漁師をしながら、夢を追う若者の為に彼らが集う下宿アパート「山茶花荘」を経営していたのですが、そこに住んでいた若者のひとりが、若き日の茂造でした。


  第二幕はそんな茂造が過ごした山茶花荘での仲間たちとの青春時代の思い出を振り返ります。
  ちなみにこの頃の茂造は短ランにボンタン、リーゼントというわかりやすい昭和のヤンキースタイル。高校生とは思えない貫禄を身に付けていました(笑)


   山茶花荘には競輪選手を目指す茂造と、茂造の妹で歌手志望のナオミ(塩島さん)、ダンサー志望のフミエ(たまよさん)やマサコ(ニャンコさん)をはじめとする女の子たち(恵美ちゃん・景子ちゃん・OSAKA翔GANGSの皆さん)、家政婦でみんなのお母さん的存在のエツコ(島居さん)とその息子のリク(詩くん)、そして少女たちのダンス講師をしているニューハーフのアンナ(伊賀さん)がいっしょに住んでいました。

  伊賀さんのニューハーフ役にはひたすら驚愕でした…!!ニューハーフといえば昨年がまさにショーパブを舞台にしたお話でしたが、彼はボーイの役だったので、まさか今年女装に挑戦するとは!  髪をカツラではなくわざわざ金髪に染めたほどのガチの気合いで挑んでいました。また、ナオミ役の塩月さんは二幕冒頭のオーディションシーンではエンダー♪でお馴染みの「I Will Always Love You」を歌う場面があったのですが、元タカラジェンヌということでその歌唱力は抜群!!力強く遠くまで響く美しい歌声を聞かせてくれました。

物語の途中で、シュウジの友人でアンナの元カレであるゲンタ(要冷蔵さん)と、ゲンタの借金の取り立てに来た金融業者のサカガミ(森田さん)が現れます。ひょんなことからアンナとヨリを戻したゲンタと、エツコの凛々しい美しさに惚れたサカガミも、シュウジの元で漁師業をしながら山茶花荘で暮らすことになりました。
 

  賑やかでアットホームな山茶花荘での暮らしですが、夢を追う道のりは険しく、何度もオーディションに落選したり、心無い言葉をかけられたり、ナオミに至っては焦るあまりインチキディレクターに騙されて大金を奪われそうになるほど。仲間が落ち込み、夢を諦めようとするたびに、茂造は力強く励ますのでした。  そして茂造も、仲間たちに支えられながら、新聞配達やシュウジの漁師の手伝いをし、競輪の練習に日夜励んでいました。両親を事故で亡くした茂造にとって、競輪選手になって賞金を稼ぐということは、ナオミの夢のサポートや山茶花荘の仲間への励みになるという意味でも、重要なものでした。


  そんな茂造には、ミキという小学生のときからの幼なじみがいました。茂造はミキに想いを寄せており、ミキもまた茂造のことが好きでした。山茶花荘のメンバーにサポートされ、茂造が告白し、恋人同士になったふたり。やがてミキのお腹には、茂造とミキの愛の結晶が……
ミキの父親(あいはらたかしさん)は大激怒・大反対しますが、「競輪選手になって必ずミキを幸せにする」という約束をし、さらに10代でリクを生んだエツコの後押しもあり、とにかくこれからの茂造の態度と行動次第ということに落ち着きました。
ちなみにミキ役の村崎真彩さんは茂しゃんも出ていた「あさが来た」で加野銀行の女子行員・ツル役もしていました!支配人と行員がここでは同級生で恋人同士ってなんだか不思議(笑)

  そんな夏のある日、山茶花荘に大事件が。
エツコの元旦那でリクの父親である男性(入木さん)が山茶花荘へやって来ます。一見物腰柔らかそうですが、実はエツコやリクに暴力をふるっていたDV男。支配されていた記憶が甦り、過呼吸になるエツコ。シュウジをはじめ山茶花荘のメンバーは追い返そうとします。するとDV旦那がぶちギレ、灯油をぶちまけて火をつけようとしたり、鉄パイプを振り回してきます。愛するエツコを守るためサカガミは、元ヤクザでありながら、あえて暴力を使わずにシュウジとともに追い出そうと体を張ります。

その混乱の最中、なんとDV旦那が振り回した鉄パイプが茂造の脚を直撃!!競輪選手の命ともいえる脚に大ダメージを与えられ、その痛みに座り込む茂造。「俺の脚が……!!」
という絶叫と共に舞台が暗くなり、場面は一気に緊迫します。


  ナオミと共に病院へ向かった茂造。検査の結果、幸いにも鉄パイプによるダメージは打撲だけで済み、やがて治るとのこと。しかし、念のため撮ったレントゲンで、衝撃の事実が判明。医師(井路端さん)によりそれが告げられます。

  茂造の両脚にはまだ小さいながらも腫瘍があり、この腫瘍を今のうちに取り除かなければ後々大きな障害となること。腰骨を脚の骨へ移植する大手術が必要なこと。その後、一年先を見越したリハビリが必要なこと。そして、なにより残酷な事実が。

  「日常生活なら問題なく送れますが、手術をした脚はかなり弱まりますし、再発の可能性も充分ある。従って、重い競技用自転車のペダルを漕いでスピードを競うような競輪は………もう、できません」


競輪__茂造にとっては、幼い頃からの大きな夢。青春のすべて。生きる希望。人生の意味そのもの。それが、不可抗力により、出来なくなった。医師にしがみつき、なんとか治してくれと懇願する茂造。首を横に振り続ける医師。ただそれを見守ることしかできないナオミ。やがてがっくりとうなだれ、呆然と立ち尽くす茂造にスポットライトがあたり、その絶望に満ちた表情と重い光を放つ瞳がより明確に映し出されていきました。


季節は夏から冬へ移り変わっていきます。手術を終え、歩けるようになった茂造ですが、競輪が出来なくなったことですっかり堕落し、リハビリや新聞配達をサボって暴走族の仲間に入ってバイクを乗り回すように。茂造とナオミの両親は暴走族のバイクが原因で事故に遭って亡くなったのに同じようなことをするなんて、と怒りに震えるナオミ。その様子を見ていたミキの父も大激怒し、お腹の大きなミキを連れて帰ってしまいました。

  「俺はこれからどうしたらいいんや!?今の俺にはなんにもない……答えを教えてくれよ!!誰か、答えを教えてくれよ!!!」と嘆く茂造。どう声をかけていいかわからない周囲。そのとき、シュウジが静かに語ります。

「俺もダンサーを目指して挫折した過去があるから、気持ちはわかる。でもな、現実を受け入れなきゃいけないんだ。答えは自分で探さなきゃならないんだ。サザンカ花言葉の“困難に打ち勝つ”のように、この山茶花荘にいるお前やみんなにはどんな困難があっても負けずに乗り越えてほしいんだ」
 
ナオミが茂造との思い出の曲「翼をください」を口ずさむと、やがて周りも触発され、全員で茂造へ向かって歌います。それでもなお前を向けずにいる茂造がひとりで佇んでいると、今度はミキがやってきて、茂造の思い出を語ります。

  子供の頃、近所のスポーツサイクルを持っている友達よりも、お母さんのお下がりのママチャリで誰よりも早く走った茂造。そのママチャリで淡路島を一周したこともあるぐらい、自転車が大好きだった茂造。中野浩一さんの三連覇をテレビで見て、それに憧れて本格的に競輪選手を目指した茂造………そして自分が、そんな茂造が大好きであること。ずっと応援しているということ。お腹のなかの赤ちゃんも、そんなお父さんの茂造を応援しているということ……

  シュウジや山茶花荘のメンバー、そしてミキの力強くあたたかい言葉により、そして、まだ見ぬ赤ちゃんの存在の大きさにより、茂造は少しずつですが前を向き、リハビリにも積極的に取り組むようになりました。  やがて赤ちゃんも無事に生まれ、茂造は病院の待合室で一人静かに語り始めます。

  「俺は競輪が出来なくなって、もう俺にはなにもない、人生もこれで終わりだって思った。死んだほうがましだとも本気で思った。でもそれは違ったんだ。現実をどんなに辛くても受け入れて、前を向いて生きていれば、夢は何回だって見つけられるし、何度だって追いかけられる!!」


  月日が流れ、ナオミとダンサー志望の女の子たちは、チームを組んで「翼をください」を歌とダンスで華麗に表現し、見事オーディションで優勝。そして茂造は………

「どうもー辻本でーす」
「サカガミでーす」
「二人合わせて三角公園USAでーす」

そこにいたのは、お揃いの「USA」と書いてあるTシャツを着て、漫才コンビとして活動する茂造とサカガミ。このときになって私はやっとやっと思い出したのです。茂しゃんが新喜劇入団前に組んでいた漫才コンビ「三角公園USA」の相方さんのお名前が「阪上」さんだったことに……!!!

  新しい夢に向かって頑張る茂造の未来を予感させ、本編は終了。

  見ていて個人的に辛かったのは、やはり競輪選手への夢を断念し、自暴自棄になっていた茂造の姿でした。「競輪をあきらめて吉本入るまでは2年ぐらいブラブラしてたし、酒やタバコも(もちろん20歳になってから)手を出した」とは茂しゃん本人が語っていましたが、その二年の間あんな風に「何が正解なのか・何が間違いなのか・死んだほうがましだったんじゃないか」の自問自答をずっと繰り返していたんだろうな、とあの場面で実感しました。親御さんや学校の期待もすごかっただろうし、普通の高校生が送るであろう遊びや恋などの楽しみをほぼすべて犠牲にしてまで競輪に打ち込んだと聞いていますので。

 
「夢を諦めないで」と言われると「努力したって叶わない夢もあるし、その努力すら出来なくなることだってあるじゃないか。そんな簡単に言わないでよ」と反論する声があがります。
しかしその言葉の本当の意味は「どんなに辛くても現実を受け入れて、もがきながら迷いながら悩みながらも前を向いて、少しでも進めるように努力をしていけばいい。そんな自分を必ず支えて見守ってくれる人がいる。そして生きている限り夢は何度も生まれ変わって追い続けられる」ということなのかな、とこのお芝居を見ていて思いました。特に今回は何度も聞いていた茂しゃんの実際のエピソードが盛り込まれていたので、妙にリアリティーがありました。


  このお話の茂造、ひいては、演じている辻本茂雄さん自身が「前を向いて生きていく限り夢を追い続けられる時間=青春時代は終わらない」と、人生をもって証明し、そしてこれからも挑戦を続け、より確かな証明にしようとしているんだなと思いました。


  今回はさらに二幕に出た伊賀さん・アキさん・森田さんの大きな成長ぶりが著しかったです。このお三方は自身が主催の新幹線・エンタメ・きょうと新喜劇を見事完売させ大成功を納めており、その自信と経験が間違いなく実力へ繋がっているんだなと思えるような、去年からグッと広まった演技の表現と新しい魅力を見せてくれました。
  特に森田さんは、茂しゃんと満席完売を約束しており、ご自身はもちろんファンの方たちも応援動画を作ったりしてその目標達成に一致団結しているのを影ながら見守っていたので、今回のこの役はそのご褒美なのかなとも思いました。なんせ、茂しゃんが見つけた新しい夢の一歩をいっしょに踏み出した方の名前を受け継いだ重要すぎる役でしたので。頼りなさげだけどどこか憎めなくてまっすぐなあのサカガミは、森田さんだからこそ演じられたと思っています。


  そして一幕では、平山さんも出ておられました。雑誌のスクープの件で色々と噂されましたが、元気に頑張っている姿を見てホッと安心しました。真相はわからないし、ご家族とも色々話し合いをしているかと心配な部分はまだまだありますが、私がこれまで見てきた平山さんの頑張りと、これから頑張る平山さんの強さをちゃんと見て自分自身で判断していこうと思いました。

  ホテルに帰ってからも興奮がおさまらず、同じホテルに泊まる友人に部屋に来てもらい、二人でかなりアツく語りました(笑)それぐらい熱い情熱をくれる舞台でした。


  今年もたくさんの感動と希望を思い出に持って帰れました!また来年も、絶対に行きます!茂しゃんが挑戦を続ける限り、私もついていきます!!