nakumelo’s blog

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ひみつの茂造レポ③

  カネヒラはイチノセと名乗り、工場社長であるサツキに近づき、結婚することによって工場を乗っ取ろうというハニートラップ的な作戦でこの工場の土地を奪おうとしていたのでした。

  その企みに気付き、戸惑いながらもなんとか引き留めなくてはと奮い立つ茂造。今現在この事実を知っているのは魂はカズヤである自分のみ。

  しかし、今はカズヤではなく茂造であることは、不利でしかありません。

  いよいよみんなが見ている前でイチノセがヨウコにプロポーズしようとしているとき、ひたすら慌てて引き止める茂造。しかし上手いこと反対意見が見つからず、やがてサツキを含めて周りはイラつきだす始末。やがて「私の幸せを邪魔しないで!!」とサツキが泣き出してしまいました。怒った工員が茂造を追い出そうとします。それをオロオロしながら見ているしかないヨウコとユイ。

   「そいつの本当の名前はカネヒラだ!!あの地上げ屋の仲間だ!!そいつがカズヤを殺したんだ!!」

「なんであんたがそんなこと知ってるんだよ!?」

  「それは……俺が……伊藤カズヤだからだ!!」

  「はぁぁ!?アホなこと言うな!!もう、出て行けっ!!」

  羽交い締めにされ追い出される寸前、茂造が一か八かの賭けで叫んだのはカズヤとして持っていたヨウコやユイとの思い出。リンダが「正体を明かしたらあなたはもう……!!」と止めるのも聞かず、一言一句はっきりと伝えていきます。


   ヨウコと初めてデートした祇園で、ヨウコが抹茶ソフトを舞子さんのお着物に付けてしまったハプニング。
 
  コブクロの「永久に共に」の歌詞を引用して「なんかそれ縁起悪いじゃないの!」と笑ってツッコまれながらも受け入れられたプロポーズ。

  陣痛に苦しむヨウコよりも大きな声でラマーズ法をし、看護婦さんに「おとうさんうるさい!!」と怒られたユイの出産。

  すべて、カズヤだからこそ知っている記憶でした。

 
  その正確さに驚くヨウコとユイ。そして確信します。この茂造は亡き夫・亡き父だと。思わず抱きしめ合う親子三人。そして工員たちもまた、それまでの茂造のやたら自分達のことに詳しい言動から、この人はカズヤ専務なんだと実感。ついにヨウコも涙ながらに「私はこの茂造さんが嘘をついていると思えない!!」と断言。
  まさかこんな展開は予想していなかったイチノセ。茂造に向かって怒りを込めて怒鳴り散らします。

  
「茂造さん、あんた、邪魔だ!!」


 
その「邪魔」という声と響きを聞いた瞬間、頭を抱えうずくまるユイ。脳内で何度もそれがリフレインし、だんだん甦ってくるあの日の忌まわしい記憶………そしてイチノセをじっと見つめ……


   「このひと……おとうさん、うった……おとうさんは、このひとが、ころした……」


  さらにタイミングよく刑事もやって来て、事件当日犯人が使ったと思われる車が修理工場から発見され、そこにあるドライブレコーダーを手がかりに犯人が「カネヒラ」という地上げ屋の元締めであるヤクザであることも特定できたとのこと。すでに逮捕に向けた手配も済んでいました。

   あと一歩のところで思わぬ邪魔が入り、怒り狂うイチノセ、もといカネヒラ。ついに本性を現すと、戸惑うサツキの手を振り払い、銃を振りかざします。
  「こんなことならお前もあのとき始末しておくんだった!!」と目を付けたのはユイ。彼女を人質に取り、逃走用の車を要求します。

  刑事がどうにか説得している間に、茂造が注目したのはカネヒラの真上にあるダクト。カズヤの亡くなる直前まで壊れたままで、劣化して大きな穴が空いていたのです。
  リョウスケを呼び出し、そばにあったボールを引き寄せ、ダクトの穴へ向けてシュートするよう指示する茂造。プレッシャーのなかリョウスケが投げたボールは見事穴の中へ!!そしてそのまま通気孔を通り、カネヒラの頭上へ落下!!驚き痛みを堪える間にユイを救出しました。
 
  すっかり怯えたカネヒラから銃を奪い、かつての自分の命を奪い、さらには周りの人間をも危険な目に遭わせた憎き相手に銃口を向け、頭に押し付ける茂造。このままいっそ殺してやろうとも一瞬思ったのでしょう、しかし、思いとどまり、「バン!!」と声に出しただけで実際には撃たず、そのまま警察に引き渡したのでした。

 
  ついに悲願だったカネヒラの工場乗っ取り計画からの死守を達成。しかし最大注意事項であった「伊藤カズヤとバレないようにする」の掟を破ってしまったため、もうこのカズヤとしての魂は輪廻転生を行えず、永遠に闇をさ迷うことになりました。
   リンダによれば、今のこの茂造として生きている状態も、もうあと僅かしかいられなくなったとのこと。残りの時間、みんなは精一杯のお別れをします。

  一人一人に優しく、力強く声をかける茂造。どの言葉からも、出会えて良かったと思う喜びと、これからの未来はどんな困難も強く前を向いて乗り越えてほしいという願いが込められていました。

  最後は、ユイとの約束であった「バージンロードを一緒に歩く」を、その場で真似事をしながらゆっくり、涙を流しながら、そして同じように泣きじゃくるみんなが見守るなか、行いました。


   「……時間です」


  リンダのその声で、決意したように前を向く茂造。もうその目に後悔はありませんでした。

  「待って!!あなた!!」
  「行かないで!!おとうさん!!」
  「専務ーー!!」

  みんなが叫ぶなか、突然轟く雷鳴、そしてふっと包まれた一瞬の闇。次の瞬間、もう茂造とリンダはいませんでした。

   ふと作業所へ繋がる入り口を見ると、そこには元の姿のままのカズヤが、優しく穏やかに微笑んで、みんなを見守っていました。


  さて、あの世とこの世の狭間では、また別の「現世への未練を断ち切れない死者の魂」がやって来ました。
  なんとそれは、ゲンゾウじいさんが仕掛けた「結婚を許してもらうための一芝居」に協力した際、拳銃で撃たれてしまった緑スーツの森にぃ!!おなじみの防弾ブラジャーも着けていたのに!!

  がっくりうなだれる彼の頭皮がカッパのおさらのようにピカピカ光っているところで、終演。


最後に、あと少し色々語りたいなと思います。