nakumelo’s blog

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きっかけ


  「茨城在住で元々はジャニヲタの新喜劇ファン」と自己紹介するとかなり驚かれます。一体何があったんだと。そういえばそもそもの「きっかけ」をしっかり書いたことがなかったな、と思い、今回はそのお話です。

  新喜劇ファンになった2014年、今思うととても運命的な出来事がありました。2012年にスマホデビューと共に始めたTwitterで、ジャニヲタ繋がりで仲良くなったフォロワーさんが何人か出来て、この頃になると「実際に会ってお話がしてみたい」と思うようになり、2月下旬に、私は大阪へ行くことになったのです。そこで、大阪在住の女の子2人と会うことに。

  しかし当日、ちょっとしたハプニングが。
  二人のうち一人(仮にAちゃんとします)が体調不良で欠席せざるを得なくなり、さらにもう一人は午前中予定があり、午後にならないと会えないとのこと。この時朝10時だったため、私はろくに知らない大阪の街でひとりでしばらく時間を潰さなくてはならないことに。

  落ち込みながらも、実は行ってみたいと密かに思っていた場所があり、そこへ思いきって行ってみることに。それが、なんばグランド花月でした。行ってみたかった理由なんて特にこれといってなく、なんとなく「大阪といえばお笑いで、吉本の有名な劇場だし、行っておこうかな。生きている間に一回ぐらい新喜劇見れたらいいな」ぐらいの気持ちでした。

  そこに、運命を変える人物がいたのです。正確に言えば、その人物の「影武者」のようなものに。

  NGKでは芸人さんを模した着ぐるみが何体かいて、交替でお客さんを呼び込みます。そのときにいた着ぐるみは2体。1体はさすがの私でも知っていた大御所・西川きよし師匠の着ぐるみ。そしてもう1体が……

 

「誰だよ、このジジィ」


 
それが茂造を生まれて初めて見た私の当時の正直な感想でした。
青いジャージにちゃんちゃんこ、サイドがやけにモコモコで中央は禿げている……見るからに「こいつなんかやらかすんだろうな」みたいなじいさんの着ぐるみがいました。

  せっかく来たんだし写真でも、と口上師さんに撮影をお願いすると、当然のようにきよし師匠着ぐるみと「やらかしそうなジジィ」の着ぐるみが両サイドに入ってきました。この写真を見るたびに、このときから私は運命が変わっていったんだな、と思い返すのです。


  NGKの館内に入って驚いたのは、この「やらかしそうなジジィ」がやたらフィーチャーされていたこと。あちこちにパネルやらイラストやらグッズやらが並んでいたのです。当時「新喜劇といえば小籔さん」くらいにしか知らなかった私には衝撃的な光景でした。

  その後、合流した友人や心配してLINEをくれたAちゃんに「このジジィは何者なんだい?」と聞き、そのキャラクターが「茂造」という新喜劇でも1・2を争う人気であるということ、そして演じているのが「辻本茂雄」さんという、小籔さんと同じ新喜劇座長のポジションにいる方なのだと知りました(このときまで新喜劇の座長は小籔さんひとりだと本気で思い込んでいました)。関東人の私と関西文化である新喜劇の、もしかしたら人生で一度も交わらないこともありえる点と点が、一センチくらい近づいた日でもありました。

  それから一ヶ月ほど経ったある日、さらにこの点と点が急接近する出来事が起こります。Aちゃんから「関東でしかやらないジャニーズの番組が見たいからダビングをして送ってほしい」とお願いされました。了承すると、Aちゃんからこんな返事が。

 
  「お礼に、関西でやってる番組をダビングして送るよ。なにがいいかな?」


  そのとき私の頭に浮かんでいたのは、大阪で見かけたあの「なにかやらかしそうな、やたらフィーチャーされてるジジィ」のこと。あれだけ人気なら、さぞ、おもしろいんだろうか? それなら、見てみようかな。私はこう返信しました。

 
「新喜劇が見たい!あの茂造ってやつが出てるのがいいな」


  そして送られてきた「茂造の思い出旅館アイラブベイビー」が、一気に点と点の距離を縮めていきました。そのへんのくだりは以前も書いたので参照していただければ→http://nakumelo.hatenablog.com/entry/2015/04/24/002503

  一気に茂造、そして辻本茂雄のファンになった私は、その年の11月には生観劇デビューを果たし(http://nakumelo.hatenablog.com/entry/2015/06/11/143641)、翌年4月にはついにご本人と直接対面という(http://nakumelo.hatenablog.com/entry/2015/05/07/185234)ところにまで辿り着きました。そのへんのエピソードはリンク先をご覧ください。このあたりの行動力はやはしジャニヲタ時代で鍛えられたんだと思います。

  こうしてわずか一年足らずで私にとっての「なにかやらかしそうなジジィ」は「大好きな“茂しゃん”」になりました。

「きっかけは理屈ではなく胸の衝動から」という歌詞の歌がありますが、まさにその通りでした。あの日の「なんとなく」を信じて良かった!











  
 

 

佐藤太一郎企画その18「闘う男」レポ②

  第1作のレポはこちら→http://nakumelo.hatenablog.com/entry/2017/03/05/104435


10分間の休憩の後に始まったのは、「I’m Only Sleeping~赤垣源蔵本人による解説付き~」というお話。タイトルにある「赤垣源蔵」という方の名前は歴史好きな方ならピンと来るでしょう。そう、あの「忠臣蔵」の四十七士のおひとりです。
 
  しかし私自身は高校時代に日本史に関してはほぼ毎回のテストで赤点→追試というバカの王道を突っ走っていた歴史音痴のため、正直忠臣蔵に関してもほとんど知らないという無知にも程がある状態。「こういうお話やるよー」という太一郎さんのツイートを見て慌ててWikipediaやらYouTubeやらで基本情報を叩き込んで挑んだ次第でした。


  幕が開くと赤い布が敷かれた台座と、その後ろに金屏風。さらに太鼓の出囃子という、なんだか落語でも始まるのかい?という雰囲気。そこに現れたのは黒の羽織とグレーの袴というこれぞ和!というような格好の太一郎さん演じる赤垣源蔵。

  タイトルにもあるように、今はすでに故人で幽霊である赤垣本人が、討ち入り前後の出来事を語ります。赤い台座から降りているときは現在の、台座にいるときは当時を生きている赤垣という演出。

  歴史的なあの討ち入りは一年以上の水面下での準備を進めてゲリラ攻撃を仕掛けた為、当然当日まで赤垣をはじめ赤穂浪士たちは身内にすら討ち入りの計画は話していませんでした。そのため世間からは「忠誠を誓った藩主様があんなことになったのにフラフラしている頼りない奴等」と冷ややかに見られていた部分もあったようです。赤垣にとって、義理の姉がその対象でした。
  赤垣には昔から可愛がってくれている兄がいて、度々実家に顔を出して会いに行こうと試みていましたが、いつも不自然にすれ違ってばかり。というのも兄の妻である義理の姉が「大人になってもなお兄に甘えてくる弟は如何なものか」と、赤垣が兄に会わないよう家の者にきつく命令していたためでした。
 
  討ち入りのエックスデーが近づくにつれ、不安で眠れない日々が続き、澄んだ瞳の兄に一目会いたいと思う気持ちが高まっていく赤垣。討ち入りを目前に、どうにか会える機会を作ってもらおうとしますが、願いは叶わず。それならせめて兄の羽織を貸してほしいと仲の良い使用人に頼み、部屋に二人きりにしてもらいます。
  衣紋掛けに羽織を掛け、それを兄と見立て、持参した酒を注ぎ、赤垣は語りかけます。


  「なぁ兄さん、俺は、ちゃんと、誇れることをしているのかな?もっと噛み砕いて言えば……正しいことを、してるのかな?兄さんの眼を見れば、話してみれば、なにかがわかるかなって、思ったんだが……」

 
  討ち入りは、藩主への忠義の名の元に行われるとはいえ、結局やっていることは住居侵入と殺人という犯罪。その場で相手に斬られ絶命する可能性はもちろん、成功したとしても犯罪者として裁かれ、死罪になる運命にありました。四十七士のなかには、赤垣のように、葛藤を抱えながらその日まで訓練と準備をしてきた者も、きっといたのでしょう。

なにかこれといって明確な「答え」をもらえなかったとしても、兄の澄んだ眼差しを見れば、そのまっすぐな声を聞けば、心が晴れると一縷の望みを抱いていたのでした。
 
  徳利の中の酒を飲み干し、「それじゃあな」と羽織の奥に自分にだけ見える兄に別れを告げ、それが最後の「兄弟の会話」となりました。これは本家「忠臣蔵」でも「徳利の別れ」という有名なエピソードのひとつなんだとか。

   そしてついに訪れる運命の12月14日。赤垣たち四十七士は懸命に闘い抜き、ついに最大の敵である吉良上野介の殺害に成功。さらに赤垣に至っては吉良邸を引き上げる直前に消火活動までする律儀ぶりも発揮し、仲間たちと共に一列に整列して吉良邸を出て、忠義を誓った藩主・浅野氏の眠る寺へ仇討ちの報告へ。


   その後の四十七士を待っていたのは、やはり当然のように、切腹による死刑。あれだけ眠れない夜をすごしていたのに、これからはずーーっと眠り続けるんだな、と笑う赤垣。

  
「物語のなかでは、四十七士は潔く、そして美しく、忠義の名の元に、死んでいく。

でも、もう今なら……本当のことを言って、いいよね。

俺は、生きたい。生きたい。生きたい………生きたいっ……!!」
 
 

  笑顔が段々と消え、最後は涙を堪えるように絞り出す声。英雄と讃えられるより、家に名誉を残すより、叶えたい心からの願い。そしてそれはきっと、この世に生きる誰もが持つ本能。

  そしてやってくる運命の瞬間。紙吹雪が舞う中、赤垣は台座中央できちんと正座をし、扇子を刀と見立て、ゆっくり自分の腹部へ近づけます。刺し込む手前でふっとやわらかく微笑むと、次の瞬間扇子の刀がぐいっと入り込み、目が大きく見開いたところで暗転し、2作目は終了。

後から調べたところ、このラストシーンのときに流れていた曲が、このお話のタイトルにもなっている「I’m Only Sleeping」というビートルズの楽曲だったようです。直訳すると「私は寝ているだけ」という意味ですが、このお話においては「俺は今は長い長い“眠り”についているだけなんだ。死んでいない。生きているんだ」という赤垣の意地の表れなのかな、と考えたりもしました。

 
  二つのお話は、天使と幽霊というという「人間ではないもの」の存在から、人間が持つ本質、そして本能である「生きること」とは、恐れや見得といった自身の弱さ、残酷な現実や運命にも立ち向かって闘っていくこと、どんなにあがいてもがいて何度傷ついて倒れても逃げないで前へ進むことなのかな、と思いました。だからこそ、命は、人生は、美しく素晴らしいものなのではないか、と。
 
  終演後、アンケートを書いて帰ろうとすると出入り口で太一郎さんが出てきてくれました。先程熱演を終えたばかりなのに、このあとも夜公演が待っているのに、疲れも見せず、笑顔で観客一人一人と握手や言葉を交わしていました。私もその列に並び、写真撮影をお願いしました。「スタッフさんへ紅茶の差し入れをお願いしたのでぜひ召し上がってほしい」と緊張でしどろもどろになりながら話して、そんな私の言葉も「わー!ありがとー!喉乾いてるからうれしいわぁ♪」と笑顔で応えてくださって、まだ熱の冷めやらぬあたたかい両手で包んで握手してくださり、「今日はほんとにありがとう!」と本当に丁寧に接してくださる神対応ぶりでした。

  太一郎さんの企画するお芝居には「情熱」という言葉がよく似合う必死さがあって、でもそれは押し付けがましい暑苦しさではなく、見たあとに灯火のようなほっとして、そしてまた頑張ろうと思えるあたたかさをくれるものなのだなと思います。今回は完全なるソロ公演ということで、不安もあったかもしれませんが、そんな彼の情熱を知るたくさんの方たちが駆け付けて、感動を分かち合った素敵な公演でした。
  

 
  

佐藤太一郎企画その18「闘う男」レポ①

  久々の佐藤太一郎企画。今回はなんと完全なる太一郎さんのみ出演のソロ舞台!ふたつのお話を10分の休憩を挟んで行います。

  場所は梅田の、赤い観覧車で有名なHEPビル内にあるシアター。入口にはこれまでの佐藤太一郎企画のポスターや舞台の様子を写した写真が飾られており、ちょっとしたギャラリーになっていました。また、太一郎さんとレディーシュガー佐藤のパネルもありました。

  ステージには灰皿と、昔懐かしの黒電話、そして飲みかけのアイスコーヒーがふたつ置かれたガラスのテーブルとソファーが設置されていました。照明が暗くなり、OPで過去の作品の映像が流れ、再び舞台が明るくなると、第1作がスタート!!


【第1作  「捨てる紙あれば。」】
 
  そこには新喜劇でよく見かける赤い原色スーツに身を包み、ソファーに腰掛け、あの大きな瞳でギョロっとこちらを睨み付ける太一郎さんが!! どうやらここは喫茶店で、我々客席側のほうには「見えない誰か」がいるようで……

  「お前わかってんのか?とんでもないことしてもうたんやぞ!?……エッ!?『落ちますよ』って……!!なんでわかんねん……目ン玉が?元々こういう目なんや!!」

  ただでさえ大きな目をさらに剥き出しにしてギョロッと睨み付ける赤スーツ太一郎。かなりお怒りの様子。そこに鳴り響く黒電話のベル。渋々受話器を取ると、先程とはうって変わってものすごく腰が低くなって謝り倒してる赤スーツ太一郎。どうやら重要なクライアントも関わっているようです。私もお客さんや工場相手によくこういう電話するなぁ……つらいよなー……なんて思ったりして眺めてました。
  通話を終え、ぐったりとまたソファーに座り込む赤スーツ太一郎。

  「……天使も大変ですねって?そりゃどーも……ならわかるよな?なんで、なんで宝くじ捨てたん!?お前の買ったあれ、一等当選してんねんぞ!?」

  なんとこのチンピラみたいな赤スーツ太一郎の正体は「天使」。そして先程の電話の相手のクライアントは彼の上司にしてこの世界の全人類の全運命を決定する「神様」なのです。そして目の前にいる「見えないけれどそこに確かにいる“誰か”」は、その神様の決めた運命により宝くじの一等当選という最高の幸運を与えられたにも関わらず、その当選券を換金前に捨ててしまい、幸運を放棄してしまった。神様の決めた運命の軌道修正のため、天使は“誰か”の説得を命じられたのでした。

  この“誰か”こと「宝くじに当選した男」は世間一般でいうかなり「いい人」らしく、これまでの実績が天使の手元にあるデータファイルに記載されています。「お年寄りに席を譲る」や「卒業して数年経った今でも母校のOBとしてイベントに積極的に参加」や「初詣には私利私欲の願いではなく昨年の感謝と今年の抱負のみを神様に伝え、『始終ご縁がありますように』と祈りを込めて45円を賽銭箱に投入」、さらに「飲み会で自分のオーダーがきちんと通っているか店員さんに確認するときの、プレッシャーを与えない声のトーンは日本一」なんだとか。ただ天使曰く「卒業して何年も経っている先輩に来られても後輩だって気まずいし、あと45円=始終ご縁はあんまし効き目がない。知り合いの狛犬が言ってた」とのこと。 (゚ヽ゚)ナンダソレ

  とにかく、これまで清く正しく生きてきたお前に神様が与えてくださった当然の権利なんだからもらっておけ!と天使は説得しますが男の気持ちは変わらず。それならばこの宝くじ一等当選がどれだけ貴重な出来事なのか知らしめてやろうと、天使は様々な例えを出すのですが……

  交通事故に遭う確率と四葉のクローバーを見つける確率は同じ。それより高い→ピンとこないからわかんない
  もし宝くじを東京ドーム2個半分の面積に並べたとして、一等当選のくじはたった1枚→男は広島出身なので東京ドームに行ったことなくて広さがわかんない
  じゃあもし宝くじがトイレットペーパーだとして→なんでそんなことすんの?
  「うああああたとえさせろよぉぉぉぉ!!!!」と怒り狂う天使。 この天使には男の説得に失敗した場合、地獄に落とされるというペナルティが待っているため、必死なのです。

  そんな天使を見かねて、なぜこれほどまで頑なに当選賞金を受けとりたくないのかをポツリポツリと話す男。理由は主にふたつ。ひとつは、結婚を控えている彼女が、宝くじ当選を告げた途端、やたらと高価な服や靴や果ては月の土地(!)まで欲しがるほど物欲にまみれてしまっていること。そしてもうひとつが、

  「漫画家になってたくさんの人を感動させる漫画を描きたい。どうせ幸せになるなら宝くじでお金持ちになるよりその夢を叶えてなりたい」 ということ。

   「そんな夢は一握りの、それこそ宝くじ一等当選よりも低い確率の幸運で才能に恵まれた人間だけが叶えられるんだ」と呆れる天使。しかし、そんな男を見てなにか感じるものがあったのか、天使は自分自身のことを語り始めます。

  天使も元々は地上で人間として生きていて、かつては役者を目指していましたが、すぐに挫折し、やがてチンピラめいたことをしているうちに、喧嘩に巻き込まれて死んでしまいました。そして空の上で天国行きか地獄行きかの審判を待つ長い長い死者の列にいたところ、「天使専門学校」なる場所のパンフレットを渡され、軽い気持ちで2年間通い、こうして上司である神様にこき使われているというのです。
 
天使のお仕事のメインは、担当された人間の「運命」を、神様が世界を動かすバランスを考慮して決定した幸福や不幸の出来事が、それらが記されたデータファイル通りに動いているかの監視。9割方は見事に書かれた通りの出来事が起こっていくのに、ごく稀に、今回の男のように、運命に背いた行動をする者がいる。あくまでも自分自身で運命を決定したい者がいる。そういう奴は天使曰く「厄介ではある。でも正直なところどういう方向に転んでも見ていておもろい」んだそうで。

  「この世界には確かに運命に背いてでも夢をつかんだ奴もいる。そいつらの夢はそれぞれ違っても、唯一の共通点は『何度失敗してもあがいてもがいて努力しまくった』こと。とにかく闘ったんや、自分自身の葛藤に。他のやつらと『覚悟』が違うんや。
………俺は、ちょっと役者うまくいかんかったら簡単に諦めてもうたからな。他人と散々喧嘩しまくっても、自分自身と喧嘩する度胸はなかった……」


  天使が懐から、ベルを取り出します。このベルは天界のアイテムで、鳴らすと一度だけ「奇跡」が起きるとのこと。もし男がここで心変わりして宝くじの当選券を取り戻したいなら、一度だけチャンスがあるのですが……

「ほんまにお前に、この幸運はいらんのやな?何がなんでも夢をつかむために、闘う覚悟はあるんやな?」

  まっすぐ前を見据えて、男に問いかける天使。そして……

  「……よし、わかったわ。そんならこれで用は済んだ。帰ってええよ。……だいじょうぶ、まかしとき」

  男を見送り、ふと手元のデータファイルをまたパラパラとめくりだす天使。そこの最終ページでふと手が止まる。そこには衝撃的な運命の予告が。


   「男は宝くじ当選後、妻の散財により多額の借金を背負う。金の切れ目が縁の切れ目で妻とは貧乏が原因で離婚。その後はひとり寂しい余生を送る」

  最高の幸運であるはずの宝くじ当選を得たあとも、その幸せが継続されることはなく、結局それによる不幸がやってくる。これが世界を動かすための、幸せと不幸のバランス配偶。神が定めた運命。  結局男が幸せになれる確証的な選択などはじめからなかったのです。
  この残酷な真実の意味を噛み締めた天使は真上に向かって大声で叫びます。


   「神様……おいおっさん!!聞こえてんねやろ!?これがお前の決めた結末か!運命か!バランスか!!……このベル、一回だけ鳴らしてええねんな?そしたら、一回だけ奇跡が起こんねんな!?そんなら、その奇跡でこっから覚悟持って闘う男の生き様、見ておけや!!」


  ベルを高々と掲げ、神様に見えるようにチリリーン!と鳴らす天使。

   「闘う男に!幸せが訪れますように!!」


  祈りの言葉を口にし、どっかりとソファーに座る天使。次の瞬間、


   「……あ!いやあの、オーダーじゃないんです!ハハッ、ごめんなさいねぇ~……え?俺がこの店がオープンして一万人目の客?へぇ~……え?記念に全部タダ?ほんま!?ありがとう!!」

  笑顔で再び着席する天使。一瞬考え込んで


  「……いや『闘う男』て俺のことちゃうねん!! (゚皿゚)」

  神に喧嘩を売ったこの男は果たしてどんな運命が待ち受けているのか……というところで1作目は終了。


  第2作のことは改めてレポートします!









 



 

 

 



 



 
  

 

 
 

  

悲しみの忘れ方~joy!joy!エンタメ新喜劇第四弾公演レポ 後編~

  前編はこちら→ http://nakumelo.hatenablog.com/entry/2016/12/07/200258

  景子ちゃんにナイフを突き付け、人質に取る森にぃ・もりすけさん・太一郎さんの銀行強盗三人組。彼らに対し、アキコさんにはある疑問が沸いていました。

  「あなたたち三人とも、悪い人には見えない。きっとほんとはものすごく優しい心を持っているんだと思うの。なんでこんなことしちゃったの?過去に何があったの?」

  臆することなく三人に語りかけていくアキコさん。やがて一人ずつ、心を開き、過去を話していきます。

  このときの演出がなかなか面白く、雷のような激しい光に包まれながら、舞台には薄いスクリーンが降りてきます。そしてそこにそれぞれメインとなる強盗のなんともいえない表情の顔がアップになり、スクリーンが上がると場面転換され、それぞれのトラウマとなった過去が明かされます。

  一人目は、もりすけさん。元は世界大会を目指すダンサーでした。
あるとき、ボランティアで大島さんとアキコさん……によく似た女性ヘルパーさんが運営する老人ホームを尋ね、そこにいるおじいちゃんたちとその孫たちにダンスを教えることになったのです。
 
最初こそ背中は曲がってるわ前に進めないわおんなじことを何回も聞き返すわを繰り返していたおじいちゃん集団ですが、音楽が鳴った途端、キレッキレのアクロバティックなダンスを披露!!さらに孫たちも負けじとレベルの高いストリートダンスを躍り、とどめが車イスのおじいちゃんが美しいバレエを披露という光景を目の当たりにし、すっかり自信を無くし、性格も歪んでしまったのでした。


  二人目は森にぃ。彼は高校生の頃、初めてお付き合いした女の子(葛原亜衣ちゃん)とのデートで、記念すべきファーストキスをしようとモジモジしている純朴な青年でした。

そこへやってきた暴走族4人組(もじゃさん・藍ちゃん・伊賀さん・平山さん)に絡まれ、危機一髪というそのときに現れたのが、この近所に住むチャキチャキな江戸っ子の割烹着姿のアキさん、その名も「ふとん叩きのハツエ」!! 愛用するふとん叩きの中に警棒を仕込んでいたハツエは、見事な立ち回りで暴走族連中に立ち向かいます。
 
このとき暴走族連中の体には異変が。もじゃさんにハツエが警棒を向けると、そのアフロヘアーからはかわいい小鳥が。伊賀さんの体に警棒が当たると、「♪タンタンタンタタン」や「プシュー!」という新幹線でよく聞く音が。そして藍ちゃんのお腹が警棒を弾き飛ばせば「私、人間ですねん」というお馴染みのギャグフレーズが流れるという個性を活かした演出。
 
見事に暴走族連中を成敗したハツエですが、同時に体がよろめき、森にぃが咄嗟に「だいじょうぶですか!?」と支えたその瞬間、なんと興奮状態のハツエが森にぃにキス!!これ、なんと本当に唇と唇をくっつけていました (゚ε゚*)ワォ!
  大事なファーストキスをよく知らないオバハンに奪われたショックで逃げ出す森にぃ。追いかける亜衣ちゃん。これがトラウマとなって歪んでしまったのでした。
 
そして残された暴走族連中は「そういや平山の体は触ると何が起きるんだ?」と試してみると、なんとラジオの電波を受信することが判明!!たまに雑音で入ってくることでお馴染みの某隣国の音声やら懐かしい某コーヒーミルクメーカーの時報が聞こえてきました。

 
  三人目はリーダー格の太一郎さん。彼は幼少期、まさにこの公園でサッカーをしていたときのこと。

今と同じように、ラーメン屋台があり、そこの大将の信濃さんがせっせと働いていると「バンッ!!バンッ!!」という壁を叩く音がどこからか聞こえてきます。なんとそれはSPゲストの間寛平さん演じるおじいさん!!杖でとにかく壁をめちゃめちゃに叩きながらやって来ました。

  かつて明治座で見たこの寛平じぃさんが茂造ですら敵わないほどの自由奔放じぃさんなのは承知でしたが、今回もとんでもないめちゃくちゃぶり。
信濃「ご注文は?」
寛平「チャーシュー麺をひとつ」
信濃「あ~ごめんなさい!チャーシューがついさっき無くなっちゃって」
寛平「なんでや?」
信濃「さっき団体のお客さんが一斉にチャーシュー麺頼んじゃって…」
寛平「そうかぁ~」
信濃「他のなら出来るんですけどね。何にしますか?」
寛平「チャーシュー麺」
信濃「いや、あの、だからね!」

というやり取りを3回ぐらい繰り返したとき、信濃さんが腹痛でトイレに駆け込むことに。寛平じぃさんがぼーっと待っていると、そこへやって来たのは、ピチピチのTシャツとスパッツに身を包んだ、ちょっとオカマ風のアキさん。
 
「……リモコン、貸してほしいんやわ、全体的に」というなかなか変わったお願いをこの寛平じぃさんにしてしまったもんだからさぁ大変。奇才と奇才のぶつかり合いの始まりです。

二人は夜中にどこからか聞こえる猫の喧嘩のような唸り声をあげお互いを威嚇し、やがて屋台にあるお玉やらお箸やらをそれぞれ自分のスパッツや股引きにぶちこんでパンパンにしていきます。なにがしたいのそれ!!信濃さん早く帰ってきてーー!!  (゚皿゚)  と思いながら、しかし涙が出るほど笑っていました。
  そんな珍妙な現場に居合わせてしまった太一郎少年は、恐怖のあまり性格が歪んでしまったとのこと。

  回想が終わる直前、このピチピチスパッツのオカマ風アキさんが「プロフェッショナル」的な番組にインタビューされている映像が流れました。なんでもこのオカマ風アキさんにとってスパッツは「実家」なんだとか……

  それぞれのトラウマの回想を聞いたアキコさんたち。端から見れば些細だったりおかしかったりするような思い出も、彼らにとっては苦しくつらい、今でも心に巣食う記憶なのです。

  「それでも……こんなことしちゃダメよ!あなたたち絶対優しい子なのに!!人生はつらいことも悲しいこともたくさんあるけど、楽しいことを探してまたがんばっていくのよ!!こんなこと今すぐやめてやり直してまた楽しいこと探しなさいよ!!」


  この台詞のとき、私の胸にあったモヤモヤが一瞬にしてブワッと消えて無くなっていきました。つらいことや悲しいことを乗り越えられる「楽しいこと」を探す……楽しいことなら、私はもう見つけてる。ここにある!!だいじょうぶ!!と。アキさんにものすごく力強く肯定してもらえた気がしました。

  そこへちょうどタイミングよく出前から帰ってきた一の介マスターと茂造。景子ちゃんが人質に取られているのを見ると茂造がいつものあの肩掛けかばんから取り出したのは……「さっきワシがたっぷりチビったアテント」という恐ろしいアイテム!!そしてそれを強盗目掛けて蹴りあげる!!強盗たちがその汚物に恐れおののく間に景子ちゃんは脱出し、見事強盗たちは逮捕!!でも皆さんはチビったオムツを取っておくなんてことはなさらないように!!

  逮捕されても、どこかスッキリしたような表情の強盗たち。罪を償ったら、今度は楽しいことを探してまたがんばると約束しました。そんな彼らを応援するかのように、アキコさんのダンスタイムがスタート!!OPに出ていたダンサーの方々が再登場し、アキコさんとパワフルなダンスを披露。そしてエンタメ恒例の新喜劇座員によるダンスソロもありました。なかには茂造や一の介マスター、和子おばあちゃんなど、ダンスな苦手なメンバーもいましたが、そのぎこちなさもまたほほえましく感じました。

  そんなアキコさんに背中を押され、ゆたか大将もついに景子ちゃんに告白!結果は見事OK!!大喜びするゆたか大将を見て、和子おばあちゃんは言います。

  「ゆたか、本当によかったね!おばあちゃんもうれしいわ。でもね、“あの方”のおかげでもあるということを忘れたらだめよ……みんなでお礼を言いましょうね……神様……神様~!!」

ツィゴイネルワイゼン」が流れ、神様に孫の幸せを感謝するおばあちゃん。そして、神様におばあちゃんが伝えたいことは、もうひとつ。

  「ここにいるアキは、芝居も、躍りも、本当に素晴らしい!!すごいエンターテイナーです。きっと、これからの新喜劇を引っ張っていってくれる……座長になってくれるでしょう!!」

   これは「お墨付き」といい、新喜劇の重鎮である桑原レジェンドから「時期座長に相応しい人材である」と認められることであり、現在の5座長は全員通ってきた儀礼なのです。アキさんの座長就任の夢が現実味を一気に帯びた瞬間でありました。

  「アキ!!来年辺り、座長になってくれるか!?」と尋ねる桑原レジェンド。涙を流し、しかし笑顔で「はい!なります!!絶対、なりまーーす!!」と力強く宣言してくれたアキさん。「いやそこは“いーいーよぉー”やろー!」とツッコむ茂しゃんも、どこか嬉しそうにアキさんが自分の背中へまた一歩追い付いた瞬間を見守っていました。


  終演後は、すでに3月に決定している第五弾公演の先行チケット販売が開始され、それに並ぶことにしました。そこに、数日前までTwitterで相談に乗っていただいていたアキさんファンの知り合いの方を見かけて、ご挨拶。
  「あの、私、アキさんの“楽しいことは自分で見つけて探すの”って台詞聞いて……」と話していると、こらえきれずに涙がボロボロ出てきてしまい、本来笑いのための劇場なのに泣いてしまいました。アキさんが「あなたがしていることはずるいことでも逃げでもない。またがんばるために自分で探して見つけた“楽しいこと”なんだから、思いきり笑って楽しめばいいんだよ」と肯定してくれて、舞台から「悲しみの忘れ方」を教えてくれたように思いました。

  涙を拭い、チケットを買い、特典であるアキさんとの写真撮影へ。いつもは緊張して「お疲れ様でした」という挨拶ぐらいしかできないし、後もつかえてるからあまり話せないけど、絶対今日は一言でもお礼を言わなきゃ、とドキドキしながら列へ並びました。
  ダンスパフォーマンスのときの衣装のまま、一人一人と丁寧に握手と言葉を交わし、撮影に応じているアキさん。私の番になり、スタッフさんにスマホを渡し、写真を撮り、アキさんから手を差し伸べてくださり、握手を交わしました。そのときに、「後ろの方、ごめんなさい!少しだけ、待ってて!」と思いながら思いきって言いました。
  「あの、私、悩みがあったんですけど、元気になれました。ありがとうございます!」
  アキさんはそんな私のたどたどしい言葉も、「うん、うん、そうやったんや」と聞いてくださり、「でも、よかった。また来てね!」と微笑んでくださいました。
 
  同じ場所では森にぃも写真撮影に応じており、こちらは少し長めにお話が出来るようでした。実は一週間前に私はホンワカパッパー隊で森にぃに張り付いて彼のアップばかり撮っていたので、それをチラッと話したら「あぁ!あのときの!」と覚えていてくださいました。そして「これからもどんどん撮ってくださいよ~!」と了承していただけました。
ちなみに私のひとつ前のご婦人たちは森にぃの「てっぺんハゲ」を見せてもらい、拝んでいました(笑)

  ホテルに帰り、メイクを落としたりお風呂に入ったり、夜食を食べたり、TwitterやLINEをやりながら、私はある歌を繰り返し聞いて口ずさんでいました。それが、今回サブタイトルにもなっている乃木坂46の「悲しみの忘れ方」です。

  その歌のなかに、こんな歌詞があります。

  
  「悩んでたのは私だけじゃないんだ  そばにいつだって 誰かいる」

「思い通りに何も行かないけれど それでも誰もが前を向く」

「みんな同じだ 迷い悩み傷つく」


   これまで何度かエンタメレポでも書いていますが、一見華やかにかつ異例のスピードで座長候補にまで登り詰めたアキさんも、それまでの道は決してなだらかではありませんでした。でこぼこしていて、ぬかるみもあって、坂道のように険しく、日の光も射さず、前すら見えない道だった。そんなアキさんに、冷たい視線を送るような人や、耳を塞ぎたくなるような言葉で追い詰めた人も、きっといた。それでもいつしか茂しゃんをはじめ多くの人達と手を取り合い、前へ前へ進み、諦めないでここまで来てくれた。そんなアキさんに会えて、そんなアキさんだからこそ作れる舞台を見ることが出来て、本当に本当によかった。

   「悲しみの忘れ方」は元々は乃木坂46のドキュメンタリー映画のタイトル、そしてその映画の主題歌なので、秋元康さんは彼女たちのこれまでの道のりや表情を踏まえてこの歌詞を書いたことは重々承知しております。しかし、これまでと今回のエンタメ新喜劇を見て、私がアキさんに感じたこと、そして舞台を通じて教えてもらったことに一番しっくり来るのがこの曲だなと思い、乃木坂ファンの方の反応も気になりましたが、思いきってこれをサブタイトルとキーワードとして引用させていただきました。

 


 



 

 




 

悲しみの忘れ方~joy!joy!エンタメ新喜劇第四弾公演レポ 前編~

  新喜劇が誇る、変幻自在エンターテイナーでスーパーエース、そしてついには時期座長候補のひとりとなったアキさんの「joy!joy!エンタメ新喜劇」第四弾初日公演へ行って参りました。

  ……しかし地元から新幹線で大阪に揺られる私の心はどこかどんよりモード。その時期、些細なことではあるのですが仕事の人間関係で行き詰まってしまい、憂鬱な気分のまま出発を迎えてしまったのです。

  「心の弱い私がここまでなんとかやってこれているのは、今は新喜劇があるからだ。でも、辛いとき苦しいときに新喜劇を見るなんて、これは“逃げ”というか……“ずるい”ことではないんだろうか……」

  そんなことを悶々と考えながら、大阪到着→ホテルへチェックイン→ささっと夕飯→NGK内でホンワカパッパー隊撮影&買い物 などをしているうちに開演時間となりました。途中、ホテルのエレベーターで一緒になった金髪坊主のオバハンに舌打ちされたり、開場して席へ向かうとめっさおっかなそうなヤンママがどっかりと座ってたり(間違い指摘したらすげーめんどくさそうに正しい席に戻っていった。ちなみに謝罪なし)とビビりなワシにはしんどすぎるほどの緊張の一瞬を過ごし、いざ開幕。

  幕が開くとそこは周りをホテルや教会に囲まれた静かな公園内。ラーメン屋の屋台と、「ビッグチャンス」という名の喫茶店があります。そこをバッグにノリノリで踊る若者たち。と、客席からどよめきが聞こえ、そちらを向くと、なんとアキコさんが客席を通って舞台へ!!そのまま若者たちとダンスを踊ると、アキコさんの掛け声で新喜劇本編スタート!!


  デートにやってきた玉置さんと、その彼女である真希ちゃん・まりこりん・まりこちゃん。ちょうどラーメン屋さんの屋台があるから、ここでごはんにしようよ!ということになりました。ラーメン屋の大将はゆたかさんなのですが、本日新しいバイトを雇ったとのこと。

  と、そこへ響き渡る「東京ブギヴギ」、そしてセグウェイに乗ったアキコさんが颯爽と登場!!しかしアキコさんもセグウェイは初めてだったらしく、慣れない操作ゆえになかなかコントロールが効かず、止まることが出来ない……と思っていたら、なんと持ち手部分と足元の乗り場が見事に真っ二つに取れてしまうハプニング発生!!アキコさん曰く「怖いからぎゅっと握りすぎて上に力が入りすぎたみたい」とのこと。

そんなお騒がせバイトのアキコさん、周りがとても静かで人通りも少ないのを見かけて「大将はなんでまたこんなところで屋台を出したんですか?駅前とかのほうがお客さんたくさん来そうなのに…」と素朴な疑問をぶつけます。それに対し、歯切れが悪い返事をするゆたか大将。なにかワケアリのようです。
  そこへ、喫茶店「ビッグチャンス」のオーナー、一の介さんが登場。そしてまもなく一の介さんの娘である景子ちゃんが帰宅。景子ちゃんを見つめるゆたか大将の目が輝いているのを見て、「なるほど景子ちゃん目当てなのか」と屋台出店の理由を把握するアキコさん。しかし景子ちゃん、なんと女優の勉強をするため明日からアメリカ留学へ旅立ってしまうとのこと。がっくりと肩を落とすゆたか大将を見て、どうにか明日までに告白できたらいいのに、とアキコさんは思うのでした。

  そして従業員でもある景子ちゃんが明日からいなくなるため、「ビッグチャンス」でも新しいバイトを雇ったのですが……ここまできたらもう皆様予想がつくように「初日から遅刻」しているのです。そうです、アイツなんです!!

「わぁぁすいませーーん!!遅れてしまいましたーー!!」と叫びながらやってきたのは、新喜劇が誇る暴走老人・茂造!!バッグを蹴り飛ばす替わりにおもきしゆたか大将の顔面にぶつけ、そのときの音がこれまでの公演で聞いたことのない「ボフッ!!」という、バレーボールとかドッジボールの試合で聞くような音!!茂造曰く「joy!joy!では手加減しないって決めてるんや」そうです。茂造が遅刻した理由は相変わらず変な夢を見たことによる寝坊なのですが、「タクシーが停まって、ASKAと清原が出てきた」というかなりタイムリーな夢でした。ドラッグ、ダメ、ゼッタイ。
  そんなハチャメチャジジィの茂造をアキコさんはたしなめますが、茂造に元気よく「すいませーん!」と呼ばれるとつい「いーいーよぉー」と許してしまい、すぐに仲良しになりました。

  と、そこへいかにも「誰か出てきますよ」的な音楽が鳴ったのに、誰も出てこなくてズッコケる一同。少し間が空いて警官のスケちゃんが出てきましたが、几帳面座長な茂造はそれが許せず、「もっかいやりなおせー!」と下手に戻すことに。ここから棒読み気味なうえに相変わらず「ザ行」が「ダ行」になるグダグダっぷりを発揮するスケちゃん警官とそれに対していちいちひっぱたいてツッコむ茂造との攻防が続きました。いつかこの二人が絡んだらえらいことになりそうだと思っていましたが、ここまで大騒ぎになるとは……
  そしてさんざん茂造にひっぱたかれダメだしされまくったスケちゃん警官、「銀行強盗が逃走中だから気を付けて」と注意を促していきました。これだけ言うのに3分ぐらいかかってたなぁ。


  アキコさんがラーメンに使うネギを買いに行っている間、茂造・一の介マスターも交えて、どうやったら景子ちゃんへ告白出来るか考えるゆたか大将。なんでも昔好きだった女の子に告白してこっぴどくフラれたトラウマから、なかなか上手く告白できなくなってしまったとか。そこへやってくる一人の小柄な老紳士……いや老婆。新喜劇の重鎮、桑原レジェンドが演じる和子おばあちゃんです。  ゆたか大将の祖母である和子おばあちゃん、孫が結婚できるのかどうかを心配してこうしてたまに様子を見に来るそうです。

  和子おばあちゃんと入れ違いに入ってきたのが、ドタバタと走ってきてゼェハァと荒い息を整え、「……なに?」と尋ねてくる黄色スーツのチョビヒゲやくざのアキさん。今回アキさんの変化が多いのも見物でした。

新喜劇ではお馴染みの展開、一の介マスターが保証人になったが故に出来た、300万円という多額の借金を取り立てに来たのですが……普段の新喜劇なら「そんな大金急には無理です!」と慌てるのに、涼しい顔であっさりと懐から300万円の入った封筒をヤクザアキさんに渡す一の介マスター。景子ちゃんのアメリカ留学の足しになればとさっき銀行で下ろしてきたばかしだったそうです。これにはヤクザアキさんが逆に大慌て。「あとからまた来ること出来ないじゃないか!!」と苦し紛れに本来全然関係ないゆたか大将の屋台にまでケチをつける始末。いいからさっさと帰れよー!と追い詰められるヤクザアキさん、「俺の子分がいるんだ!そいつに落とし前をつけさせる!おい、こっちだ!!」と誰かを下手から呼び出します。

  そこへ出てきたのはなんと、あの「ミヤネ屋」の宮根さん!!しかもアキさんそっくりの黄色のスーツにチョビヒゲスタイル!!実は宮根さんは吉本新喜劇、特にアキさんのファンで、「Mr.サンデー」のハロウィン特集コーナーでもアキさんのコスプレを披露したほど。そんなご縁で今回こうして夢のコラボが実現したそうです。もちろん「すいませーん!」「いーいーよぉー」とお馴染みのやり取りを本家同様交わし、ミヤネアキはニコニコ満足げに帰っていきました。帰り際には「明日もミヤネ屋見てねー!」という告知も忘れてませんでした(笑) そんな子分を見送ったあと「ば、バカヤロー!!」と本家ヤクザアキさんも去っていきました。

  やがて買い物からアキコさんが戻り、今度は一の介マスターと茂造が出前にいくことに。そこにゆたか大将の友達でミュージシャン志望の真也さんもやってきて、彼の得意なギター演奏も交えて景子ちゃんへ告白しようとアキコさんと共にサポートしますが、やはり上手くいきません。


  と、そこへ駆け込んでくる三人の男たち(森にぃ・もりすけさん・太一郎さん)。彼らは先程スケちゃん警官が注意を促していた逃走中の銀行強盗で、なんと景子ちゃんを人質に、逃走用の車を要求してきました!!

  一体アキコさんはこの危機をどう乗り越えるのか!?ゆたか大将は無事告白できるのか!?そしてアキさんが舞台を通して教えてくれた「悲しみの忘れ方」とは!?

後半へ続きます!!





 

 
 

 


 

 

「くまモンからの宝モン~天草より愛を込めて~」 レポ

  安井まさじさんが新喜劇を退団し、故郷熊本へ戻って早5ヶ月……

  まさじさんは熊本ローカルのテレビ番組やラジオのレギュラーを獲得、さらに自身が座長となって「よしもと南国劇団」なるものを旗揚げし、精力的に活動していました。ラジオレギュラーに関しては他地方の私でもradikoプレミアムで聞けるので、日曜夕方を楽しみに待つようになっています。

  そんなまさじさんと、熊本のアイドルゆるキャラくまモン」がNGKへやって来て行う「くまモンからの宝モン~天草より愛を込めて~」を見て参りました。

  開演前、待ち合わせた友人とNGK館内にあるたこ焼き屋さん「甲賀流」で腹ごなしをしていると、たこ焼きを買うお客さんの列にどこかで見たような長身の男性と、その横にいる小柄な男性……なんとまさじさんとしみひろくんでした!!思わず友人と話しかけに行ってしまいました。その節はほんとうにありがとうございました!!

   幕が開くとそこは海も綺麗で天草四郎ゆかりの崎津教会もあるのどかで美しい街、天草。ここでゆたかさんはちゃんぽん屋台を経営しています。この屋台の近くには旅館もあり、ここでは女将の靖子さんが息子で高校生の太一郎さんを育てながら経営しています。

  と、警察官の太田さんと安世ちゃんカップルが「あなたに会いたい方がいるそうですよ」と連れてきたのは……くまモン!!今回は新喜劇ファンの方だけでなくくまモンファンもたくさん観劇しており、登場したときの歓声がものすごかったです。
このくまモン、言葉こそ喋れないんですが、体全体を使って表情をよく表してくれます。そしてありがたいことに出演者全員がくまモンの言葉を通訳してくれるときもあります(笑)

  くまモンによれば、「ゆたかくんに会わせたい人がいるんだモン!」とのこと。そこに現れたのは熊本弁丸出しで、毬栗頭に10円ハゲの、まさじさん演じる「熊本 便」!!!この便さんは熊本ではくまモンばりの知名度と人気を誇っており、やはり歓声がすごかったです。もちろん新喜劇ファンからも、5ヶ月ぶりの「帰郷」に拍手喝采でした、
  便さんはゆたかさんの兄で、またいっしょにちゃんぽん屋台を手伝うことにしたのですが、九州男児的な気質なのかどうも喧嘩っ早く、お客さんを怒らせてしまいます。そんな兄に呆れるゆたかさんを、くまモンと靖子さんが優しくフォローします。

  実は靖子さんに想いを寄せているゆたかさん。「それなら告白したらいいじゃない!」と背中を押す便さんとくまモン。しかし、なかなか告白に踏み出せないのは、息子の太一郎さんのことがあるから。
  太一郎さんは高校では剣道部に入っており、部長も務めるほどの剣豪なのですが、ここのところスランプぎみで試合に勝てず、生真面目な性格もあり責任を感じて落ち込んで塞ぎこみがち。この太一郎さんのスランプ問題が解決しないうちは恐らく母親の靖子さんもプロポーズを受けてくれないだろうとのこと。

  そこへトボトボ帰ってくる太一郎さん。なんと退部届けを提出してきたとのこと。そんな部長を追いかけてやってきたの剣道部員は……大人気歌ネタコンビ、すち子&真也!!二人はこう見えて留年しまくりの夫婦の現役高校生なんだとか。
「ねぇあなたたち、佐藤部長どこにいるか知らない?これあげるから、教えてーー!」とすち子さんが懐から取り出したのはお馴染みねぶり飴!!そしてそれを客席に勢いよく撒く!!客席はたちまち「こっちにちょーだい!」「こっちもー!」と飴取り合戦に。私のいる席はほぼ真ん中あたりなのですがこの辺て飴が意外と落ちてこないんですよね……(´ヽ`)

  最近のチームすっちー公演ではすっかりお馴染みの、太一郎さんのしゃべり方をすち子さんが大袈裟に真似するくだりや、真也さん十八番のギター歌ネタでどうにか説得……いやかなりおちょくりまくったせいで、ますます塞ぎこむ太一郎さん。「お前らどうしてくれるんだ!」とゆたかさんがぶちギレすれば負けじとすち子さんも「痛い目に遭わしてやる!」とマキザッパを屋台から取り出し、もうすっかりお約束のドリルを披露!さんざん好き放題やってお騒がせダブりまくり夫婦は帰っていきました。

  ちょうどその頃、信濃さん・ロバーターさん・モロミーさんの歴史研究をしている大学教授チームがこの天草を訪ねていました。一説によればあの天草四郎はフィリピンへ逃亡し生き延びたかもしれないということ、なので場合によっては子孫がいる可能性もあるかも、ということで調査をしているようです。
  さらにお宝鑑定士のベップさんや瀧見さんもやって来たので、早速各々のお宝を見てもらいますが、どれもこれもあまり価値のないものばかり。くまモンも「このボールすごいんだモン!これはあのイチロー選手が記録更新したときに打ったボール!!……にそっくりなボール!!」と持ってきますが、もちろん価値はなし。だってそれただの野球ボールだもんね……
 
ここで登場したのがその日のスペシャルゲスト、NON STYLE石田さん!「隣にキモい奴おらんからのびのび出来る~♪」と相方をディスりつつベップさんの乳首をいじくり倒し、「数百万は下らない」と自称していた壷を持ってきたもののくまモンがうっかり割ると「ダイソー」の文字が裏側に書かれており、インチキがバレて帰っていきました。
 
靖子さんも、旅館に置いたままになっているという古い木刀を持ってきますが、やはりあまり価値はないとのこと。しかしもしよかったら100円で買い取りますよ、という鑑定士たち。

そこへ先程の歴史研究チームがやってきて、木刀に刻まれた家紋を見て驚愕。なんとそれは天草四郎の家紋で、その木刀は天草四郎が使っていた、相当の価値があるものだということ。実は鑑定士コンビは詐欺師で、価値あるお宝を安値で手に入れよういたのです。
 
バレたなら仕方ない!とインチキ鑑定士コンビが呼んだ助っ人。それは……ドタバタと足音を立て、ゼェハァと息を乱してやってくる黄色いスーツのチンピラ……そう、アキさんです!!相変わらず威勢が良く脅しまくるものの、「すいません!」と謝られたら「いーいーよぉー」と許してしまうお人好しぶりを発揮。便さんが鳴らしたマイケルの曲の着メロで華麗なダンスも披露!実はアキさん、この前日は祇園の夜公演→移動→NGKくまモンというとんでもない掛け持ちをしてたそうです。鉄人……!!!
 
そんな鉄人ヤクザのアキさん、実は他の現場でも助っ人を頼まれているとかで、木刀を取り上げる前にいなくなってしまいました。インチキ鑑定士コンビは今度は靖子さんを人質に取り、木刀をよこせ!と脅してきました。
一同がテンパっていると木刀を包んでいた布から表れた一枚の紙。そこには一説通りフィリピンへ逃亡しキリシタン狩りから生き延びた天草四郎の家系図があり、そこから太一郎さんが天草四郎の血縁者であるということが判明!!
  剣の達人でもあった天草四郎の末裔で、剣道部部長でもある彼ならきっとこの木刀でインチキ鑑定士を成敗できるはず。けれども試合で負けてしまったトラウマが未だ拭えず躊躇する太一郎さん。そこでしびれを切らした便さんが活を入れます。

  「いつまでウジウジしているんだよ!!試合に負けたぐらいでなんだ!!……住む家が無くなった人がいるんだ、会社が潰れちゃって仕事が出来なくなった人がいるんだよ。でもな、みんな前を向いて笑ってがんばっているんだ!少しでもいい方向へ進むようにって!!だからお前も勇気を出して立ち向かうんだ!!」

  「家が無くなった」や「会社が潰れた」は大袈裟な表現ではなく、まさじさんが帰ってきた故郷・熊本で起きた、そして現在進行形で起きている「現実」なのだろうなということはすぐにわかりました。それでも、少しでも熊本の人々に笑顔を取り戻してもらい、明日への希望の活力になればとこの人はああいう決断をしたんだ、と思ったら、スッと涙がこぼれました。

  便さんの言葉に勇気付けられ、木刀を手に取り、インチキ鑑定士たちに立ち向かった太一郎さんは、見事な剣術で成敗。インチキ鑑定士たちはやたらイチャイチャしている太田&安世警官カップルに逮捕・連行されていきました。
  自分があの天草四郎の血を引いているなんて……と感慨深く木刀を見つめる太一郎さん。そのときくまモンが衝撃の事実を……

  「実はそれ……僕が京都で買ったお土産の木刀に天草四郎の家紋のシール貼っただけなんだモン。家系図も僕が書いたんだモン。嘘ついてごめんなさいモン!!」

  その事実に驚愕し、がっかりする一同。しかし太一郎さんには確実に「勇気」と「自信」というくまモンからの宝物が心の中に届いており、これからも剣道をがんばるよ!と決心します。

  今こそチャンスだ!と便さんとくまモンに背中を押され、ついに靖子さんに告白するゆたかさん。靖子さんの返事は……

  「ごめんなさい!私、好きな人がいるの……私やっぱり……便さんが好き!!便さん、私とお付き合いしてください!!」

  茫然とするゆたかさんに対し、ニッコニコの笑顔で「喜んで!」と返事をしてしまう便さん。失恋したゆたかさんをくまモンが肩を抱いて慰める、というところで本編は終了。
  カーテンコールでは出演者全員とお客さんで最初に練習した「くまモン体操」を躍り、記念撮影をしました。くまモン体操では完璧に躍りこなす人もいれば、なかなか動きが追い付かずにちょっとぎこちない人、そしてすち子さんにいたっては2階席のお兄さんと謎のポーズを交わすなど、それぞれに個性が出ていました。ただひとつ言えることは、全員もれなくかわいかった!!撮影OKなら撮りたかった!!それぐらいかわいかった!!

  「熊本は今みんなで力を合わせてがんばっています。今回舞台になった天草をはじめ、景色の綺麗なところも美味しい食べ物もたくさんあるので、どうか遊びに来てください!」と力強く挨拶してくれたまさじさん。終演後はロビーに便さんの姿のまま出てきて、写真撮影や握手やサインに応じてくださいました。私も写真撮影をお願いし、「ラジオを毎週聞いてますよ」と伝えられました。この日はくまモン公演最終日だったため、多くの人がまさじさんがNGKにいるこの最後の時間を惜しんでいるようでした。
   
   私は以前、「遠く離れてしまってもきっとまたまさじさんに会える」「そのときはまたたくさん笑わせてもらう」と書きましたが( http://nakumelo.hatenablog.com/entry/2016/05/31/113813 )、見事にその願いが叶いました。誘ってくれた友人には本当に感謝しています。

  熊本でがんばっているまさじさんと、茨城でがんばる私。そんな私たちがまたNGKで出会える日が来ますように、とドンキホーテで夜食と翌日の朝食を買ってホテルに帰る道すがら思ってみたりしました。


 


 

 
 
 





 

まだまだ座長!!もうすぐ座長!? 「茂造の青春時代!!」リバイバル公演レポ

  GWの祇園花月を感動の渦に巻き込んだ「茂造の青春時代!」が、このたびNGKで一夜限りのリバイバル!しかも「まだまだ座長!!」と現役続行を示唆する茂しゃんと「もうすぐ座長!?」と時期座長候補へ名乗りを挙げたアキさんが、演出とパフォーマンスを練り直し、さらにパワーアップしているとのこと!

  基本的なストーリーの流れは前回祇園で行われたものと同じ(詳しくはこちら→http://nakumelo.hatenablog.com/entry/2016/05/04/222302 )。ただし今回は急遽決まった公演でもあるためか何人かキャスト変更がありました。(祇園版→リバイバル版のように表記しました)


  【第一部 新喜劇パート】

番頭:ニーナさん→まさとさん

旅館の娘 長女:平本茜子さん(外部の女優さん)→真希ちゃん

旅館の娘 次女:幸恵ちゃん→まみちゃん  (このため前田姉妹が役でも姉妹となりました)

  旅行会社社長の息子: まさとさん→玉置さん

【第二部 回想パート】

  暴走族:タックルさん→奥重さん

  看護師:幸恵ちゃん→真希ちゃん


  また、演出にも数ヶ所変更がありました。
 
  回想パートの冒頭のオーディションシーンで、フミエ(たまよさん)とマサコ(人妻ニャンコさん)がピンクレディーの「UFO」を歌うシーンは、今回ニャンコさんが出演されなかったのでフミエがソロで松田聖子さんの「青い珊瑚礁」を熱唱

  前回のレポでは抜けていますが、祇園版で実は伊賀さん演じるニューハーフのアンナは肉体も完全に女性にしたいのでモロッコで性転換手術を受けることにします。しかしなんとラスト間際で失敗して亡くなってしまうオチでした(実際、性転換手術は命に関わるほどの大手術)。
  これはどうやら前回終了後のアンケートで「さすがに死ネタはやめてくれ!」とクレームが殺到したのか、今回のリバイバル版ではラスト手前で「手術に行こうと思ったけど、恋人のゲンタ(要冷蔵さん)が“ありのままの君でいい”と言ってくれたからやめた」ということで手術を回避。命を落とさずに済みました。よかったねアンナ!!

   今回は追加キャストでアキさんの推薦するブレイクダンスユニット「MORTAL COMBAT」さんも参加。回想パートでアキさんが演じるシュウジと共に漁へ出る漁師役で、「大漁だったときに船の上で踊るダンス」をシュウジと披露し、最後のオーディション優勝シーンは直美や山茶花荘の女の子たち、そしてこのMORTAL COMBATとシュウジがユニットを組んで歌とダンスの融合のパフォーマンスで優勝、ということになっていました。

森田さん演じるサカガミも、前回にも増して「どんなにボロボロでカッコ悪くても愛するエツコの為に駆けつける」というラブスーパーマンを彷彿とさせるような真っ直ぐな愛を貫き通しているように見えました。森田さんここのところ人気がぐぐっと上がっていて、登場したときに茂しゃんアキさんに負けないくらいの歓声があがっていました。


  何より大きいな、と感じたのは、絶望の最中にいる茂造にシュウジが「山茶花荘」の名前の意味を教え、前を向いてほしいと伝える場面。
  祇園版は冷静に静かに諭す、という流れだったのが、最初の一声からすでに涙声で、ボロボロと涙を本当に流しながら、絞り出すような声で顔を真っ赤にしながら説得していました。   そして茂しゃんはもちろん、フミエ役のたまよさんやサカガミ役の森田さんも同じように涙を流しながらそれを聞くという本気ぶり。
  今回は前回の祇園版を見ておらず初めてこの作品を見た、という方も多かったようで、ちょいちょいシリアスシーンのなかでも笑い声があったのですが、このあたりのシーンになると「エッ茂造ってこんな重たい過去あったの……」「アキさんが、茂造が、泣いてる……」といういつもの新喜劇との違いに動揺している方も多かったです。それだけ物語に引き込んで胸を締め付けるような圧倒的な表現力でした。

 
  カーテンコールでは現役座長継続の茂しゃんと時期座長就任希望のアキさん二人で今後の新喜劇を引っ張っていきたいということ、来年芸歴30周年の茂しゃんと25周年のアキさんでやはり何か面白いことがやれないか企画する予定ということ、そしてGWの祇園茂造特別公演はもちろん来年も開催予定であるということも力強く宣言されました。

  辻本茂雄荒木良明。生まれ育った環境も、お笑いを目指した経緯も異なり、それぞれの道で悩み迷いながら前へ進んで来た二人が、こうして新喜劇というフィールドで出会い、大きな大きな化学反応で新喜劇の新しい可能性を産み出せた奇跡。それを目撃できた気がする今回のリバイバル公演でした。