nakumelo’s blog

関ジャニ∞のこと・新喜劇のこと・その他諸々、長い文章で語りたいときはこちらを利用しています。 Twitterアカウント→@EtoileMelimelo

佐藤太一郎企画その20 「グッド・コマーシャル」レポ④


 
  サンタクロース・妖精・天使・神様・小説・アニメ・ドラマ・そして芝居……この世の中には実は「嘘」が満ち溢れていて、でもなかには世知辛い世の中で前へ進むための「夢」とか「生きがい」をくれる嘘だってある。嘘がすべて罪ではない。

  ある番組で占い師の方が「占いの結果に反して嘘を伝えたことがある」と話していたことがありました。
 
見るからに弱々しくいつ倒れてもおかしくないような状態で、家族に付き添われてやってきたその依頼者は、病院で余命あとわずかと診断され、やはり占いでももう幾ばくもない命と結果が出ていました。
 
それでも占い師さんが勇気を振り絞って「あなたはまだまだ10年くらい長生きできる!」と嘘の結果を伝えました。

数年後にやって来たご家族の方は「あのときの言葉が希望になり、7年も長生きしてくれた。だから旅行へ行ったり治療にも前向きになったりとたくさん思い出が作れた。占い師さんが嘘の結果を言ってくれたのはもちろんわかっていた。医者からもすでに宣告されていたから。でもそう言ってほしかった。だからここへ連れてきた。あなたは私たちに希望をくれた」と涙を流しながら感謝の言葉を述べたそうです。
 
今回の芝居を見終わった直後に思い出したのは、そんなエピソードでした。

  たった三人とは思えないテンポの良さと濃さ!!一言一句、小道具ひとつにまで張り巡らされた伏線!!(これらをすべて書ききることはさすがに不可能でしたが…)
  常に笑いと驚きが隠されていて、見ていて飽きませんでした!!このお話の原作を書いた西野氏は変人ですが天才です。そんでもってそれを舞台でここまで表現できる太一郎さん・野村さん・木崎さんもすごい!!

  今回の公演は、チケット販売直後こそ好調で、あっという間に約400席のうち4分の3程の席のチケットが売れたのですが、1週間後に200枚以上の大量キャンセルが出て、結局また半数以上の席が売れ残る事態に……恐らく転売目的の輩が大量発注→大量キャンセルを行ったものと思われるそうです。それでも太一郎さんはめげずに今回も手売りを頑張り、見事完売を成し遂げたのでした。

  今回のルミネ公演が成功したので、今後の佐藤太一郎企画は年一ペースで東京公演を組み込んでいくこと・さらに今回のキャストによる「グッド・コマーシャル」が大変好評であるため大阪再演が決定!!見事危機を乗り越え未来へ繋げることができました!!

  閉場後はロビーにいる太一郎さんと写真撮影&少しお喋り。関東で公演をやってくれて本当に嬉しかったことを伝えました。

  そして帰りの電車のなかでネットニュースを見ると、今回の大量キャンセルにも荷担していたであろう、前から問題になっていた某チケット転売支援サイトが正式に業務停止命令を喰らったことが報じられていました。なんという絶妙なタイミング。
  転売を憎み、闘った太一郎さんたちの熱量が生んだ奇跡かもな、と思いながら、電車に揺られて帰りました。





 


 






 





 

 

佐藤太一郎企画その20 「グッド・コマーシャル」レポ③

   思いがけない同中出身者同士の再会ですが、大人になった今はそれぞれ強盗・人質(&共犯者)・交渉人という役割がはっきりと分かれている三人。芥川と木下は、相変わらず権力と女子にめっぽう弱いホクロマンこと久保をなんとか味方にしようと、「外にいる奴等にお前が中学のとき隠し撮りしてたことバラしちゃうぞ!!」と脅しをかけつつ、交渉を始めることに。

   久保がなんとしてでも犯人確保のための交渉をしたいのは、ズバリ「出世」と「恋愛成就」のため。それならばと木下はこんなストーリーを提案をします。

  犯人は久保の交渉により、涙を流して反省・改心する→その様子を彼女に見てもらう→ついでに上司である警察には「誰も傷つけていないし反省しているから、彼の未来のために逃がした」とでも言っておく→万事解決!!度量の大きさを彼女にも上層部にも見せつけられる!!

  そんなうまくいくかな…的なストーリーですが、久保はノリノリ。早速彼女に送るための「犯人が泣きながら久保の交渉を聞いている」という写真を偽装し、それと共に「中継を見て!」というメールを送ることに。
 
  と、ここで問題発生。スマホとLINEがすっかり主流になった昨今ですが、久保が愛用しているのはいわゆるガラケー。そしてこれまた懐かしいゆるキャラまりもっこり」のストラップ付き。これで写メールを送ろうとするのですが、この部屋の立地からはその機種だと電波がかなり弱いため、メール送信が出来ない!!
   そこで苦肉の策で、窓から手を伸ばして出来るだけ電波の強い瞬間を捕らえて送るというかなりの荒業を行うことに。久保は小柄なので、芥川が替わりに窓へ手を伸ばすことに。窓の狭さやら電波の悪さ、さらには腕への負担などでしっちゃかめっちゃかになりながらも、すべての苦労が報われるゴールへの一歩して、なんとかメールを送ろうともがく芥川と久保。


  そんな先輩二人を見て、木下の胸の中に何か熱いものが込み上げてきます。一度は諦めた夢が、もうすぐそばまで来ているような……今ならば心から「アクション!」の呪文が言えるような……何か新しい景色が見えるような……そんな予感でした。

   そんなこんなで、やっとメール送信を完了させた芥川と久保。安心しきって三人でビールを飲んで祝杯を挙げます。そのとき外から鳴り響く巨大なヘリコプター音。なんとそれは芥川の実家の近所の米軍基地からやって来たものだったのです!!

  たかだか立て籠りでなぜ米軍まで出てくるの!?と大パニックの三人がテレビを点けると、衝撃の事実が。
   なんとメールを送るために外へ出していた久保のガラケーの「まりもっこり」を目撃した警察が、とある世界的テロ組織のシンボルマスコットにそっくりだということで、この人質立て籠り事件にはテロも絡んでいる!!というぶっ飛び解釈でそ米軍に協力を要請したのでした。
  さらに報道特別番組のスタジオにはコメンテーターとして芥川がゴーストライターを担当した小説家が文化人枠で出演しており、これまで中継された犯人(つまり芥川)の声を「どこかで聞いたことある気がする」とまで言い出す始末。いよいよこの部屋に警察が踏み込み、芥川の正体とそこに荷担した二人の企みもバレてしまうのも時間の問題!!今度こそ絶体絶命大ピンチ!!

  絶望感から呆然とする三人。一旦コマーシャルに入る番組。ボーッと画面を見つめる久保。そこに入ってくる一本のコマーシャル。

  「ショートムービーフェスティバルの締め切りは今日まで!!ぜひあなたの想いを映画にぶつけてみませんか?ご応募お待ちしてまーす!!」


  その一本の、数秒のコマーシャルで、何かを思い付いた久保。泣きじゃくる芥川と木下に、彼は語りかけます。

  「世界一の嘘を知っているか?『嘘をついてはいけません』と教えてきた私たちの親が、私たちについた最大の嘘。サンタクロースだ。サンタクロースは実際にはいない。でも、親がサンタクロースの嘘をついてくれたから、私たちにとってクリスマスは楽しみな日になった。いい子でいるきっかけになった。その嘘を罪だとは、私は思わない。夢を見せて、未来を作る嘘だって、この世界には確かにあるんだ」

  わけがわからない、という顔できょとんとする二人に、久保が語る起死回生のアイデア。それは先ほどのコマーシャルにあった「ショートムービーフェスティバル」に絡めたもの。
 
  ビールを飲みまくり、木下や久保の私物である眼鏡やコンタクトがあること、そしてこれまで外の警察とのやり取りが支離滅裂だったことを利用し、「これまでの騒ぎはすべてショートムービーフェスティバルへ応募する映画の撮影。その撮影を見て警察が事件と勘違いした。しかし我々は酔っぱらったうえに視力も悪い状態で撮影をしていたため、こんな騒ぎになっているとは思わなかった」というストーリーをでっち上げよう、という計画です。あまりにも荒唐無稽なストーリー。それでも、誰も傷つけず誰も法に触れずに逃げきるためには、これが今の自分に思い付く精一杯の嘘だと久保は言うのです。
 
  そんなんできるわけないやろ、とふてくされる芥川。しかし木下は、この数時間の間にこの二人の先輩と起こしてきた嘘と言う名の奇跡があるから、「アクション!」の呪文をしっかりと言える予感がするから、この一発逆転の大勝負に乗ると決意。やがて芥川も覚悟を決め、ここまで来たら最後までやりきると決めます。

  とはいえやることは山積み。「フィルムフェスティバルに向けて映画撮影をしていた」という嘘を完璧に突き通すため、映画撮影をしていた形跡を作り出す必要がありました。映像やら脚本やらを用意しなくてはなりません。しかしそこで、この三人がこの場所に集まったからこそ実現できた奇跡が次々と起こります!!

  カメラとか専門機材ないよ!?
→なんとこの部屋の押し入れにカメラ他撮影機材がギッシリ!!
「ADは家を倉庫替わりに使われてるんで、こんなんもあるんですー!」

  でもこのカメラでどうやって撮影すんの!?
→盗撮すらやってのけた久保がいるじゃないか!!当然カメラの知識も豊富!!
「撮っておくれと、泣いてるぜ!!」

  脚本とかないと怪しまれない!?
→部屋にあったパソコンでリズムよくキーボードを叩き、これまた小気味良いワードを並べてそれっぽいプロットをガンガン仕上げていく芥川!!きちんと「人質」というワードも入れこみ、一連の騒ぎが撮影の一部だと思わせるようなストーリーを作成!!
「こんなんいかがでしょーかっ!!(ッッターーン!!)」

 
  誰がこの映画を撮るんだ!?現場を指揮して演出出来るような奴なんか……
→メガホンを持った映画監督志望の木下が豹変!!オネェ口調でキビキビと二人に指示を出していきます!!
「どうせやるなら大賞狙うわよ!!」
 

   夕日の光が窓から差し込む部屋で、木下監督演出のもと、芥川製作のストーリーを彼自身で演じて、久保がカメラで撮影するということに決定!!

 
「いいかいあんたたち!!ハッピーエンドは、汗で買いな!!泥臭くいくわよ!!」

  「オウッ!!」

「よーーい、アクションッッ!」


  ストーリーも役者もカメラも動いてひとつの「嘘」という名の「物語」が始まる呪文をついに木下が声に出すことが出来たところで、一瞬まばゆくライトが光り、次の瞬間暗転し、舞台は終幕。

  最後にあと少しだけ、色々語ろうと思います。




 


 






 





 


 

佐藤太一郎企画その20 「グッド・コマーシャル」レポ②

   レポ①はこちら→http://nakumelo.hatenablog.com/entry/2017/12/17/132634


  もうこの部屋にそう長く立て籠れないし立て籠る必要もないと確信したゴーストライター強盗はど天然人質の木下にも脱出の協力を要請。
  
先程警察に身代金と共に要求した「逃走用のバイク」は実はカモフラージュ。真の脱出ルートはこの木下の自宅の庭にあるのです。
   木下の自宅の庭は手入れをだいぶ怠っているため草木が生い茂り、外からは様子がかなり見えにくくなっていること・そして今でこそ使われていないものの、下水道へと繋がるマンホールがあることが、小説家がこの家を犯行現場に選んだ理由でした。そのために本来なら水道局員しか持てない下水道マップまでどうにかして入手したほど。
  その発想と行動力に感心する木下。そして何の気なしに笑顔でこう言います。
 
   「あのマンホール、僕の両親が中の穴は塞いで、マンホールそのものはレトロで趣きあるんで取っておいてあるんですよねぇ~」


  この木下くんは肝心なことをすぐ言わない悪い癖があるようで。おかげで小説家さん、発狂しながらせっかく手に入れた下水道マップをビリビリに破いて泣き出してしまいました。オロオロしながらも、自分に生きる希望を取り戻してくれたこの小説家のために、木下はあるアイデアを思い付きました。

  警察は、「この家の住人」が人質に取られていることは知っていますが、その人質の正確な人数までは恐らく把握していないのではないか、つまり、人質が木下ひとりだけではない可能性だって生み出すことが出来る。そのため、小説家も「人質のうちのひとり」のふりをして警察に保護されればいい!!というのです。小説家はそのアイデアを採用することに決定!

  どうにか脱出できそうな案にひと安心したのか、気をよくした小説家と木下は部屋にあるビールで乾杯!!ここではじめてこの小説家が「芥川」といういかにも文学に携わっていそうな名前だと判明。この芥川、実は木下と同じ市内の、米軍基地のすぐ近くに住んでいる者で、しかも同じ市内=同じ中学の卒業生ということもわかってきます。
 
  同中ということで一気にテンションが上がり、母校のマニアックな思い出クイズに突入。そのクイズのなかで、芥川の同級生で木下にとっては卓球部の先輩でもあった「久保」という生徒のことが話題に上がります。
  ざっとその久保の特徴を挙げると

  ・いつも先生のご機嫌とりをしているスネ夫的ポジション
  ・埼玉から来たのに東京出身と偽り「~じゃねーし」というワードを多用
  ・カメラに詳しく撮影時には「撮っておくれと泣いてるぜ!!」という台詞を言う
  ・そのカメラ技術を生かし、女子水泳部の隠し撮りをした
  ・顔にやたらでっかいほくろがあり、それはピノキオの鼻の如く嘘をつくたびに大きくなるという噂
・そのためあだ名はホクロマン

  かなり強いクセを持つ久保の悪口でゲラゲラ笑っていると、ずっと外で待機している警察が、あまりにも動きを見せない強盗にイラつき、ついにネゴシエーターを投入することに決定!!今から部屋に向かわせると宣言されます。
  こうしちゃいられない!!と一先ず服を着替えることから始めようとする二人。木下は自分の着ていたジャージを脱いでパンツ一丁になると、それを芥川に着せようとします。
  次に芥川の目元を隠そうとしますが慌てていたせいで、芥川がテーブルへ置いていたサングラスが破損。ないよりましだろうと木下が部屋から見つけた目だけを隠せる仮面を差し出します。そしてそれとワンセットだというやたらぶっとい赤いローソクも用意されます。ADをやっているだけあって色んな道具がこの部屋には物置き替わりで置いてあるのでした。
   やがて近づいてくる足音。ネゴシエーターが部屋にやって来ます。とりあえず電気を消して木下はあの自殺用ロープに手をかけ、その傍にあの仮面をつけて立つ芥川。そして開くドア。走る緊張。

  
  やって来た交渉人(祗園・木崎さん)はグレーのスーツに身を包み、木下や芥川と比べるとわりと小柄で眼鏡をかけ、なかなかの美男子なのですが、その顔が正面を向くと、なんとでっかい黒子が!!そう、この交渉人こそ、大人になった久保だったのです!!

  久保はパンイチで紐に括られていてる木下、そしてその傍にいる仮面をつけた芥川、さらには床に放置されたぶっといロウソクを見て、完全に「マニアックなプレイの真っ最中」と勘違いしている模様。しかし二人はそのでっかい黒子と「じゃねーし」という口調ですぐこの男がさっきまで話題に上がっていた久保だということを確信。同級生と後輩だということを告げ、さらに同中のよしみと「もう人質に取る必要も身代金もいらないからとにかくどうにかして逃がしてくんない?」と交渉を試みますが……

「それはできないな!!このミッションを成功させれば出世が約束されてるし、いい感じになってる彼女にもプロポーズするつもりだ!!だからなんとしてでもこの事件を解決する必要がある!!」


果たしてこの久保を味方にすることは出来るのか!?年をまたいでレポは続きます!!








 

 

 


 


 

佐藤太一郎企画その20 「グッド・コマーシャル」レポ①

   今年3回目の佐藤太一郎企画は、なんとルミネでの東京公演!!ずっとアンケートに「関東でもやってください」と頼んできてよかった!!
  演目は企画のなかでも屈指の名作と言われている「グッド・コマーシャル」!!なにかと世間をお騒がせのキングコング西野亮廣氏作の小説が原案のお芝居だそうです。

   舞台の上には既にセットが出来上がっており、そこはかなり年季の入った和室。上手には小さな窓付き。畳の上にはいくつか段ボールが置かれており、壁には「アメリ」や「ロボコップ」といった名作映画のポスターとともに、なんとも意味深な言葉の掛け軸が……
 
  【縛られてからが勝負】
   【叩かれても笑い続けろ】
    【その痛みを体に刻み込め!】

   ……部屋主はドMなのかな?と一抹の不安を感じながら、部屋入り口である下手の上を見つめると、なんと輪の形に結ばれたロープが天井からぶら下がってる!!あの形は、そう、あの行為をするための……


  開演と共に舞台は暗くなり、そのロープだけがぼんやりした光に吊るされると、そこにやって来たのは太一郎さん演じる、この部屋主の木下。とあるテレビ番組製作の下請け会社でADとして激務をこなしている青年。
  木下は思い詰めた顔で椅子の上に立ち上がり、例のあのロープの輪に自身の首をかけようとします。が、直前で「これ絶対苦しいもん!!」と諦め、それならナイフで…と腕に刺そうとしますが、やはり「絶対痛いもん!!」と断念。でももう生き地獄にはいたくない。悩む木下。

   そのとき、突然部屋に入ってくるニット帽とサングラスの男(プリマ旦那・野村さん)。彼の手には……ピストル!!
  驚く木下に、大人しくするよう促すと、グラサン男は窓を開け、外に向かって叫びます。

  「おいよく聞け!!俺はここの住人を人質に取った!!このピストルがあれば一発でこいつはあっという間にあの世行きや!!」

  なんとグラサン男の正体は強盗!!木下は人質になってしまったのです!!……が、あるワードを聞いて目を輝かせる木下。さらに窓の外に向かって叫ぶ強盗。

  「身代金一千万と逃走用のバイク用意せぇ!!でないとこいつを殺す!!」

  「おねがいしまっす!!」

  「!?  Σ(゚ヽ゚)」


  人質からの思いがけない反応に慌てて窓を閉め、振り返り木下を見つめる強盗。木下の目には怯えや恐怖はなく、キラキラと希望に満ちており、強盗の手にあるピストルを見つめます。

  「……そのピストルで撃ってくれたら、僕は、苦しまずあっという間に死ねるんですよね?よかった、これでやっと死ねる……さぁ!!一発ぶち抜いちゃってください!!」

   人質の斜め上過ぎるリクエストに強盗は大混乱。部屋を見回すと、あの輪っか状に括られたロープ、そして果物を剥くためではない目的で置かれたナイフを発見。さらにテーブルには一枚の紙があり、そこにはこんな文面が……

  【先立つ不幸をお許しください】


  やっとこの人質がよりによって自殺志願者だと理解する強盗。どうやら殺すつもりなど最初からなかったようで、いくらなんでもそりゃだめだと木下を説得しますが、木下は聞き入れず「お願いだから殺してください!!」と懇願するばかり。
  仕方なく強盗は取引を持ちかけます。「お前を楽に死なせてやるために、お前も俺の言うことを聞いてくれないか?」と。承諾する木下。

  一先ずは外にいる警官に①強盗に人質に取られた②人質は身代金一千万と逃走用のバイクを要求している③要求に答えないと人質である自分は殺される、ということを伝えてくれと指示する強盗。張り切る木下。①と②は無事に言えたものの、③の最後で「僕は殺してもらえません!」と余計なワードを言ってしまったがために台無しに。ぶちギレる強盗。しょげる木下。 

   そもそもなんでお前そんなに死にたいわけ?と強盗は聞き出します。
部屋に飾られた名画のポスターからもわかるように、映画が大好きな木下は、映画監督を夢見ていました。監督となって、その一言で役者もスタッフも一斉に動き出して物語が始まる「アクション!!」という魔法の呪文を唱えてみたかった、と言うのです。
   そしてそのための勉強として映像製作に携わる会社に入ったのですが、実際にはTV局からの孫請けのような形の仕事ばかりで、特に下っ端の木下は長年ADとして毎日毎日、本人曰く「馬車馬のように」働かされていたのです。昼夜を問わない激務による疲れと、いつまでたっても夢に近づくことのできない絶望感から、ついには自殺願望が芽生えてしまったのでした。
  

  そんな木下は今度は強盗に、なぜこんな大がかりな事件を起こしたのかと聞きます。強盗は元々は普通の生活を送っていた一般人でしたが、元々文章を書くのが好きだったので、ふとした思い付きから小説を執筆。出版社へ応募したところ、編集部から連絡が来て、本を出版することに。   
  しかしそれは本人名義ではなく、有名なある作家の名前を借りて。つまりゴーストライター契約を持ちかけられたのでした。
  その作家と作品名を聞き驚く木下。なんとその作品は増刷を重ね何万部も飛ぶように売れ、実写映画化も決定している今話題の大ヒット作なのです。よく見るとセットの本棚にその本が並べられているのを後から発見し、細かいところまで良くできているなぁと感心しました。
   しかし契約時に交わした取り決めにより、本来執筆した強盗が貰える印税は「初版の」売上の数%。なのでどんなに増刷しても映画化となっても印税も手柄も有名作家のもの。そうとは思わず大金が入り込むと思い込んで浮かれてギャンブルに明け暮れ、気づけば一千万円という多額の借金を抱え、ここまできたら死ぬ気でやってやろうとこの計画を立て実行したのでした。

   木下もその作品は読み終えており、特にラストシーンの「長い旅から帰ってきた主人公に母親がいつもと変わらず夕飯を振る舞ってくれる」ところがたまらなく好きだと本当の作者である強盗に興奮ぎみに感想を述べます。しかし作者曰く「あの作家が勝手にカットしやがったけど、本当はもう少し長いラストシーンだった」とのこと。
  
  その夕食を終えたあと、主人公は母親が自分がいない間も毎日一人分多く、つまり家出をした自分の分も夕飯を作ってくれていたことを知ります。それを受けて母親に「もう自分は大人なんだから自分の食事くらいなんとか出来る。無理して一人分多く作る必要ないよ」と話しますが、母親は笑ってこう答えます。
    
「お母さんが作っていたのは“一人分多く”じゃなくて、“家族全員分”なの。だから必要ないことないのよ」

そこに強盗作者は「この世に必要のない人間などいない。必ずなにかを成し遂げ果たすためにこの世に生まれ存在している」というメッセージを込めたのでした。

  気づくと木下は俯き、体を震わせていました。そして顔をあげると、その大きな瞳からは滝のような涙が!!(ほんとに太一郎さん涙流してるのがよく見えた)  大好きな作品の本当の作者からのメッセージに心を打たれ、死ぬことをやめしっかり夢に向き合って生きる!!きっといつか「アクション!!」と叫んでみせる!!と決心します。それを聞いて安心する小説家強盗。いい作品書いて良かったね!


  生きる希望を取り戻してくれたお礼に木下が強盗小説家に渡したのは一枚の紙。仕事で大量買いした宝くじがあり、そのなかに当選した枚数はいくつあるか数えておけと命じられたようなのです。
  そのなかに一枚、見事当選したものがあり、その金額は……

 
  「さすがに一等ではないんですが、一千万円はあるはずです!これよかったら受け取ってください!!」

   ……なんで早く出さないの、
それ!!! (゚皿゚)


  いよいよ人質をとってまで強盗した理由がなくなったゴーストライター小説家の顔は真っ青!!表には待機する警官や野次馬が大勢おり、さらにはテレビ中継まで始まってしまいました。
  さらに警察は、いつまでたっても動きを見せない犯人に業を煮やし、ある人物にすべてを託すことを計画していました。


  この密室から、果たして強盗小説家は脱出できるのでしょうか!?続きます!!
 


 

 

7・8・9月観劇レポ


お久しぶりです!今回は夏から秋にかけての観劇レポをダイジェストでお送りいたします。

【7月→FILL-IN~娘のバンドに親が出る~】

   新喜劇が誇るスーパー座長の内場さんが外部舞台の主演に!しかも東京でやる!!そんでもってドラムまで演奏しちゃう!!  そんな気になることだらけのこの舞台に普段はチーム辻本推しの私も行ってみることに!というのもゴールデンウィークに行われた東京グランド花月に内場さん推しの友人に誘われ、古きよき伝統を重んじる正統派のチーム内場公演にすっかり魅了されていたのでした(笑)
 
  勘当した娘が突然の事故死、しかし涙も悲しみも湧かない仕事人間の幸吉が、ひょんなことから娘のルーツを探る旅に。そこで娘が仲間とバンドを組み、ドラマーとして活動していたことを知る。さらにさらに、そのバンド仲間の一人から焚き付けられ、自分が娘の代わりにドラマーとしてバンドへ加入することに!!

   仕事以外は無気力&無関心なダメダメ親父なのに、どこか憎めないのはやはり内場さんが持つ「程よく力の抜けたオーラ」がそうさせるのか、気づけば幸吉の不器用ながらも懸命にドラムを学ぶ姿に目が離せなくなっていきます。
  仕事一筋の幸吉にとって、「人生の『主食』である仕事以外のすべての物事は無用で無意味なもの」とまで極端な考えだったのですが、このバンド加入をきっかけに「音楽は人生における、楽しみや出会いを増やしてくれるような『おかず』のようなもの」ということを学んでいきます。
  この「おかず」という表現が大変面白いもので、実はドラムの演奏方法のひとつの通称でもあるのです。さらにこの「おかず」という演奏方法の別名がなんと「フィルイン」!!さらにさらに「FILL-IN」は訳すると元々は「埋め合わせる」という意味!!つまり「FILL-IN」とは「ドラムを通して娘との空白時間とバンドのドラムパートを埋め合わせて、さらには人生のおかず的要素を学ぶ」という意味がこのタイトルに込められているのですから原作者の後藤大王の発想力には脱帽です。

  バンド演奏をする大舞台で力強く、そして流れるようなリズムでドラムを叩き、そのドラムセットを通して仲間と見る景色に、「こんな楽しい世界を知った自分の娘は幸せな人生だったんだ!!」と同じ景色を見られたことで心からの幸福を感じる幸吉。それに合わせるように一体になる会場。
  しかし、演奏が終わったあとに待っていたのは「同じ景色は見られても、もう娘と自分がこの同じ瞬間を生きることは出来ない。なぜなら娘は死んだから」というとっくに訪れていたはずなのに忘れていた残酷な現実。幸吉は妻に抱き抱えられ、バンドメンバーに見守られながら、今は亡き娘の名前を呼び続け、子供のように泣きじゃくったのでした。
  
  程よい力加減で、しかし目線や表情にまでひとつひとつ丁寧に神経を行き届かせて表現する演技はさすがスーパー座長。3ヶ月ほどでドラム演奏を習得する集中力の高さも、本番前日リハが当たり前の新喜劇で鍛えたものかと思われます。

  そんな内場さん、この記事を書いている10月現在、朝ドラ「わろてんか」の出演が決まっています。今年は新喜劇の舞台を飛び出し、映画やドラマや外部舞台など演技のお仕事が増えた内場さん。活躍の幅が増えるのは嬉しいことです。とはいえ、落ち着いたらまた新喜劇の本公演にも戻ってきてね!まだまだ新喜劇には内場さんの存在が必要なのです!!


  【8月→きょうと新喜劇】

  森にぃが定期的に開催しているこの公演、ずっと気になっていたのですが第六回目にしてついに初参戦!!
 
  これまでは「元祇園の芸妓・のぶ代」や「京都の坊主・ノブリン」などオリジナルキャラで物語が進行しましたが、今回はチーム辻本の本公演で今やすっかりお馴染みの「緑スーツのヤクザ・森田」で登場!!このヤクザ森田が兄貴分の黄色スーツのイケメンヤクザ・アキさんと共に借金取りと麻薬密売現場の取り押さえに奮闘する物語になっておりました。
  ゲストには京都出身の大御所・くるよ師匠も登場!!パステルカラーでモコモコしたわたあめみたいなお衣装で登場し、なんとこれは今回初めてお披露目した新作!これには森にぃも大感激!!
  お話も、京都にちなんだ地名やお寺がキーワードとして出てきたり、冒頭さらっと触れた部分が実は……な伏線になっていたりと、丁寧に練り込んで作り上げたものとなっていました。あの緑のカッパヤクザさんなかなかやりますぞ、といつも彼をいじくり倒すあの青ジャージのおじいさんにも見せたかったほどです(笑)
  やっぱり森にぃは頭の回転はかなり早いし発想も豊かなんだなぁと実感。

  個人的に驚いたのは刑事役のレイちゃんがうっかり重要な小道具であるケータイを忘れたとき、たまたまテーブルに前から置いてあった別のケータイ(その前に出た演者が持ち帰り忘れたもの)をうまーいこと使ってそのシーンを切り抜けたこと。カーテンコールでネタばらしされるまで、わりと前のほうの席なのに気づかないほど自然にこなしていました!!こういうのは場数を踏んでないと出来ないアドリブですものね。さすがです。
  あと同じく刑事役のゆり蚊ちゃん、チェンバル語ネタで思い出しました。よく「爆笑レッドカーペット」とか出ていましたね!  (゚皿゚)ガッグワッガッギャッ!!←(チェンバル語でおもしろかったよ!のつもり 笑)

 
  【9月→エンタメ新喜劇】

   NGT改装前の最後の日、エンタメ新喜劇に行って参りました。
  相変わらず大人気なこの公演は3DAYSなうえDVD化も決定!
  お話の内容としては、アキさんが映像に残して初めての人にも心に残るようにという願いからか、ほぼ第二弾のリバイバルのような内容でした。確かにメッセージ性がものすごく強い作品なんですよね、これ(ストーリーなど詳しくはこちら→http://nakumelo.hatenablog.com/entry/2016/02/25/110635) 。相変わらず動きはダイナミックかつパワフルで、でも見せるところや伝えたいことはしっかり演技で見せてあたたかい気持ちにもさせてくれました。

  終演間際には桑原レジェンドがどんどんと進化を続けるアキさんを讃え、そんなアキさんを見出だし名コンビとして新喜劇の舞台を盛り上げている茂しゃんへ向けての賞賛のお言葉をいただきました。
  
  最近の新喜劇はなんだかめまぐるしく環境が激変し、正直ついていけないかもと思った瞬間も多々ありました。
  そんななかでも茂しゃんやアキさんはマイペースで変わらずに現場主義で、特に茂しゃんが芸能生活30周年の今年は各地の色んな会場で公演をしてくれました。関東にもコントSPを含めたら今までよりずっとずっと来てくれるようになりました。
  そういう地道で基本を忘れない活動を認めてくださる方がいて、しかも舞台でしっかりとファンに向けて言葉にしてくださったことは、とても救いになりましたし、こちらまで誇らしくなりました。
 
 
  恒例の閉幕後の写真撮影会は、DVD予約の特典として行われました。もちろんDVD欲しかったので予約して参加!!
アキさんと写真撮影後、握手をしたとき思いきってずっと言いたかったことをお伝えしたのですが、あのザワザワしたなかで私のたどたどしい声と言葉を、わざわざ体ごと傾けて耳を近づけて聞いてくださったこと、そしてそれに対して笑顔で「ありがとう」と答えてくださったこと、本当に嬉しかったです。

  「アキさん、絶対、座長になってください!!」とこのときお願いしたことが実現するその日を、私は、どんなに時間がかかっても待っています。





 









 

 

 
 

佐藤太一郎企画その19「風のピンチヒッター’17」レポ④(ラスト)


   チンタラレポもやっと最後!夏休みの宿題がいまだに終わらない子供の気持ちがこの歳になってわかりました……ここからはカーテンコールの様子などを。


  閉幕後は拍手が鳴りやまぬうえに、やがて拍手だけではなく、徐々に立ち上がる観客が続出し、ついにはほぼ全席が立ちあがり拍手を送るという「スタンディングオーベーション」状態に!!前列から振りかえって見たときのその光景は圧巻でした。

  そしてその光景を、NGKの舞台という、主人公ミナミでいう甲子園と同様の「夢の舞台」で見れた太一郎さんは満面の笑みを浮かべながら、大きな瞳からはうっすら涙が……NGKを2日間満席にするというのは私が想像するよりもずっとずっと大変で、太一郎さん曰く「支配人に殺されやしないかとビクビクしてた」とのこと(笑)  それでもプレッシャーをはねのけ、見事に目標を達成し、奇跡を間に合わせて全力投球した太一郎さんは、やっぱりミナミそのものだなと思いました。

  太一郎さんの計らいで、この作品の作・演出を担当し、太一郎さんがかつて所属していた劇団の主催という大塚さんも舞台へ登場!「あの作品がこんな大きく伝統ある舞台で出来るなんて嬉しい」と話してくれました。太一郎さんがこの作品の初演を観たときは新宿の小劇場での公演だったそうです。

  公演が終わると出演者の方たちがあちこちに並んでいて、なかには公演での演技を見てファンになった観客たちと写真撮影や握手をしている方もいました。彼らのほとんどは太一郎さんが見出だした「今後の関西演劇界を背負うであろう人材」たちなので、これを自信にまたそれぞれの活動を精力的にこなしていくんだろうなと思います。実際、これを書いている今、リョウコ役の辻さんは短編映画のコンクールでグランプリと最優秀女優賞を受賞し、トクガワ役の田川さんも単独イベントを大成功させています!!すごいよーー!!
トシミツ役の井路端さんは「茂造の絆」にも出てらしたので、友人と一緒にご挨拶させていただきました。

  そして我らが太一郎さんには、一番大きな列が。疲れも見せず、一人一人と笑顔で気さくに応じる太一郎さん。今回、私はその優しさに甘え、あることをお願いすることに……

  長い列に並び、いよいよ私の番。

  「お疲れ様でした。あの、ちょっと、わがままなんですが、お願いが……」
「なんだい?(ニコニコ)」
「あ、あの、これを持っていただきたいんです……」

  そして私が取り出したのは、出発前に地元のガチャガチャで見つけてきた、マンボウの人形。実はこれ、両サイドをぎゅっと握ると目玉が飛び出て、太一郎さんの目とそっくりになるという……(笑)
失礼&無礼にもほどがあるこんな要求にも快く応えてくださり、しっかり目を見開いて見事にそっくりな表情でいっしょに写真を撮ってくださいました(  ;∀;)ホントニホントニスミマセン

  あと、列に並んでいる最中にどこがで見たことのあるお兄さんがいるな、と思ったら、レイちゃんでした!太一郎さんと仲よしなので観に来ていたようです。見かけることが出来てラッキーでした♪


  太一郎さんの企画は、それまでの私の中にあった演劇の「難解で複雑でセンスと学のある人が楽しむ芸術」という思い込みをぶっ壊し、「見せ方次第で様々な場面や情景を見せてくれて、老若男女が楽しめるエンターテイメント」に変えてくれました。
  今回、NGKの舞台の上は紛れもなくグラウンドで、そこをみんなが駆け抜けて、風も吹いていた。こんな風に見せることが出来るんだ、標高数センチのあの舞台の上は、別世界になるんだ、お芝居って、演劇って、すごいんだ……と改めてその魅力と面白さを教えていただきました。
 

  そして早速太一郎さんは次の企画に向けて動き出しています。次回は記念すべき20回目!楽しみです!今度こそもっと早くレポが書けたらいいな……(笑)





  




 




 

佐藤太一郎企画その19「風のピンチヒッター’17」レポ③

  すったもんだありましたが、ついにやって来た予選大会! 鼻息荒い三高ナインと、それを冷笑しながら見つめるオキタとトクガワ。

  試合が開始されますがやはり実力の差は歴然。あっという間に点差が開き、ついに「ここで三高が負けたら最後までやっても逆転の可能性はほぼないから途中で試合やめるよ」というところまで来てしまいます(そんな無慈悲なルールがあるなんて!!)。
  ここで打たれたら終わり、という場面にバッターを任されたのは、お金持ちのお坊っちゃん長嶋茂雄信者でもあるシンサク(キタノの大冒険さん)。普段の練習でも決してナイスとは言えないバッティングを披露してきた彼。しかし彼と三高ナインたちの強い想いが、長嶋氏の魂を呼び込んだ?のか、なんとラスト3球目でヒットを飛ばすミラクル発生!!

  そして今度は守備側になると、新進気鋭の問題児エース・サイゴウが父親譲りのナイスピッチングを思う存分披露。次々に星上の選手たちを空振り三振へ導きます。そのいい流れを受けて、三高ナインも絶好調!さらに、イサムが両目とも2という驚異の良視力で、無意識に次の作戦を口パクしてしまう癖があるオキタの口元を読み取るという妙技によって相手の裏をかきまくり、いつのまにやら一点獲得どころかぐんぐん点差が迫っていく!!
  準備体操くらいの気持ちで余裕をかましていたオキタやトクガワをはじめとする星上は焦りまくり、それゆえにどんどん動きが鈍くなり、そのたびに罵声と鉄拳を浴びせるオキタ。それを見てドン引きする三高ナインと観客。

  それでもなお「勝利」にのみこだわり続けるオキタは、ついにスポーツマンシップすら捨てて三高を妨害。「隠し玉」というルール違反でこそないもののかなりセコい技を繰り出したり、サイゴウに対して父親のことを持ち出して野次ってきたりなど卑怯なことばかりしてきます。

 
  それでも堂々たる投球を続けていたサイゴウですが、やがて投げるたびに顔を歪め、なにかに耐えているような素振りに。様子のおかしいサイゴウを心配するサカモトたちに、それまでずっとベンチで応援していたミナミが真実を話します。


  前日、試合を控えているため練習は早めに切り上がったのですが、補欠のミナミは試合にこそ出れなくても、少しでも上達できたらと思い、投球練習用の的の中央に10球連続当てられるようにずっと練習していました。それを居残りでやっているとき、通りがかったサイゴウがアドバイスをしつつ、10球達成の見届け人になると申し出てくれたのです。

  たどたどしく危なっかしくも、どうにか9球目まで達成したとき、やってきたのはあのトクガワ。そしてトクガワが合図すると、彼女が雇った暴漢が一斉にサイゴウに襲いかかり、ピッチャーにとって大切な腕や肩を鉄パイプで攻撃!! かつてのように暴力で振り払うにもトクガワはまたカメラを所持しており、試合出場が危うくなるのを恐れてじっと耐えたサイゴウと、なにもできずに怯えて見ていたミナミ。そしてサイゴウはミナミに、このことはメンバーやサカモトには秘密にしておけと伝えていたのです。痛め付けられたうえに連続投球によりサイゴウの肩や腕は限界寸前でした。

   サカモトがサイゴウを止め、ベンチへ入れることに。しかし補欠はミナミとキタカゼのみ。実力からして出るべきはキタカゼですが、やはりまだ踏ん切りがつかない模様。そのときミナミがフェンスの向こうで青年を発見。それはかつてキタカゼがデッドボールで怪我をさせてしまった相手。しかし彼はキタカゼに向かって笑顔で大きく手を振り続けてくれていました。許しと応援を受けたキタカゼはついにマウンドに立ちます!

   ここからはまた三高にいい風が吹き、バッターとなったキタカゼはこれまでのブランクを感じさせないほどガンガン打ちまくります。実弟の生き生きとした姿に呆然とするオキタ。盛り上がる三高ナイン。

  しかしそんなときあるアクシデントが。なんと星上の選手が投げた球がキタカゼの目元を直撃!!グラウンドに立つことが出来なくなりました。三高ナインはオキタの指示ではないかと星上に抗議しようとしますが、「きっとピッチャーの子はわざとやないんや。僕は恨まへん」と自分がかつて犯したミスだからこそわかると主張。そしてミナミに向かってあるお願いをします。

  「あとは走るだけ。次の塁まで走るだけなんや。それを、君にやってほしい。君ならできる!!」

  実際、あとの補欠はミナミだけでした。大事な大事な場面での出場決定に、戸惑い、弱気になるミナミでしたが、「お前は……ベンチ温めるために……これまで練習してきたんかぁーーッ!!!??」というサカモトの怒号と、三高ナインたちの励ましを受け、ついにグラウンドに!!

  震えながら、その時を待つミナミ。そして響き渡るバッターが球を打つ音。次の瞬間、駆け出すミナミ。その姿は父とは違い、ぎくしゃくとして決して速くはないものの、彼が走ったとき確かに風は吹いたのです。そして見事にミナミは走りきり、しっかりとベースに手が!!そしてまた、次の回では全力疾走!!父の志は、確かにミナミに受け継がれていました。

 

  そして………


  結果的には、名門星上の勝利、三高ナインの夏は早くも終わりました。それでも清々しい笑顔で互いを労う三高ナインに、オキタは皮肉混じりに「試合に勝って勝負に勝って満足か?」という言葉を吐き、それを聞いたミナミがついにガチギレ。オキタの胸ぐらを掴み「本当にあんたに勝つために俺はずっと野球を続けてやる!!」と宣言します。


   ここで舞台の照明が落とされ、ミナミとサイゴウの二人きりになり、回想しながら語っています。
  サイゴウ曰く「俺の人生は最後の最後までツイてなかった。でもこのときの夏と野球があったから、悪くない人生だったと思えた」「今は毎日親父とキャッチボールしとる。親父はまったく手加減せず豪速球投げてきよる」とのこと。明言こそされていませんが、どうやらサイゴウは若くしてこの世を去ってしまったようで……それでも楽しそうにあの夏の思い出や野球のことを語る彼を、ミナミはほほえましく見守るのでした。


  そして時は流れ、大人になったミナミは冒頭と同じように甲子園のグラウンドに立っていました__審判として!
  そして観客席には、あの夏共に汗を流し笑いあった三高の仲間たちの姿。ある者はスポーツ記者、またある者はプロ野球のオーナー、そしてまたある者は社会人野球の選手や趣味で草野球チームに所属など、皆形は違えどあの頃からずっと野球に携わって生きてきたのです。ずっと野球を好きでい続けたのです!!

   「プレイボーール!!」というミナミの掛け声と共に甲子園の試合が始まる、というところで物語は終了。最後は出演者全員で口上を述べます。

「誰かが言った
もう一度野球をしよう
誰もが頷いた
もう一度野球がしたい
その時のために
風を感じよう
その物語がはじまるまでは
風を記憶しておこう
あの夏
あの空
あの幻
風は確かに吹いていた
そして風は今も吹いている
全てはこの野球のために 」


次がほんとにほんとに最後!カーテンコール編です!!ここまできたら最後まで書くよーー!!