nakumelo’s blog

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佐藤太一郎企画「お母さんいません」レポ④

サトコは中学生のマイカが本来父親であるはずのタイチロウの「母親替わり」になって我慢や苦労を重ねているのではないかと憂いており、受験や今後の進路のことを考えるとおばである自分の元へいたほうがのびのびと年頃の娘らしく過ごせるのではと考えていました。


「今通っている中学は転校することになるけど、きっとうまくやっていけるから。タイチロウさんには自立支援施設をタナカさんに探してもらってそこで暮らして、定期的に面会へ行けばいい」とかなり具体的に提案してくるサトコ。突然のことに戸惑うマイカ。離ればなれになることを悟り悲しみの表情を浮かべるタイチロウ。


さすがにこれには周りの人間も驚きを隠せません。


「心配なのはわかるけどなにも引き離さなくても!マイカちゃんはタイチロウくんとこうして仲良く暮らしているならそれでよくないか?幸せのかたちなんか人それぞれだろ?」とマサヒロ。

ドイも「マイカちゃんクラスで人気者なんすよ。いなくなったらみんな寂しがりますよ。それにもうすぐ文化祭で、今マイカちゃんはそこで飾るための絵を頑張って描いているんですよ。それをやりとげさせてあげてほしい」と引き留めます。



そしてタイチロウは……


「マイカが……マイカがしあわせになれるのなら……いってほしいです」


個人的なさみしさよりも、父親として娘の幸せを願うタイチロウ。


「タイチロウくんは……彼なりに父親として、マイカちゃんのことを考えていますよ。その証拠に……これです」


タナカが鞄から出した一冊の通帳。それは、作業所での給料からタイチロウが毎月積立てている、マイカの将来の結婚資金でした。マイカに内緒で、決して多くはないものの、毎月少しずつ少しずつ、最近では大好きなドーナツの買い食いも我慢してまで、備えていたのです。タイチロウは彼なりに、出来る限りのことは娘にしてやりたいと、努力していました。


そしてサワはいよいよ時間がないと悟り、マイカに語り掛けます。しかし未だナギコの体に宿ったのがサワの魂だと認めないマイカ。ここまでくるとかなり意固地になっているようにも見えます。


「だって……認めちゃったら……お母さんはいなくなっちゃうんでしょう?ドイくんのお父さんみたいに……離れたくない!!三人でまた暮らしたいよ!!ここままここにいてよ!!」


本当はずっと気づいていたのです。この目の前にいる女性の中に、亡き母の魂が入っていることが……

タイチロウとの暮らしは、苦労も不満も多いけれど、それはそれで仲良く楽しく力を合わせて過ごしていたマイカでしたが、やはり突然失った母親への慕情、そしてそこから沸き上がる寂しさはずっとあったのでしょう。


「お母さん、死んじゃってごめんね」

「お母さん……ずっといてほしいよ。寂しいよ。私とお父さんだけじゃ、やっていけないよ……」

「大丈夫よ。だってマイカがかんなにまっすぐ優しい子に育ったのは、お父さんがたくさん愛情を注いでくれたから……だからこれからもきっと大丈夫」

「お母さん……」


そしてサワは自分の姉弟に「どうか二人を見守って支えてほしい」と頼み込みます。


「私はあそこで、いつも見てるから!あなたたちを見守っているから!頑張って生きていって!!」


あそこ、とは部屋に置かれた仏壇のこと。そしておもむろにタイチロウはその仏壇に向かって手を合わせ……


「わかりました!わかりました!わかりました!

おかあさん、このいえにはいません。マイカとおとうさんがいます。

でも、おかあさん、ここにいます!!」


「ここ」の部分で自分の胸を指すタイチロウ。


そう、あの三回唱えるこの挨拶は、サワに向かって「娘と二人で力を合わせて生きていきます」という意思表示をしていたのです。タイチロウには最初から、サワが姿こそなくてもちゃんと見守ってくれているのだとわかっていたのでした。



「タイちゃん……その服、まだ大事に持っていてくれたのね。ボランティアサークルで一緒にお芝居したときの衣装ね」


嬉しそうな笑顔で頷くタイチロウ。


「きょうはサワをおもいだすひだから、サワとのおもいでのふくにしましたっ!」


すると辺りがまた暗くなり、サワの頭上に一筋の光が。ついにその瞬間がやってきました。



「またね。タイちゃん。マイカ



そしてフッと意識が消えると、次に起き上がった瞬間には……


「………あれ?私、なにしてたんだろ?……え?な、ないてる?え?なんで?え、え、みなさんどうしました?」


心も体も完全に「ナギコ」に戻っていました。


「……マイカ、この家で暮らしながら、受験ややりたいことも我慢せずおもいきり出来る方法を、考えましょう。おばさんやマサヒロも力になるから」


やりとりを見ていたサトコも、考えを改めたようです。


改めて、七回忌__サワを思い出す会を開催するため、会場である二階へ移動する面々。
最後に一人残ったタイチロウは、サワの遺影を手に取ると、それを胸の前でいとおしそうにぎゅっと抱きしめました。

それを持って二階へ上がる前に、タイチロウはクローゼットを開け……


「おつかれさまでぇす!!」


……彼にはこの家の先住民のことも、ちゃんとわかっていたみたいですね♪


レポートはここまでとなります!読んでいただき、ありがとうございまーす!!