佐藤太一郎企画「お母さんいません」レポ②
サワとオチは元々大学のボランティアサークルの仲間。支援活動の一環でタイチロウと出会い、送り迎えした関係で、元々タイチロウの実家でもあるこの家にも見覚えがあるのでした。
「でもなんでこの家にいるの?私とタイちゃんとマイカは三人でマンションで暮らしてるはずだし……しかもマイカはあんなに大きくなってて……まだ幼稚園生のはずなのに……」
ふとカレンダーを見るとそこには「2019年 7月」とあり驚くサワとオチ。さらにタイチロウに「今って平成何年!?」と聞くと「へいせいはおわりました。れいわ(令和)がんねんです」という聞きなれない元号を答えられ、ますます大混乱する二人。
実はサワとオチの魂の記憶は、6年前のままだったのです。そして6年前ということは、サワ自身が亡くなった時期。「七回忌」の飾りと仏壇にある遺影の自分に絶叫するサワ。まさか自分が死んでるなんて!!
オチはこんなときでも体は正直でもよおしたらしく、ひとまずトイレへ行くことにしました。
そうこうしているうちに次々と来客が。近くに住むサワの弟のマサヒロ(山本誠大さん)がやって来て、タイチロウは大喜び。早速一緒に遊んでもらいます。頼まれていたソバの薬味を袋いっぱい爆買いしてくるあたりちょっとズレているようですが、優しい親戚のお兄さん、という感じ。
さらにマイカのクラスメイトでモテモテイケメンくんのドイ(土井良祐さん)もなぜかこの家へ。憧れのクラスメイトの来宅にドキドキするマイカ。ドイは見た目こそチャラく、話すとき手をやたら前に出す癖のあるヤンキーのようですが、周りの大人への挨拶がきちんと出来ていたあたり根は真面目のようです。
ドイがこの家に来たのは、幼い頃両親が離婚してそれ以来会えていない父親の手がかりを探すため。母のスマートフォンからある動画を発見し、その動画の雰囲気や窓から見える景色を頼りに歩いていたらこの家を発見したとのこと。
さらにこの動画、なんと元々の姿のサワも映っていたのです。だとするとドイの父親はサワやタイチロウと接点のある人……?
そんななかやって来たのは、きちんとした礼服に身を包んだ険しい顔の女性。サワとマサヒロの姉でマイカにとってはおばにあたるサトコ(延命聡子さん)です。サトコはタイチロウが場にそぐわない奇妙な格好をしていることや部屋が散らかっていること、そしてそこから中学生のマイカが普段からこのタイチロウの面倒を見ている気苦労などを憂い、厳しい言葉を視線をタイチロウに与えます。場の空気が悪くなりそうなのを慌ててマサヒロが七回忌会場である二階へ促して、マサヒロ・サトコ・マイカ・ドイは二階へ。タイチロウは自室へ。そして居間に残ったのはサワとトイレから戻ってきたオチの二人だけ。
相変わらず魂が乗り移ったことを信じてもらえず、さらにはなぜ自分達がこんなことになっているのかもわからないまま。ひとまず何か自分達の照明が出来るものを探そう!と居間のあちこちを探る二人。
ふとサワがクローゼットを開けると、なんとそこには落武者!!個性的すぎるビジュアルに響き渡る絶叫!!
「落ち着いてください!私はあなた方と同じようなもんなんです」
なんでもこの落武者(堤下さん)、かつてはあの大阪の陣で闘ったものの戦で命を落とし、その絶命した場所に後に建設されたこの家にずっと居続けることになった言わば「地縛霊」。この地縛霊は今はこの二人にのみ見えているとのこと。
落武者のアドバイスでクローゼットの中にある新聞を発見。6年前のその新聞にはサワが交通事故に巻き込まれ亡くなったという記事が。記憶もちょうどそのあたりから途切れ、気づいたらこのナギコの体に魂が入っていたのです。
「サワはともかく、なんで俺までこんなことに?」という疑問を持つオチに「そりゃあなたも死んでるからですよ」とあっさり宣告する落武者。しかも落武者によればオチの死因は海外でノリで行ったバンジージャンプで命綱をつけ忘れたというあまりにもアホすぎるもの……
落武者はその他にも
・二人の魂がこうして他人に乗り移ったのは、この世に未練があるから
・この他人の肉体を借りれるのは今日のみ
・今日中に未練を達成出来れば成仏できる
・達成出来なければ自分のように、最後に死んだ場所にさ迷い続ける地縛霊となる
という事実を伝え、またクローゼットの中へ帰っていきました。
サワの未練はもちろんタイチロウとマイカのこと。ではオチの未練とは……実はオチには離婚した元妻との間に息子がおり、その息子とずっと会えていないという、なんだかどこかで似たようなことを聞いたような話が浮き上がります。
「もしかしてオチくんの息子って……ドイくん!?今その子来てるわよ!?」
この家とサワを映した動画・父と離れた少年と息子と離れた男・そして手の癖………これらを繋げると確かにその事実が浮き上がってくるのです。さらにオチも「そういえば嫁さんの旧姓がそんな名前だったかも……」と思い出します。とはいえ何年も会っていないため、なにをどうしてやればいいのか悩むオチ。そしてふと、こんなことを尋ねます。
「………そういえばさ、なんでサワは、タイチロウと結婚したん?」
サワは懐かしむように語り始めます。大学を卒業後、就職したものの、毎日忙殺されていたサワは心が疲れきっていました。ある日限界寸前のサワは電車で見事に乗り過ごし、とある街の公園へ。ブランコに乗って項垂れているところへアイスを持ってきてくれたのが、電車内で疲れきった彼女を見かけ、心配でずっと着いてきたタイチロウでした。彼のそのまっすぐなあたたかさに触れ、サワは惹かれていったのでした。
そのときタイチロウがサワに渡したアイスは___
「……すいかの……アイスです」
「……タイちゃん……」
自室でこっそり二人の話を聞いていたタイチロウが、つぶやきながらやってきます。それは、サワとタイチロウしか知らないはずの、大切な思い出。
「すいかのアイスです……タネがほんものの……」
「うん、うん、そうだったね。それを途中で落っことしちゃったんだよね」
「なんでナギコさんがしってるの?サワとアイスたべたことしってるの?」
「それはね……今はナギコさんの体だけど……私が、サワだからよ」
「……サワなん?ほんとに、サワなん?」
「そうだよ、タイちゃん!」
次の瞬間、ぱあっと明るい笑顔になるタイチロウ。そして「サワや!!サワが来てくれた!!」と大喜び!ついにサワの魂がナギコに宿ったと、信じてもらえたのです!
とはいえまだまだ成仏は出来ません。マイコやドイにもこのことを信じてもらい、気持ちを伝えなくては……!!