ひみつの茂造レポ②
さて、現世ではカズヤの死から3ヶ月ほど経って百箇日法要も済み、少しずつですが工場のみんなは前を向き始めて協力しながら運営をしていました。
ちなみにゲンゾウじいさんは、なんとカネヒラが外に向けて撃った一発目の銃弾をたまたまその場を通りかかったがために喰らってしまい、あっさり亡くなってしまっていました。遺影には白目を向いてふざけているとしか思えない変顔。こういう写真しか家になかったそうな……
笑い声も少しずつ戻りつつある原田繊維工場に、この度新採用された茂造がやって来ます。しかしその中身は……亡くなったカズヤなのです。
懐かしさで思わず自己紹介の時涙ぐみ、長い付き合いだった工員たちのプロフィールもばっちり把握済み。愛しい妻や娘には思わず手を握りしめたりギュッと抱き締めたり……しかし周りからしたら「やたらみんなのことを調べ尽くしていて馴れ馴れしくて不気味なおっさん」にしか見られず、やや距離を取られる茂造。
事件担当の刑事(濱田亮平さん)がやって来て、目撃者であるユイの記憶をどうにか呼び起こそうと、脳科学者を工場へ連れてきたのですが、それがパツパツの派手な競輪選手のような服装に、おかっぱの黒い長い髪。さらに名前が「佐村河内」というもうダメじゃんそいつみたいな疑惑だらけの専門家(アキさん二役)がやって来ます。
専門家は「記憶を呼び起こすための儀式」と称して茂造に梅干しを食べさせ、二階から種を飛ばしてそれをゴミ箱で見事キャッチ!というどこかて見たことあるような一連の流れを「血圧上がるのに…」とリアルに不安げな茂造に二度も梅干しを食べさせ、さらにはユイにもゴミ箱キャッチをさせて会場を盛り上げつつ、結局手がかりになりそうな記憶はなにひとつ呼び起こされることなく佐村河内は去っていきました。何しに来たんだよ!
ひとまず新人工員として働き始めた茂造。しかしそこで、カズヤとして生きて過ごしていたときにはわからなかった、様々な「ひみつ」を目撃することに………
ヨウコとは幼馴染でもあったコウタ、実はかつてヨウコとコウタは交際をしていて、しかも今もなおコウタはヨウコには好意を寄せており、 なんと彼女にプロポーズ!!「前の仕事クビになったとき世話したの俺(カズヤ)だぞ!?」とぶちギレて飛びかかってぶん殴る茂造。しかしヨウコは快く承諾。そしてユイまでも「おかあさんとコウタにいちゃん、おとうさんがいないときランチ行ってたりしてたもんね」とさらりと二人の関係を承認していた模様。ガックリと肩を落とす茂造もといカズヤ。
さらに茂造がこっそり目撃してしまった「ひみつ」がふたつ。
ひとつは足を怪我して以来「足に力が入らない。だからもう選手として復帰はできない」と弱音を吐き、未だ車イス生活のリョウスケが実はとっくに完治していて、普通に立ったり歩いたり出来るという事実。さらには「いつでもまたプロへ戻るための練習が出来るように」と工場に取り付けてもらったバスケットゴールへボールを投げてみせますが、まったく入りません。茂造曰く「めっちゃヘタクソ 」
婚約者のサヤカ(島居さん)と大喧嘩をしてまで「俺はもう立てない!」と嘘を言い通すリョウスケをひとり冷ややかな目で見つめる茂造。ついにはサヤカと別れると言い出すリョウスケに我慢ができずついに「嘘までついて一方的に別れるなんてサイテーだぞ!!」と一喝!!
するとそこに「そうよ!!その通りよ!!ひどいわ茂造!!」とやってくる、某デラックスを彷彿とさせる金髪巨体オネェ(あいはらたかしさん)が乱入!! どうやらカズヤが憑依する前の茂造となにかしら関わりがあったようですが、まったく身に覚えがなくオドオドするしかない現在の茂造(カズヤ)。しかしリョウスケに強く言った手前無下にすることも出来ず、ひとまず話を合わせることに。
どうにか「リンダ」という名前を当てずっぽうで導きだしたものの、「アタシを愛してるなら態度で示して!!」という無茶ぶりをかまされ、そこで茂造が体を張って行ったのは……ガチのキス!!!! 製作記者会見で言われていた見所のひとつ、「キスシーン」はここでした!!
結局リョウスケが嘘をついてまで頑なに歩けないと主張していたのは、もう一度プロの選手としてやっていける自信がなかったから。それならいっそ歩けないフリを続けた方がいいのかと思っていたそうです。しかし茂造渾身のキスのおかげもあったのか、正直に周りに気持ちを話し、ゆっくりでもまたプロ復帰を目指して頑張ると決意。実はサヤカも含めてカズヤ(茂造)以外の人間全員がこの事実を知っていて「本人の気持ちが変わるまで見守ることにして黙っていた」とのこと。またまた自分だけが知らなかった「ひみつ」の事実を知り愕然とする茂造。
そしてあの巨体オネェ・リンダの正体は、なんと「あの世とこの世の狭間」で契約を交わした天使だったのです!!あのときあんなに小柄でかわいらしかった天使も、現世で生活するために憑依出来る体を探したのですが、このオネェな巨体しかなかったとのこと。あまりの変貌ぶりに茂造はドン引きですが、ともかく茂造のサポートとして工場で共に生活できることになりました。
そしてもうひとつの「ひみつ」は、原田繊維の力仕事担当・テツロウ。茂造が目撃したのは、彼が誰にも見られないようにどこからか仕入れた紙袋から大慌てで取り出したのは……注射セット!!震える手と荒い呼吸で怪しげな薬が入った注射器の針を腕に刺すその姿に、「警察24時」的なアレかと怯える茂造。
元々謎めいた部分が多いキャラだったテツロウ。現場を見た茂造が疑惑の目を向けるなか、突然やって来た一人の女性(金澤芳江さん)により、思いもよらなかったテツロウの正体が明かされます。
「やっと見つけたわ!!『サユリ』!!」
「……その名前で呼ばないで!!俺はもうその名前と女は捨てたんだ!!」
このやり取りに唖然とする茂造他工員一同。
実はテツロウは、いわゆるトランス・ジェンダーであり、女性の「サユリ」として生まれながらも性自認は男性で、自分らしく生きるために「テツロウ」と名乗り、男性として過ごしていたのです。
母親には思春期の頃にこの性の違和感を打ち明けたものの、気のせいだと冷たくあしらわれたのがショックだったと苦しそうに打ち明けるテツロウ。そんな恥ずかしい格好はやめてくれと訴える母親。しかし、茂造や工場のみんなから、テツロウがどれだけこの工場での支えとなってくれているか、悩みながらも自分らしさを模索する彼の生き方は恥どころか誇りであると懸命に訴え、ついに母親も認めることに!!長い間親子にあった壁がついに壊されたのでした。涙を流し、母に駆け寄るテツロウ……
「本当にありがとう……“お父さん”!!」
「えっ!!!??? (゚皿゚)」
なんと母親だと思っていた人も本当は父親だったというワケアリトランス・ジェンダー親子だったようです。父と娘改め母と息子はお互いを受け入れ支えていくことを約束しました。
ちなみに茂造が目撃したあの注射器にはいわゆる違法薬物ではなく、男性的な筋肉質の体型を維持するためのホルモン剤だったこともこの後発覚し、ひと安心。
後日、社長のサツキから嬉しい報告が。カズヤの百箇日法要後あたりからお付き合いを始めたイチノセという男性を工場へ連れてきます。どうやら結婚も視野に入れている模様。
やって来たその好青年を歓迎する工員たち。しかし茂造だけはその青年の顔を見るなり青ざめます。
イチノセは、かつての自分__つまりカズヤを銃殺した、カネヒラだったのです。